第12話 3月29日 運命でもなんでもないのに、偶然すぎた悲劇の始まり。

 3月29日(金曜日) みゆの塾は昨日で春期講習も終わった。


 涼子は、ここ2週間のツライ出来事を払拭ふっしょくするかのように遊びの予定を入れていた。今日は13年来のママ友の夏子と約束していた。


 夏子とは、みゆが1歳の時に入った保育園から友だち関係が続いている。きっかけは娘たちが同じ保育園のリス組さんだったからだが、卒園したあとも子ども抜きに友人関係が続いている数少ない1人だ。


 夫マサオの過去の浮気騒ぎ、2年前の別居のこと、モラハラ、DVのことは細かく知っている。


 みゆが小学5年生の頃に、家族ぐるみでキャンプに2回行ってるからマサオとも顔見知りだ。


 娘同士も卒園組の中では、『1番仲良しでお互いに気が合うね』と話している。

 娘たちは小学校も中学校も別々で、年に数回しか会っていないないのに、会えば距離を感じることなくおしゃべりがとまらない。


 今日は親子4人で洋食ランチの後、カラオケで歌いまくってストレス解消だ。

「やっぱり赤ちゃんくらいから、毎日一緒に育ってきたから、きょうだいみたいなものなのかしらねー。だから久しぶりなのにあんなに自然におしゃべりできるんじゃないかしら」

 なんて、母親同士は都合よく解釈かいしゃくしている。

 たまたま偶然だっただけで、同じ保育園クラスの子は他に20人はいたし、同じ中学校になったのに話もしなくなった子だっている。


 でも女性って、なんか特別な理由があったほうが好きだし、そういうのを思い込みたい傾向がある。

 ただし、だ。それが悲劇のもとなのだ。偶然とか運命とか、世の中で最も危険なもの…

 

 涼子がそう思うのには理由がある。

 マサオとの馴れ初めが「私達もしかして運命じゃない?」ってところから始まってるからだ。

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