第23話

試着を始める前に俺は予め有力候補を言って置くことにした。

何度も明子ちゃんに着せないといけなくなりそうな気がしたから。

有力候補はウエットスーツにも使われるネオプレーンゴムのもの。

裏側はスキン地でゴムそのものといった感じ、表はジャージ素材で着色も可能だから。


候補を聞いた亮も朋子も納得したようだったが、明子ちゃんだけはスリーピングバッグに入る事に集中し過ぎて聞いていないようだった。

現に俺が話し終えると同時に、1着目のスリーピングバッグの吸入を催促し開始した。


2着目、3着目とスリーピングバッグを重ね着し、真空パックする度に明子ちゃんの動きは鈍くなった。

「うぁ、すごい体がほとんど動かせない♪」

床に転がる黒い物体から聞こえてくるくぐもった声からは苦しさは微塵も感じない、むしろハイテンションで楽しそうだった。


「さあ、準備完了!試着しましょ」

俺と亮は明子ちゃんにスリーピングバッグを着せ圧縮させるのに、えらく体力を使った。

特に2着目以降はほとんど明子ちゃん自身で動けなくなったから。

見かねた朋子もフォローする形で、手伝ってくれた。


そして、事前に用意したさまざまな素材は試着せずに、ネオプレーンゴム素材の寝袋へ明子ちゃんを背中側のファスナーを大きく開いて入れていく。

ピッタリとした寝袋でないので、ファスナーを閉めると少しダボっとしている。

このダボっと感をどう埋めるかだが。


野球観戦で残っていたジェット風船を膨らませて、明子ちゃんの両側に入れてみた。

それがうまい具合にダボっとした空間を埋めて、張りが出て明太子感が出てきた。

「うーん、改良は必要だがこれでいこう!」

全員が同意して頷いた。


疲れたので、3人はソファーに座って朋子が用意した飲み物を口にする。

明太子の試作品は、声を上げる事もなく、一人でギチギチ拘束を思う存分味わっていた。



こんな事をしながらだったが、俺たち4人は準備、練習を重ねて予選を突破して本戦出場を勝ち取った。

これが仮装大賞 出演に至るまでの経緯です。


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仮装大賞 ごむらば @nsd326

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