第2話 人の子

時刻は23時前、少し早歩きで神社に向かう。


目的地の神社に着いたのはいいが、夜の静けさも相まってか、神社からは不気味さを感じられる。

鳥居をくぐり境内に入り少しすると、後ろから声をかけられた。


「君が吸血鬼になりたいって言う人の子ですか?」

男の声が後ろから聞こえ、振り返ると修行僧のような人が立っていた。

だが、網代笠あじろがさから見える目は、切れ長で赤い目をしていた。

吸血鬼だ。俺は少し身構えた。


「初めまして、私の名前はきっさきと申します。君の名前は?」

三尾崎みおざき はざま です。ここに来たら吸血鬼になれると言われて···」

実際はなれるとは言われていない。

なんとなくだが、ここに来ればなれるのではと考えていた。


「誰もここに来たら吸血鬼になれるなんて言ってねーよ。吸血鬼になるのはそんなに簡単じゃないし」

拝殿の屋根上から女の子の声が聞こえた。

「お前···さっきの!」

そこには俺の血を吸った吸血鬼がいた。


「0時から私と鋒先生でお前を殺す。もし、日の出まで私達から逃げ切ることができれば、お前の願いを叶えてやる」

なるほど。日の出までに2人に殺されなければ、吸血鬼になれる!

ん?

え···!?

こ···ろす···!?

今···アイツら殺すって言ったのか···


「今、なんて言いました···」

聞き間違いであってくれ!


「0時から私と鋒先生でお前を殺す。もし、日の出まで私達から逃げ切ることができれば、お前の願いを叶えてやる」


聞き間違いじゃなかったのか··········


―――23時10分―――


あと1時間弱。

とりあえず少しでもここから離れよう。


俺はその場から逃げるように立ち去った。

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