第19話
後部座席の足元にボストンバッグを置く、こうしておくと安定するのでシートベルトをしなくても大丈夫だ。
近くのホームセンターに到着。
車にバッグを置きっぱなしにしていて、盗難にあったら大変なので一緒に持っていく。
ずっと肩にかけているのも重くて辛いので、ショッピングカートへ乗せる。
自分たちの彼女で、本人同意というか希望のもとで、バッグに詰めているのだが、周りの目が気になる。
まるで自分が犯罪者になったような気分だ。
無事に板台車を購入し、さっさとうちに帰ろうと駐車場へと向かう。
その途中で、警官に声を掛けられた。
俺と亮もビクッとしたが、同時に俺たちの手荷物からもビクッとした振動が伝わる。
“ヤバい、職質だ“
「すみません、その大きな荷物を確認させてもらえませんか?」
「え、私たちですか?」
警官が頷く。
下手に断ると返って怪しまれる。
仕方なく、バッグの南京錠を開錠してファスナーを開く。
ファスナーを開いた中には、ビニールに包まれた赤い物が見えている。
「これは何ですか?」
警官の問いに亮が答える。
「衣装です、舞台で使う衣装なんです」
「中のもの一度出してもらえますか」
警官の言葉に俺も亮も固まる。
さすがにここでバッグから彼女たちを引っ張り出す訳にはいかない。
出したら簡単には戻せない。
それにホームセンターの買い物客の目もある。
無言で動けない時間が続く。
「さあ、早く!」
警官に促され、ゆっくりと動き出した時だった。
警察無線が入る。
職質をしていたのは、何かを探していたから。
それが発見されたようで、警官は「ご協力ありがとうございました」と一言残して、急いで去ってしまった
【よかった】
安堵の空気が俺と亮、そして二つのバッグから漂っていた。
また、職質されたら溜まったものではない。
購入した板台車にバッグを乗せて、南京錠でファスナーを施錠すると、一目散に帰宅した。
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