第8話 超共振、魔法の才能③

雷鳴轟く演習場。

青黒い光が縦横無尽に駆け巡る。

爆雷、轟音。しかし、それが行く着く先は霧散。

ミラの絶対守護領域により、全ては無に収束した。

一拍置いて、辺りを静寂が支配する。


周囲の生徒達は、あまりの光景に唖然としていた。


「おい、なんかやべえぞ!」

「なんだ、なんだ!?」

「どうしたんだ!?」


口々に騒ぎ立てる群衆。

経験したことの無い出来事に、順応できない。


それは、当事者たる俺も同じだった。

一滴、冷や汗が頬を伝う。


「...おい、ミラ、いったい、何だそれは...」


未だに煌めく魔素は、しかしミラも状況が分かっていないようだった。


「...ごめんなさい、私にも何がなんだか...わからないわ」


ミラはとても困惑した表情でいう。

ただ正気を取り戻したのか、次第に魔素の輝きは落ち着いていった。


「ただ、必死で...。あなたの全力に応えなきゃって、受けとめなきゃって思ってたら...」


「...そうか。俺も少しやりすぎたが...、しかしこれは、あまりにも...」


まるで、歴史に名を残した天才魔術師のようではないか。


「そうですね。貴方達は類稀なことをやってのけました」

騒ぎを聞きつけたゆるふわ講師が、その姿に似つかわしくない真剣な目で語り始めた。


「まずリーン君。きみは常人より大幅に内なる魔素をお持ちのようですね。

ただの初級魔法『スパーク』でさえあの威力。

受け側がミラさんでなければ、あるいは大惨事になっていたかも知れません。

これは私の落ち度でもあります。

危急の際の治癒魔法を準備していたとはいえ、監督不行き届きと言えます。これは後で反省文ものですね」


「次にミラさん。貴方は高等部1年にして、既に相当な魔素コントロール力を備えている。国家魔術師のA級そこらは目じゃないレベルです。

『魔素の超共振』、噂には聞いていましたが私も初めて見ました。

一握りの天才のみが可能とするその御業、大変見事でした」


「内なる魔素とは、成長期に応じて増えるものですし、ダンジョン及び演習場で監督者が居る場合を除き、魔法の行使は禁じられていますから、お二方は今の自分の限界を知らなかったのでしょう」


「そういう意味では、本日の実技演習は大変有意義と言えるかもしれません。教師としては失格ですが、私はお二人の将来が非常に楽しみになってきました」


ゆるふわ講師の総評を聞き、俺とミラは互いに視線を重ね合わせた。

...ミラ。初対面は散々だったが、まさかこんな才能があるとはな...。


「さて、大方、みなさんの実技演習は終わったようですし、これ以上続ける気分でも無いでしょう。

本日の講義はこれにて終了と致します。

残りはペア通しで振り返りの場として下さい。

...わたしは始末書、書いてきますね...」


そういって、

ゆるふわ講師は悲しそうに去っていった。


俺は少し罪悪感を感じたが...、しかし言われた通り、非常に有意義だったと感じる。

ダンジョンでは全力を試す機会が無いし、街中では当然攻撃魔法は禁じられている。

俺の魔法の実力、なかなか捨てたもんじゃない。


しかし、それにしてもミラの才能。

...あれはヤバかった。

『超共振』、あまりにも絶対的な力の差を感じた。

演習なのに、ただの防御魔法なのに、敵意を感じないのに、その才能に冷や汗をかいてしまった。


もし、アレが俺にも使えたなら...。

あるいは俺の目的に届き得るかもしれない。


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