第3話『告白①』
TATSUYAに入り、借りるDVDを選ぶ。前に来た時より、レンタルコーナーが隅に追いやられ、代わりにカードゲームコーナーが拡大していた。このままだと、いずれカードショップになるんじゃないか?
しかし、レンタル店が無くなっては困る。私の家では、◯◯フリなどのストリーミングサービスが禁止されているのだから。親父いわく、「こんなのばかり見てたらバカになる」らしい。でも「見すぎるのがよくない」というだけで、週に一本のDVDを借りることは許されている。
元カノの家で観てたアニメの続きにしようかな。でもアニメは三十分×二話しか収録されてないし、映画借りた方がコスパいいんだよな……と悩んでいる間も、後ろに少女が佇んでいた。相変わらず一切喋らないまま、ただひたすらに、私のあとを着いてくる。
無視してるみたいで、心が苦しくなってきた。沈黙に耐えかねて、少女にアドバイスを求める。
「どっち借りたらいいと思う?」
マッチョがサメと戦う映画のパッケージとゴツい絵柄のバトルアニメのパッケージを見せた。
「……」
少女は一分ほど真剣に悩んだ末、サメの方を指さした。
「そっか。真面目に選んでくれてありがと。こっちにするよ」
少女は誇らしげに頷いた。
……かわいいなこの子。身長が低いのも相まって、小動物的な雰囲気がある。
貸し出し手続きを済まし、DVDが入った黒い手さげを学校指定のリュックに収納して、エスカレーターで一階へ。ここは小さい複合商業施設で、一階にはスーパーがある。
どうせだし何かおごってやろうと、アイスが入った冷凍庫を覗き込む。うわ。思ってたより高!?さっきDVDも借りたし、中学生のおこづかいじゃキツイな。仕方ない、ここは……
アイスを買い、外に出て、歩きながら、買ってきたハヒコを袋から取り出す。切れ目から半分に割り、片割れを少女に渡した。
「……!?」
少女は戸惑った後、遠慮がちにハヒコを受け取り、ぺこっと深くお辞儀をした。
ハヒコの片割れを美味しそうに吸う少女は愛らしかった。なんか母性を刺激されるんだよなぁ。甘やかしたくなる。
少女は相変わらず一言も喋らないが、不思議と居心地は悪くなかった。
適当に歩いた末に、公民館に着いた。正面入り口から見て左側にあるスロープの道を下り、寂れた中庭にたどり着く。中庭には誰もいなかった。まあ、みんな普通は、公民館の中にある自習スペースに行くからな。
でも、この方が彼女も喋りやすいだろう。古びたベンチに並んで座る。
「話したくなったらいつでも声かけて」
図書室から借りてきた文庫本でも読もうと鞄を開けた、その時……
「……すぅ……はぁ……」
少女が深呼吸をする声が聞こえてきた。体が震えている。すごく緊張しているようだ。
「あっ……あ……」
助けてもらったお礼を言いたいのだろうか?
「あなたはボクの運命の人です」
??
心身が一時停止してしまった。てっきり、「ありがとうございます」と言われると思っていたから。
「やっと決心がつきました」
少女が堂々と宣言する。数分前までオドオドしていたくせに。まるで別人みたいだ。
「好きです。付き合ってください」
私の目を真っ直ぐ見て、言葉を撃ち抜く。少女はまばゆい光をはなっていた。
その光に心を焼かれそうになりながら、冷静に状況を判断する。
私、告白された?しかも、会ったばかりの、ろくに話したこともない小学生に?
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