第5話 人の匂

「何とか逃げれたか…」

スーツ姿の男に助けられ、何とか逃げることができた。


深夜3時過ぎ、日の出まではまだ時間がある。

人の目につくところに行こう、そうすればアイツらも手は出しにくいだろう。

コンビニで立ち読みでもして夜を明かすか、それとも交番に行って助けを求めるか…

ただ、交番に行ったところで相手にしてくれるか分からない。

じゃあどうする…


考えてる時間もなく、とりあえず交番に行くことにした。

と言っても、警察は助けてはくれないだろう。

警察は吸血鬼の絡んだ事件や事故などは、なぜか

その理由は詳しくは知らない。


近くの交番につき、引き戸を引いて中に入る。

まあ、無理だったら無理だったで、また考えよう。

「すみません…」

「どうされました?」

若くて優しそうな警察官が対応してくれた。

正直に話すべきだろうか…

それとも嘘を言って、守ってもらうべきか…

正直に言ったら追い出されるかもしれない。


「変な2人組に追われていて、助けてください!」

嘘はついていない。嘘は。

「その2人組はどんな姿をしてるとか、わかるかな?とりあえず奥の部屋で話を聞こうか」

警察官がそう言うと、奥の部屋に連れてってくれた。

これで外からは見つからないはず。


俺は吸血鬼の特徴…いや、2人組の特徴を伝えた。

「なるほど、網代笠あじろがさを被った僧侶らしき人と腰まである黒髪の女…なるほど。今日はとりあえずお家の方に迎えに来てもらぁ────ぁぁ──…」


警察官は突然話すのをやめた。

いや、喋れなくなったのだ。

それと同時に嫌な予感がした。

そして、その予感は的中する。


「逃げても無駄ですよ三尾崎みおざき はざまくん」

きっさきは落ち着いた声で三尾崎に話しかけた。


なんでここにいるってバレたんだ!?

そんなことを考える中、もう1つ声が聞こえた。

「こんな所に来てたんだ」

鋒の背後から、七月ななつきが不敵な笑みを浮かべながら三尾崎を覗く。


七月は話を続ける。

におい…私たち吸血鬼は人の匂を嗅ぎ分けることができる、お前がどこに居ようと分かる。さっきも、学校に隠れてたのを見つけたのは匂のおかげだ」

そう言いながら七月は、動けなくなった警察官の首元に噛み付いた。


警察官の顔色は徐々に青白く、血の気が引いていく。

そして血を吸い終わると、警察官は力無く床に倒れ落ちた。


「やっぱはうまいな」

七月はニヤリと笑った。

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