第16話

ドアを開くとスーツケースを持った亮だけが立っていた。

「こんにちは!明子のヤツ、返事も聞かずに練習に行こうって、張り切って、すみません突然」


亮は俺の汗をかいた顔を見て、バタバタした事を悟ったのだろう。

えらく気を使った言い回しをした。


「まあ、入ってよ、俺たちも実は練習してたんだ」

そう言いながら、亮を招き入れる。

「お邪魔します」

リビングでソファーに腰を下ろしてから話す。

「あの、朋ちゃんは?」

「今は疲れてベッドで寝てるよ、ところで明子ちゃんは後で来るの?」

俺の質問に亮は運んできたスーツケースに目を向ける。

「え?その中?」

亮は何も言わずに頷いた。

そして、立ち上がるとスーツケースをゆっくりと横倒しにして、スーツケースを開いた。

中には赤い物体が布団圧縮袋でぴっちりと真空パックされていた。


亮は布団圧縮袋から出ているホースに手を当て、呼吸を確認すると、俺にもホースを向けてきたので手を当ててみた。

確かに生温かく湿気を帯びた空気が出ている。


亮はスーツケースから布団圧縮袋を取り出し床に置く。

床が冷たかったのか、ギチギチと音を立てて布団圧縮袋の中身が動く。

ホースの突き出た部分から空気を入れて解放される明子ちゃん。


俺はてっきりラバースーツを着て圧縮されていると思っていたが、そうではなかった。

スリーピングバッグで真空パックされた上から布団圧縮袋で圧縮されて、スーツケースに入れられていたので、全身が固まっている明子ちゃん。


明子ちゃんもさすが朋子の双子の姉妹だけあり同じフェチがあるのだと知り、ある意味感心するとともに、今度朋子にも同じプレイをしてみようと思った。


亮が口を開く。

「明子の言った通りだ、大和さん全然驚いていないし、引いてないですね」

亮が続ける。

「俺は大和さんたちが驚くし引かれてしまうから止めようと言ったんですが、明子が大丈夫だと言い張ったんです」と。


そして、モジモジする亮。

「どうした?」

亮は恥ずかしそうに「明子が着ているラバースーツを俺も着てみたくなって」と今度はお前もかと突っ込みたくなる。


俺は亮に体を細かく採寸してくれさえすれば、俺が注文する事を約束した。

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