第3話 黯の眼

どれほど走っただろうか、時刻は0時を過ぎていた。

自分の通っている高校まで逃げてきた。

ここなら武器になりそうな物もあるし、隠れる場所も沢山ある。

「あ、見つけた」

あ、女の吸血鬼に見つかってしまった···


「死ねぇ!」

右の手のひらを俺に向けると、無数の火の玉が飛んできた。

俺は死ぬ気で避けた。

当たればひとたまりもない。

火の玉が当たった壁は崩れ、微かに燃えている。


必死に逃げた。


校内を走り回り、消火器を見つけた。

次見つかれば死ぬ···なら、一か八か反撃するしかない。目くらましぐらいにはなるはずだ…

消化器を持とうとしたその時、網代笠あじろがさが横目に入る。


「ここにいましたか」

次は網代笠の吸血鬼かよ···

「縛りばり参式さんしき


突然体が動かなくなった…!?


「この技は簡単に言ってしまえば、金縛りのようなものです。ですが、無理に動くとかすり傷ではすまないのでご注意を」

確かに、体を動かそうとすると痛い。


網代笠の吸血鬼は懐刀ふところがたなを取り出し、俺の左胸に突き立てる。

「では、さよなら」

目を瞑り死を覚悟した瞬間、校内に銃声が響く。


ゆっくりと目を開ける。

俺の足元には懐刀が落ちていた。

そして網代笠の吸血鬼の右腕からは、血が流れている。

数メートル離れたところには銃を構えた、スーツ姿の男の人が立っていた。助かった…多分あの人が助けてくれたんだ。


「今のうちに逃げろ」

スーツ姿の男に言われ、全力でその場から離れた。

金縛りのようなのは解けていて、体は動くようになっていた。








くろの眼ですか…厄介ですね、ですが星なし。ここで死んでもらいます」

スーツ姿の男が持っている銃には黯の眼のマークが記されており、網代笠の吸血鬼は見逃さなかった。


網代笠の吸血鬼の右腕の傷は治っており、落ちた懐刀を拾い上げる。

「あれ、あいつどこ行ったの?」

女吸血鬼が合流し、黯の眼に気づく。


スーツ姿の男と、女吸血鬼&網代笠の吸血鬼、場の空気が固まる。

「夜…それも屋内…使いたくないが使うしかないか…対吸血鬼防術たいきゅうけつきぼうじゅつ影守かげもり

スーツ姿の男は体に影をまとった。


「お前ら七月ななつき 瑠璃ルリきっさきだな、厄介なヤツと会っちまったな…」

スーツ姿の男は目の前の吸血鬼の名前を口にした。

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