第11話 4月9日 今日リコン弁護士に会ってきた。

 4月9日(火曜日)


 今日の午後、涼子はリコン弁護士に会ってきた。


 今日のためにこれまでの浮気やDVの経緯を詳しくまとめていたものを渡し、今後のことについて相談した。


 弁護士から「エックスデーをいつにしましょうか?」と聞かれたが、まだ引越し先も日時も決まっていない。涼子は明日、県営住宅の申込みの予約をとっている。


 閑話かんわ休題きゅうだい


 もう一度おさらい


 (その1)県営住宅は仮住まいだということ。

 まずは半年契約、そこから延長して計1年間は住めるそうだ。その間に次どうするか決めないといけない。


 (その2)県営住宅に持っていくのは、生活に必要な最低限の物を主とする。

 引っ越しで動かすのは、洋服、娘の机、テーブルとイス達、パソコン、プリンター、ベッド、ドレッサー、ハンガーラック、照明、最低限の食器、キッチン周りのいろいろ、必要家電(ポット、冷蔵庫、洗濯機、レンジあたり)、当日まで動かせないものいろいろ。


 (その3)実家に預けておきたかったものは、(その2)以外の荷物。

 冬用シーズンオフの洋服や靴、毛布や掛け布団、娘の卒業式に着るスーツ、喪服、家電(扇風機、加湿器、照明器具)、愛蔵版あいぞうばんの書籍やマンガ達、私と娘のアルバムとか写真たち、ひな人形、電子ピアノ…、ほかには?


 実家は手狭てぜまなため荷物を預けておくスペースは限られる。


 トランクルームや貸倉庫を借りるという手もあるが、真夏高温になりそうだし、(その3)の中で温度管理や湿度管理がいるものは入れられないのかなと思う。


(本が多い…。きっと全部持っていくのは無理だ)


 涼子と娘のみゆは、とにかくたくさんの本を読む。読書が大好きだ。

 2人が図書館で借りた本はここ12年間でゆうに3,000冊を超えている。といっても冊数で、熟読した小説や実用書もあれば、ざっと目を通しただけのダイエット本やエッセイ、週刊誌、月刊誌のような雑誌も含まれる。


 涼子は、図書館から何度も借りなおして手元においておきたい本を購入して本棚に入れるのだが、それ以外にも図鑑、地図、旅行本、料理本、永久保存版の雑誌たちがいる。マンガは数年前に結構な断捨離だんしゃりをしたが、それでも100冊以上はあるだろう。


 手塚治虫のブラックジャックは今は手に入らないハードカバーのものだし、ジョジョ、ハンターハンター、あさきゆめみし、ガラスの仮面、学習まんが日本の歴史、世界の歴史、ちょっと待って、300冊くらいあるんじゃ?いやもっとかも…


 みゆの絵本はいったい何冊あるのだろうか。小さい頃に毎日読み聞かせた絵本の中でも、みゆが子どもができた時に持たせたいと思ってるものがロフトにごっそりあった。


(私達の本を処分しなければ…)


 涼子は考えただけで、泣きそうになった。あの本達は、涼子という人間を形作ってきた細胞と同じだった。


 この最後の3行は共感してくれる人も多いはず。



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