第7話 頂の力

「おい、起きろ」

「…ぅ」

七月ななつき三尾崎みおざきを揺さぶり起こす。

「ここは…」

俺、生きてたんだ…

体中は痛いがなんとか動くことはできる。

ここから早く逃げないと。だが、なかなか立ち上がれない。

なんとか早く…


「お!起きたか!今は動くな」

七月は話しかける。

「お前吸血鬼だよ。それも半吸血鬼だ!」


え!?俺が吸血鬼!?

どういうことだ!?

突然すぎて理解が追いつかない。


「おい!どういうことだ!説明しろ!」

三尾崎は七月の両肩を掴み、説明を迫る。


「ちょっと待て、順を追って説明するから落ち着け。そうだ、自己紹介でもしよう。私は七月 瑠璃るり、階級は特異級。で、こっちがきっさき先生、階級は1級───」

とりあえず七月の話を聞くことにした。




俺が半吸血鬼であること。

半吸血鬼がなんなのかは、2人ともわからないらしい。

吸血鬼は人の血を美味しく感じ、吸血鬼の血は不味く感じる。

吸血鬼は太陽の光を浴びることができないが、俺は太陽の光を浴びても問題ない。

そして、を加えても俺の血が不味かったこと。これが俺が半吸血鬼である理由。

死のスパイスが何なのかは教えてはくれなかった。

吸血鬼の階級とは人間に対する危険度及び戦闘能力を、総合的に黯の眼が判断してつけるもの。

5級から1級まであり、それ以上が特異級。


以上が七月から教えられたことである。




「で、俺はこれからどうすればいい?」

半吸血鬼になったと言われても何の実感もない。

そもそも半吸血鬼とはなんなのか?


「私たちと一緒に来い」

「はぁ、わかりました」

ため息混じりで返事をし、2人について行く。


薄暗い道に蛍光灯で照らされた人影が、俺の視界に入る。

目を凝らして見てみると、全身赤黒い炎に包まれた裸の男だ。

顔はどこかで…

あ!俺を助けてくれたスーツの男!?

なんで裸なんだ…!?


「誰だ?」

七月は立ち止まった。


「久しぶりー。と、言っても1時間ぶりぐらいか」

神代かみしろは3人に手を振りながら近づく。


「何者だ。貴様」

鋒が問う。

七月の業獄の焔を耐え、鋒本人の技もいとも容易く破る。

只者では無いことは確かだった。


神代かみしろ いただき。鋒さん、あなたなら俺が誰だかわかるでしょ」

「なるほど…大きくなったな少年。私たちは戦うつもりは無い。見逃してはくれないか」

鋒は軽く頭を下げる。


「鋒先生何言ってるんですか!?相手は1人ですよ!先生がやらないなら私が!」

「ダメだ。七月くん、君自身気づいているはず、業獄の焔が通用しない時点で君に勝ち目はない…」

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