第6話 力の差
「次はお前だ」
ここで死ぬのか…
「うぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
咄嗟に大声で叫び、体が勝手に動き、勝てるはずもない相手に俺は立ち向かった。
喧嘩なんてした事のない拳は、弱々しくも相手の鼻に当たる。
当たった!
当たるはずもないと思っていた殴りが当たったことが、少し嬉しかった。
一瞬の喜びも束の間、俺の感情は恐怖に支配された。
チッ
鼻から血を流し、舌打ちをした。
「技は使わない。かかってこい!」
七月の眼が一段と赤く光る。
ヤバい!
俺は外に逃げた。
だが、すぐに追いつかれる。
「こないなら、こっちから行くぞ!」
大きく踏み込み、三尾崎のみぞおち付近を殴る。
「…ッ」
床に
「グハッ…」
吐血…生まれて初めてだ。
内蔵が痛い。呼吸もうまくできない。表現出来ない痛みと恐怖に身動きがとれない。
「どうした、立て」
七月は三尾崎の髪を掴み、無理やり立たせた。
「…ぁ…くぅ…ぇ…」
言葉が出ない…
「…ぁ…めぇ…ろ…」
ここで死ぬか…
「殴りより蹴りの方が痛いんだって」
そう言うと七月はなんとか立っている三尾崎を蹴り飛ばした。
派手に宙を舞い、転がり、電柱にぶつかる。
「…」
喋ることも動くことも、もう無理だ。
微かに見えるのは自分の血溜まりだけ。
俺は静かに目を閉じた。
「味はどうかな?」
七月は瀕死の三尾崎の首に齧り付いた。
「不味い…死のスパイスを加えてもこの味か…先生…」
「100年以上生きているが、半吸血鬼を見るのは2人目だ」
鋒はニヤリと笑った。
◇◇◇
「そろそろ助けに行くか。この炎も消してもらわないとな」
衣類は全て焼け消え、七月の業獄の焔が体を覆っていた。
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