魔王様は平和でいたい4


「対策を練ると言っても中々良いものはパッとはでないな」

「まあそう直ぐに解決できるようでしたらここまで放置していませんし」

「様子見と言いつつ後回しにしていたのも事実、まだ不満程度で収まっているがそう遠くない未来で何か行動を起こすかもしれない」

「私としては歯向かってくるやつら全員皆殺しで良いと思っていますけどね。あんなの手元に置いてたって、ここで騒ぎを起こすか、人間たちの方で騒ぎを起こすかの違い程度しかないですよ」


シニメノは元々人間に囲まれて他の魔族と関わらずに生きてきたせいもあり魔族という種族に愛着というか優しさを持っていない。大抵の場合バッサリと切り落とす策をまず初めに持ってくる。


「まあそう焦るな。彼らは認めたものに対してはちゃんと礼儀を持って従ってくれるんだ。ただ従わせるのにも限度があるというのが今回の問題点なんだ」


そう、彼らのような強さこそ一番だと考えてるおかげで今ラフターラの指示にきちんと従ってくれている。ただその中でもやはりプライドだけは中々曲げられないという者が多いのだ。前提として自分は強くて凄い、そんな自分より強い奴はもっと凄いから従うといった自尊心の高さがある。そこにプライドやらが入ってきて厄介なことになっているのだ。


「そうですね。どうにも彼らは自分が助けられるという立場になる事が許せないようですし、逆に弱い奴なんて助ける必要がないといった考えを持っています」

「やはりその思想がネックだな。どうにかして助ける事も助けられることにも慣れてもらわないといけない」

「つまりは互いが助け合わなければどうしようもない、つまりは死んでしまうかのような状況であれば、あり得るかも知れませんね。彼らも死にたくはないでしょうし」

「だがまあそんな都合の良いような相手は出てきてくれないな。もし出てきたとしてもそれで本当に全滅でもしてしまったら元も子もない」

「それで良いと思いますけどね」

「真面目に考えてくれ」

「考えてますよ。それに魔王様が実際にそういった事を望まれていないってのは分かっていますから。それでは少しお時間をください。策を練るには私の方でも少し調べて来る必要があるので」

「おや、何か思いついたことがあるのかな」

「まあ、初めから思っていたことではあったんですが、魔王様が好まれないかもしれないので話していなかっただけです。しかし他に策がない今はそうも言ってられないので」

「多少は目を瞑る。何かあったら報告してくれれば良い」

「はい、それでは」


しかしまあ初めから思いついていたとはさすがシニメノだ。私は長生きな事もあって本など読む機会が誰よりも多いから大抵のことは知っているし経験もしている。だがその寿命の差があまりにも大きいせいで私と彼らとで認識だったり考えというのが大分違う。ジェネレーションギャップが常に起き続けているというわけだ。私も私なりにその時代ごとに合わせていこうとはしているがようやく慣れてきたと思った頃にはもう次の世代に入っているのだ。価値観っていうのはそう易々と変えられるものでも無いからやはりどうしても時間がかかる。人間たちはそれをとんでもないスピードで繰り返すことによって日々変わり続けているが、今の魔族だって昔の魔族と比べれば大きく変わっている。私は中々それに追いつけない。つまりは現代の魔族に関する問題は、現代の魔族の方がより解決するのに適しているというわけだ。


そうしてシニメノと話をした日から幾つか経って、その日も私は散歩がてら魔王城を歩き回っていた。最近は本も読み尽くしてしまって本当に出来ることが散歩しか無いのだ。魔王という存在はある意味いるだけでその役割を果たしている。人間からすれば魔族の代表、魔族からすれば頼りの綱のようなものだろう。そうして外でも見に行こうかと思った時にシニメノが現れた。


「魔王様、調査が終わりました」

「おお、そうか。どうだろう、やれそうか?」

「そうですね、上手くいけばおそらく魔王様の望み通りに誰も死ぬ事なくかつこれまでのように家族が不満を抱き続ける事も無くなるのでは無いかと。ただ、」

「なんかあったのか?」

「少々魔王様に体を張ってもらわないといけません」

「ああ、お前が言っていた私が好まないかも知れないという所だな?」

「はい、おっしゃる通りです」

「とりあえず聞こう。どんなものだ?」


聞くところによるとどうやら彼らを限界まで追い詰めて助け合わなければ死ぬという状況にすれば流石に彼らも動くだろうというのをラフターラとも確認したらしい。それは話に上がっていたがそうそう都合の良いような相手が現れることあるわけ無いというのが数日前の話。それに対してシニメノは、居ないのならば作ってしまえば良いということだ。彼らを限界まで追い込ませることのでき、その上死なない程度の手加減が行えるものなんて、この世に私以外いないだろう。手っ取り早く言ってしまえば、反乱を起こさせようということだ。


「いや、本当に面白いな。まさか反乱を起こさせないようにするために、反乱を起こさせるっていうのは」

「魔王様頼りになってしまう上に悪役を押し付けるようなものになってしまったんですが」

「良い良い、私だけではこんな事思い付かなかっただろう。やはりシニメノが居ないとダメだな」

「それはこちらの台詞ですよ」

「そうか?かなり助けられてばかりな気がするが」

「私を一番最初に助けてくれたのは貴女ですから」

「たった一回だけじゃないか」

「何度も言ってますけど魔王様は私にとっての王子様なんですよ。好きな人がそばに居てくれるだけで何でもできるような気がするんです」

「君の理想が崩れ無いようには努力するよ」

「そんなことしなくたってそのままでも素敵なんです」


シニメノは普段とても真面目で頼りがいのある良い部下なのだが結構乙女チックというか私に夢を見ているような節がある。そんな風に思われたところで期待に沿えるような素敵な王子様なんて柄ではないのだが、やはり第一印象というのは重要なんだとつくづく思う。


「反乱を起こしそうな者たちは候補がわかっているのか?」

「ええ、今の所4、50体程度が怪しそうですね」

「まあまあ多いな」

「まあここから増えたり減ったりもあると思うので厳密には分からないですけど、あくまで目安程度に」

「あとはいつ起きるかだな」

「それについても大方の予想はついています。ここ一ヶ月以内に起こされる可能性が高いです」

「ありがとう、それじゃあ久しぶりに派手にやろうか」

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愛させて、魔王様! 明らかなアキラ @akirakanaakira

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