第6話 ユーレイなんか怖くない・後編

 メイはあせって、次に来た電車に飛び乗った。

 すいてて助かる、と思ったら実は各駅停車。快速の停まる駅まで二十分以上かかり、


「もう! スサノオもスマホ持っててくれれば、こういう時助かるのに……!」

 広い乗り継ぎ駅構内をあてもなく必死で探しまわるうちに、ふと思い当たる。

(あ! スサノオがこの駅で降りたとはかぎらない……んじゃない?)


 走行中の快速から飛び出した可能性だってあるが、たぶん、やっていないと思う。

 最近、電車の窓はたいてい閉まっているがスサノオは、窓ガラスや壁をすり抜けられないらしいからだ。意外にも、ガラスや壁を壊して出入りするのも見たことがない。


(なんだか前より、物を壊さないようにしてくれてるみたいだし……)

 そこまではいいとして、では、この駅で降りたかどうか。

 冷静になって考えてみると、メイがついてきていないことに気づいたとして、スサノオの性分からしてわざわざ途中下車して戻って来たりはしない気がした。


(乗り継ぎ駅の名前、おぼえてくれてれば、そこで降りて待ってる……かも?)

 一瞬、希望的観測にすがってしまいそうになるが、あわてて頭をふって打ち消す。

「たぶん……ううん、スサノオは絶対、駅の名前なんかおぼえてない」


 破壊神は文字が読めず、人の名前にも場所の名前にも無頓着だ。電車の乗り継ぎでメイがまごまごしている後ろで、人間社会の複雑さにほとほとうんざりしている様子。

「……終点まで行っちゃったかも」


 ありうる。

 そうにちがいない! と結論したところに、ちょうどホームに快速電車が入ってきた。

 またもやすさまじく混んでいる。


 しかしメイも今度ばかりは決死の覚悟で「すいません、すいません」と小声であやまりながら、ぎゅうぎゅう強引に乗りこんだ。

 手すりもつり革もはるか彼方。なのに、揺れて足が浮いても倒れないほどの混雑ぶり。

 正直、生きた心地もしなかったが幸い、停車のたびにすいてゆき──


 終点で降りたのは、メイをふくめて数人だけだった。みな早足に階段を降りて去る。

 ホームに誰もいなくなるのを待って、そっと小声で呼んでみた。

「スサノオ……?」


 ささやかな呼びかけはたちまち夜気に吸いこまれて散り、

(ここには……いないみたい)

 なぜだか確信できてしまって、メイはがっくり肩を落とした。


 どうしよう? と自問してみてもなにも思い浮かばず、しばしぼうぜんと立ちつくす。

 急に夜風のつめたさが身にしみて身震いし──やっと、気づいた。


 スサノオは基本、いつも宙に浮いている、というか空を飛んでいる。

 土地の名前など知らなくても、メイの家や学校が具体的にどのあたりかは、地形で把握しているのでは?

(とっくに先に、うちに帰ってたりして……)


 どこでなにをしていた、とバカにされそうな気がしてさらにがっくりし、メイはとぼとぼと帰りの電車の来るホームへときびすを返す。その時、

「?」


 誰もいないと思ったホームのベンチの陰に、人がしゃがんでいるのが目に入った。

 若い女性だ。

 パーティにでも出席した帰りか、明るい色の髪をきれいに巻き、華やかなワンピースにハイヒール姿。なのに、服のすそや長い髪が地面にすれるのもかまわず、ベンチの下や自動販売機の下をのぞきこみ、必死でなにか探している。


 メイはなんだか身につまされてしまい、おずおずと声をかけた。

「あの……なにか……落とされたんですか?」

 女性はびくっと、身体をこわばらせた。

 ふり向きかけたが、恥ずかしそうに顔をそらし、

「あの……たいしたものでは……ないん……です……けど……」


 背を向けたままの消え入りそうなつぶやきにむしろさらに親近感をおぼえ、メイは手にした鞄をベンチに置き、自分も下をのぞきこむ。

「どんなものですか? いっしょに探せば見つかるかも」

「そんな……! いいですいいです……つまらないもの……だし……」


「電車が来るまでだけ、お手伝いします。それで、なにを探してらっしゃるんですか?」

「……缶……バッジ? みたいな……?」

「丸い、金属の?」

「そう……」

「大きさは」

「ごひゃくえんだま……ぐらい?」


 自信なさそうに指二本で直径を示す女性にうなずいて、メイはせっせと探しはじめた。

「五百円玉サイズならけっこう大きいですし、きっとすぐ見つかりますよ」

「ご親切に……ありが……とう……ございま……」

 よほどたいせつなものなのだろう。女性は長い髪の陰で涙に声を詰まらせる。


 しかしそんなサイズの缶バッジなら大きくて目立つはずなのに、見当たらない。

「自販機のすき間にも……下にも落ちてないですね。ここには、ないのかも」

 もしかしたらよそで落としたのでは、とは言いにくくてためらうメイに、女性はなおもホームをうように執拗しつように探しながら、


「でも……でも……ここなんです。ここしか……電車から降りる時……混んでて……押されて……そのとき、手に持ってて……落として……なんで落としちゃったんだろう……」

「乗客が多かったんですね。もしかすると……落ちたところを誰かに蹴飛ばされて、遠くに転がっちゃったかも」


 メイは立ちあがって少し離れた柱の方へ走り、柱の陰やホームドアの下のすき間に落ちていないか、のぞいてまわる。だが、見つからない。

 と、いきなり、


「線路に、落ちたかも」


 すぐ後ろで女性がささやいた。

 ハイヒールのはずなのに靴音がなかったので、メイはちょっとどきっとする。

 女性はメイの背後からホームドアごしに線路をのぞくようにのびあがり……思ったより背が高いようだ……長い髪がメイの顔や肩をなでた。ささやく。


「線路……線路に落ちたんだきっと……転がって、転がって……たいへん、拾わないと」

「じゃあ駅員さんを呼びましょう」

!」


 ぎょっとするほど大きい声で、女性は叫んだ。

「それじゃ間に合わない! 次の電車がきたらつぶされちゃう! わたし……わたしの……」

 耳に刺さるような金切り声にこのひと、ちょっとおかしいかも、とようやく気づいたが、


「でも拾うのはさすがにムリですよ。あぶないし、ホームドアだってあるし……」

 気圧されたメイの口から出た反論は、弱気なつぶやきだけ。

 その耳もとに、女性の吐息がかかる。


「のぞくだけ。ちょっと、下をのぞくだけなら……」

 言いつのる女性の声を聞くうちに、いつしか自分の手がホームドアの上にかかっているのに気づいて、メイはぎょっとした。


 ぎょっとしたのに、なぜか、なにもする気が起きない。

 身体がつめたく、重たかった。感覚も鈍い。自分の身体なのに自分のものではないかのよう。

 ホームドアから手を離せなかった。それどころか……

(うそ、わたし、まさか、よじ登ろうとしてる……?)

 その時、


 ぺし。


 背中に、小さな破壊神の蹴りを感じた。

 物理的に蹴られたわけではない。身体は揺れなかった。でも確かな衝撃と痛みを感じ──

 同時に「おい」というスサノオの、あきれたような声を、確かに聞いた気がした。


「あ」


 とたんに頭がすっきりし、身体の感覚も戻って、メイはぱっとホームドアから手を離す。

 背後の「女性」は沈黙した。

 触れそうな近さに立っている。

 ありありと感じる。なのに今はもう、息づかいも聞こえない。


 異様な圧迫感だった。

 ぴかぴかに照明された明るいホームに立っているのに、総毛立つような恐怖の予感が、真っ黒な泥のようにおおいかぶさってくる。息が詰まりそう。

これは、つまり……


(オバケさんだったんだ……! ぜんぜん、気がつかなかった!)


 人型のオバケには危険なものがいるから、近づいてはいけない、と楓からあれほど言われていたのに、まんまとひっかかってしまった! 恥ずかしい。

 などと考えていると、背後の「女性」がふたたび口を開いた。


「ねえ……」

「わたし急いでいるので、これで失礼しますっ」

 メイはふり返らずに走って逃げようとしたが、声は足音も立てずに追いすがり、


「ねえ! 拾ってよ缶バッジ、なんで知らん顔して行けるのよ人でなし、バカにしてるの、同情してよかわいそうでしょかわいそうって思ったでしょ助けてよ助けて助けて」

 ずしっ、と肩に重みがかかり、心に押し入ってこようとする恐怖と狂気を感じたが、

(あ……こういうの、知ってる)


 メイはかえって冷静になり、立ち止まった。

(このひと、ロキさんみたい……! 怖がったり絶望したり、不安がったりすると向こうの力になる感じで……でも、ロキさんにくらべたら……)


 最古の夜叉神、恐怖の化身ロキが体重九トンのティラノサウルスだとしたら、今背中にのしかかっている「オバケさん」はたんぽぽの綿毛ひとつぐらいの、ささやかな存在に感じられた。


 弱い。

 しかし、悪質だ。

 メイは零課で仕事を始めて間もないが、それでもこれは悪質だとわかる。

 さすがのメイも、少し腹を立てていた。なにしろ、殺されかけたのだから。


「…………」

 もし今ふり向いたら、背後には正視することができないほど恐ろしいものがいる……というすさまじい心理的重圧を感じたが、それすら相手の作戦、と理解した今は話は別。

 メイはいきなり、くるりと向き直った。


「!」

 驚いたのは向こうの方だったようだ。

 防御反応みたいなものだろう。瞬時に若い女性の姿が崩れ、何十人ぶんかの人の顔、手足、腐りかけの血肉をこね合わせたような、不気味で巨大なかたちにふくれあがる。


 とはいえその姿も、怒れるロキにくらべれば小妖怪のこけおどしにしか見えなかった。

「あなたのしたことは、犯罪です」

 メイはきっぱり、宣言する。


「人の同情心につけこんで身体を乗っ取るのは犯罪です。まして、線路に降ろそうとするなんてありえません! それで誰かが大ケガしたり死んだりしたら、あなたもはらわれちゃうんですよ? 人にとりついて恐怖や不安、罪悪感や後悔を食い物にするのももちろん、摘発対象です。知らなかった、ではすみませんからね」


 仰天したように固まっているバケモノを前に、メイは制服のポケットから零課支給の警察手帳を取り出した。規定のページを開き、


「わたしは零課の巡査です。出雲法違反の記録をとります。なお、これはあなたの前科になります。今回は未遂でしたが同じことをくり返した場合、たとえまた未遂でも、強制祓魔ふつまの対象になりますのでご承知おきください」


 ひと呼吸おいて、手帳にさしてあるボールペンを構える。

「では、お名前をどうぞ」


 バケモノは固まったまま、うんともすんともいわなかった。

 たくさんついている人の顔も、まばたきすらせず固まったままだ。

 もしかすると見かけによらず、生まれたての個体なのかもしれない。

 メイは少し、声音をやわらげる。


「個体としてのお名前がない場合は、一族の名前でもかまいません。どうぞ」

「……ナ……なま……エ……?」

 急に知能を失ったかのように、あるいはそれも偽装なのかもしれないが、たどたどしく答えるバケモノに、メイはなるべくわかりやすいようにと説明する。


「はい。たとえばタヌキさん、とかむじなさん、とか、べったらさん、とか。山の怪、川の怪、などの一般名称でもかまいません」

「わ……ワタし……たチは……」

「たち? 複数でいらっしゃるんですね。それで、ご一族のお名前は」

「に……」


 言いかけて、自信がないかのようにためらう。

 そこへ、『まもなくホームに電車がまいります』というアナウンスが流れ始めた。

 こんなところを大勢の人に見られてはかなわない。

 メイはあせって、がらにもなく返答をせかす。


「『に』……なんですか? 『ニンジン』? 『煮豆』?」

 おなかがすいているせいか、食べ物しか思い浮かばない。

 バケモノがようやく、口を開いた。


「に……にに……にんげ……ん……?」

「…………」

 メイはボールペンを手にしたまままじまじと、目の前のオバケを見つめる。


 この輪郭もよくわからないぐちゃぐちゃの、どろどろの、悪質なたかり屋が「人間」?

 ほんのまねごととはいえ、夜叉神ロキのように人の恐怖をあおり、身体を乗っ取り、あわよくばとり殺そうとした「これ」が、人?


 ありえないとかあきれるのを通り越して、メイはつい、笑ってしまった。

「それはないでしょう! どうがんばっても、人には見えませんよ」

 メイの明るいコメントに、バケモノはとてつもない衝撃を受けたかのように震えた。


 多数の人面の目だけがてんでばらばらに動き、ステンレス製の柱に映る自分の姿を見る。見つめる。しっかり見ているくせに、なおも自信なさそうに、

「人……ニ、見エ……る……?」

「いえ、ぜんぜん」

 メイは、だからなんのオバケか教えてください、と続けかけたがその時、


「え?」


 大きなバケモノは宙に描いた砂絵のように、あっけなく崩れ落ちた。

 たいした塵も発生せず、代わりに淡い光の粒がいくつか、ホタルのように数秒あたりでまたたいたが、これもすぐに消えてしまう。


「え? え……ええっ? そんな……! ここで祓うつもりは、その……」

 なんだかわからないけど、ごめんなさい、という心地でぼうぜんと立ちつくすメイの前に、快速列車が入ってきた。


        ◆


「……と、いうことがあったんです」

翌日の、昼休みである。

 スサノオは朝、登校するやいなやそしらぬ顔で空から合流してきたが、ひと目を気にせず話せる機会を待つうちに、お昼になってしまったのだ。


「零課のサポートのひとに報告入れて、必要な処置を指示してもらって。ホームのお清めと簡単なお祓いもやったんですよ。帰りがすっかり遅くなっちゃって、お母さんに怒られて」

 頭の横に浮かぶ破壊神に報告しながら、念願のやきそばパンの、まだ暖かい包み紙をむく。


 ひとかじり。

 空き腹にしみる甘みのあるパンとソース味のやきそば、しゃきしゃきキャベツの風味と食感に感激し、

「さいこー」

 がつがつと半分ほど食べ進んだところで、思い出してたずねる。


「それで、スサノオはゆうべ、どこでなにをしていたんですか?」

「べつに」

 予想どおりの無愛想な返事に、メイは思わず笑った。


「はぐれちゃって最初、けっこうあわてちゃったんですけど」

「バカだな」

「ですよね! でも、ホームにいたオバケに乗っ取られそうになった時、スサノオの気配を感じたんですよ。背中にぺしっ、って」

「…………」


「声まで聞こえた気がして……そしたら急に頭がすっきりして、動けるようになって」

 あれがなければ、取り殺されていたかもしれない。

 メイはやきそばパンを置き、あらたまって、小さな破壊神へ向き直って一礼した。

「おかげで助かりました! 守ってくださって、ありがとうございます」


 メイの感謝をどう受け取ったのか、破壊神はまたたきもせずしばし沈黙。

 それから、きいた。

「おまえは、ゆうべ出くわしたやつを、なんだったと思ってるんだ」

「うーん、それが……よくわからないんですよ」


 メイは持参の水筒からお茶を飲み、大真面目に首をひねる。

「タヌキさんとかにしては悪意ありすぎだし、どんな変わった妖怪さんだとしても零課のわたしにからんでくるのはヘンだし、なんにもしてないのに消えちゃうとか、弱すぎるし……」

 考えあぐねて、おずおずと助けを求める。


「スサノオは見てないわけですけど……あのオバケがなんだったか、わかりますか?」

「決まってる。亡者もうじゃだ」

 即答されて、メイは目をぱちくりした。

「はい……?」


「ただの残りカスのくせに、数集まってねちねち居着くうっとうしい死霊どもだ」

「え? 死……死霊って、つ、つまり……」

 恐れおののきつつ「ユーレイ」……と続ける間もなく、破壊神は不機嫌にうなる。


「だから残りカスだ! おまえら人間の言う、思い残しとか恨み言なんかのゴミクズだ。たまぁに決意や覚悟も混じってるが、魂まで残ってるやつなんざめったにいねえ。そのくせ自分はまだ丸ごと人間だと信じてやがるから、おまえに『人間には見えない』ってホントのこと言われて目が覚めたとたん、消えたのさ」

「ユーレイ……ユーレイだったなんて……きゃあ……」


 今さらながらうろたえるメイに、スサノオは「そんなことより」と顔をしかめた。

「おまえ、あいつらのにおいが残っててくさいぞ。なんで落とさないんだ」

「えっ? くさい、ってそんな……」

 メイは驚いてそで口やえりもとをかいでみるが、なにもわからない。赤くなって、


「お風呂にはちゃんと入りました! 制服……は洗ってないけど……」

「鈍いやつめ」

 小さな破壊神はめんどうくさそうに片手を挙げ、軽くふった。

「!」


 一寸法師サイズの存在の、ささやかな動きに見合わない突風が巻き起こり、ベンチにすわるメイの全身をどっとたたく。メイは思わず顔をかばい、目をつぶったが──

(あ……)

 痛みを感じるほど強い風が通り過ぎたあと、なぜか身体が軽くなったのに気づいて目をみはった。


「あ、あの……なんだか軽く、なりました!」

「当たり前だ」

「ありがとうございます」

「次から自分でやれ」

「はい。できそう……です」


 小さな破壊神は、死霊のケガレを祓ってくれたのだった。

(スサノオってやっぱり……神さまなんだ)

 久しぶりの実感に、メイは畏敬と敬慕、感謝と恋心をごたまぜにしたような……自分でも把握しきれない気持ちで胸がいっぱいになる。

 おかげで「幽霊」を怖がる気持ちもどこかへ消し飛んでしまったが、その時。


「あっ」


 メイは、ベンチのわきに置いておいた、やきそばパンの残りがないことに気づいた。

 先ほどの突風で、ケガレもろとも、吹き飛ばされたらしい。

「そんな! まだ半分しか食べてないのに……!」

 あわてて立ちあがってあたりを見回すが、近くには見当たらない。と思ううちに、


「カア」

 カラスが茂みの向こうに舞い降り、すぐにパンの残骸をくわえて飛び立った。

「ああっ、そ……そんなぁ……」

 なすすべもなく見送るメイに、スサノオはたずねる。

「そんなにあれが、喰いたかったのか?」


 うっかりうなずいたりしたら、カラスの首をはねて取り返してくるかもしれない、と気づいて、メイはあわてて首を横にふった。


「あれはあきらめます! 現代人は地面に落ちた食べ物は基本、食べないんです!」

「なぜだ。喰いたいなら泥まみれになろうが鳥にさらわれようが、喰えばいいだろ」

「それはそれ、これはこれ、です!」

「使いどころがちがう。そのセリフは死霊に使え」

「ユーレイは今、どーでもいいです! それより今から購買に走って……なにか買わなきゃ」


 昨日からご飯を食べそこねてばかりだ。おにぎりひとつでいいから残ってますように! と祈りながら、いつになく必死に駆け出すメイを、スサノオはおもしろそうに追う。


 その、走って行くメイの制服の背中に。

 小さな破壊神の銀の髪がひとすじ、護符のように刺さっていることに、気づいた者はいなかった。




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