第2話

その声に応えるように、より一層舟で跳ねるカツオ、そして海の中でも水飛沫を上げて跳ねるカツオ。

みんな一丸となって頑張ったのだが、合格点にはあと一歩及ばなかった。

カツオは力を使い果たしたようで、急に動かなくなったが、苦しそうに細かく動いているのが分かる。

しかし、その時審査員の1人がボタンを押し忘れていたようで遅れてボタンを押した。

その途端、合格の音楽が鳴り響き釣り人2人は飛び上がり、舟上のカツオ、海に落ちたカツオともに大きく跳ねて喜びを分かち合った。


バニーガールが釣り人の一人に合格メダルを掛け、舞台の前に出てくると司会者がインタビューする。

仕事仲間?司会者の質問に恋人同士ですと答える。

黒子たちが後片付けとカツオの中から演者を引っ張り出す。

おそらくは女性が出てくるだろうと予想して見ていた。

ここで大抵は顔を絵の具で塗ったカツオの演者さんが笑顔か泣きながら出てくるのだが、今回は違った。


出てきたのは赤身?いや赤いミイラのような塊がそれぞれのカツオから1つずつ計2つ、台車に乗せられて黒子に運ばれてきた。

明太子のような形のその赤いミイラの全身はラバーで覆われているようでテカテカしており、中身の女性は真空パックされたように、女性独特の凹凸が妙に艶めかしい。

そんなことより、女性たちの顔も体同様ラバーに覆われて呼吸穴も覗き穴もない。

窒息しないのか、見てるこちらが心配になる。

司会者もその姿に驚きを隠せない。

運ばれてきた赤いミイラの顔の辺りにマイクを持っていきインタビューするというより、自身の疑問をぶつける。


「えーと、これは苦しくないの?」

見ていてこちらも気になっていた事、頷きながら画面を食い入るように見る。


赤い真空パックされた物体が答える。

「カツオの着ぐるみの中でいっぱい跳ねたので、今は苦しいです」

答えた声は可愛らしい女性の声。

お腹の辺りが激しく動き、マイクを向けられた顔も呼吸の度に張り付いたり膨らんだりを繰り返している。


「お顔見せてよ!」

司会者の言葉に、「すみません、これは真空パックされた状態ですぐに脱げないんです」とだけ女性は答えた。


「あ、そうなの」

司会者はあっさりと引き下がると話を切り上げようとするが、視聴者としてはまだインタビューを続けて欲しい。

しかし、こちらの願いは届かず、時間の関係もあるので司会者もそれ以上は突っ込まず、次の仮装の紹介に入り釣り人とカツオの中身は舞台の袖にはけていった。

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