第14話 「悲劇の運命その2」とは

 涼子のいとこの七海は妹同然だ。

 七海にはひとり息子がいる。

 (涼子のおいっ子)


 マサオには、桜子という妹がいる。

 桜子にも1人息子がいる。

(マサオのおいっ子)


 お互いのおいっ子の話になったのだ。


 マサオの「おととい甥っ子の誕生日祝いでピザ食べに連れて行ったんだよねー、子どもってさ、なぜかピザ好きじゃん。テンション高くてさ」という会話に、涼子は(なんだか子ども好きそうだ)と好感を持って話を聞いていた。


 ふとそのとき涼子は思った、

(おととい?、え…)


(私のおいっ子の誕生日もおとといの7日なんだけど、

 え、ちょっと待って、待って、)


 心臓がどきどきする。


 涼子は深呼吸してたずねる。


「マサオくんの甥っ子の誕生日ってさ、もしかして、7月7日?」


「うん、そうだよ。七夕たなばた

 なんかロマンチックだよねー。

 あ、ごめん、

 ひいた?」


 涼子は更に心臓が高まる。

 平然と言うのだ、この鼓動が気づかれないように。

「うそみたい、お互いの甥っ子の誕生日もいっしょじゃん」


「え、え、ホント?」


 二人はお互いを見つめる。


 一瞬時が止まったかのように、いや今思えば実際は2秒後くらいだろう。


「それで何歳?」

「うん、3歳なんだかわいいよね3歳って。」

「え、俺の甥っ子も3歳かも」

「何年生まれ?」

「いやわかんないな、幼稚園はいる前だっけか」

「何歳かよくわかってないの?それはないでしょー」

 軽く冗談めいたツッコミっぽく言ってみる。


(たぶん3歳ってことはおんなじ...)


 結局、この日は誕生日話でもりあがり、お互いの誕生日が同じ日、更にお互いの甥っ子が、同年同月日生まれとわかったのだ。


 恋愛小説なら最高の展開だったハズ、なのだ、なのに…


 事実は小説よりなり、って本当にあるんだ。


 その後、涼子は結婚前に幾度も何人もの友人にこの話をしただろう。

 あの時の若かった自分に苦笑いする。


 そしてこの事実、運命と思い込んだものにがんじがらめになるとは。


 マサオは言った。

「これって運命じゃない?」


 この日を思い出しながら、涼子は中学校に提出するための健康調査票を書いていた。

 みゆの生年月日の欄を書き終えて手がとまった。


「2009年7月7日」






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