第49話 避けられぬ脅威

「ありがとう。この話は参考にさしてもらおう」

「はい、それでは・・・ 戻ってもいいですか」


 レイドは教師たちに”黒き魔獣”についての説明を終えた。


「ああ、構わない。 気を付けてな」

「レイド君、またね~」


 ロイクはレイドに手を振った。レイドも申し訳無さげに振り返す。

 そうしてこの場から離れていった。


「レイド君は・・・ Cクラスの生徒かね?」

「はい、僕が担任を受け持ってますよ~ ミゲル教頭?」


 ミゲル教頭と呼ばれた初老の男性は、髭を触りながら問い続ける。


「ふむ・・・ あれ程の子がなぜCクラスにいる? Aクラスでもトップの成績と身分を持っているはず・・・」

「まあ、Cクラスには入学試験トップ3が全員いますからね」


 教師陣はざわつき始める。


「ロマン君・・・ ちょっといいか?」

「は、はい。何でしょうか・・・」


「・・・君はあの学年からは降りてもらおう」

「え・・・ なぜ・・・?」

 ロマンは突然のことに戸惑う。


「・・・あの生徒たちがAクラスに居たら今回の事故は防げたとは思えんか?」

「そ、そしたらCクラスが被害を受ける羽目になったでしょう! たまたま、あのレイドとかいう生徒がいただけで・・・」


「はぁ。私にここまで言わせるか・・・ ロマン戦士長、いや、ここではロマン・べレーターか?」


「な!? 貴方は・・・ いや、貴様はどこまで知っている・・・!」

 ロマンの表情は急変。とても険しいものに変わった。


「ロマン・べレーター? 平民ではなかったのか?」

「べレーター家? 聞いたことのない家名だな。外国か・・・?」

 他の教師もこそこそ話し始める。


「・・・さあ、選ぶんだ。戦士長ロマンとして去るか、それとも国賊としてか、な?」

 ロマンはしばらく黙り込む。


「チッ・・・ ここは去らしてもらおう・・・」


「そうか。今までご苦労だったな・・・」

「・・・貴様の顔なんて見たくもねえぜ」


 そして、ロマンはどこかへと行ってしまった・・・

 教師たちは皆、あっけに取られている。


「・・・それでは皆さん、気を取り直して、今後の対応をしていきましょう」

 ミゲルは一人にっこりと笑ったのだった・・・



 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 それからなんやかんやあって、あれは不幸な事故として処理された。

 責任を取ったのか、ロマンは学園からいなくなった。


「ケッ、絶対に俺らが一位になったはずなのによぉ、うやむやにされてしまったぜ」

「カイン、仕方ないさ。死者が出たからな・・・」


「・・・その中の一人は、ファブリスらしいな」

「ああ、目の前で見たから間違いない」


 ユーラル家の子息が死んだことは大きな騒ぎになったが、幸いもう一人兄が健在なので、後継ぎは問題ない。

 ファブリスは学校中から嫌われていたらしく、彼の死を悼む人はただ一人を除いて誰もいなかった。


「それより聞いたか、マルクの奴、王位継承権から外れたらしいぜ?」

「だからあいつは最近、学園に来ていないのか・・・」


 マルクは度重なる失態で、王の失望を買ったらしい。まあ、自業自得だ。


「あ、いっけね! 俺、もう剣術の講義があるんだった! じゃあな、レイド!」

「おう、頑張って来いよ!」


 変わったことがまだある。Cクラスが、自由に講義を受けられるようになったのだ。

 今回の事件で、大きくレイドが活躍した為である。

 

 学園では、取りたい科目を好きなだけ受講できる形だ。


 レイドは何を受講しているかというと・・・?


「あ、レイド! 探しましたよ!」

「おう、エレーヌ。元気そうだな」


「これから魔術についての講義を受けるんですよ! その為に学園へ来たようなものですから!」

「そうか・・・? 忙しくなった気がするんだが・・・」


「何言ってるんですか? レイドも魔術の講義を受けるのに」


 そう。レイドはエレーヌと同じ魔術理論の講義を受ける予定だ。


「・・・まぁ、魔術には興味があるしな?」

「ん・・・? ちょっと他のも見せてください」

「あ! ちょっと!」


 エレーヌは勝手にレイドの受講カードを覗いた。


「はい・・・ 何というか・・・ 私とほぼ同じじゃないですか・・・」

「そ、そうか? 奇遇だな! ハハハ!」


(たまたま、たまたまだ! お互いに興味のあるものが同じなんだな!)

 ・・・心の中までごまかそうとするレイドであった。


「まあ、レイドと一緒なら、安心できますね・・・」

 ぽつり、とエレーヌがつぶやいた。

 

「ん? 何か言ったか?」

「い、いいえ! なんでもありません。それより、まだ時間があります。どこかへ食べに行きませんか?」

「・・・よし! 乗った!」


 そうしてレイドとエレーヌは共に歩き始める。


 レイドたちの学園生活は始まったばかりだ。

 ついに動き始める、”本編キャラクター”。未だに正体が分からぬ”黒き脅威”・・・


 未来は決して明るくは無いが、当分は心配しなくていいだろう。

 

 なぜなら、”最強”のダッグが、運命を変えるのだから・・・



 

 第三章 学園入学編 ~崩壊した本編~ 完




 ~あとがき~


 ここまで読んでくれてありがとうございます! 第三章、終了です!


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