もののふ令嬢、対峙す
「大概になされよ」
王太子を見据えるわしの声に、玉座の間が静まり返る。
王族を守る近衛兵たちは、武器に手を掛けて身構えておる。王族同士の争いに手を出すわけにはいかんかったんじゃろうが、
玉座の王はといえば兵を止めるでも
「立てるか、
倒れていた幼き王子に手を貸し、起き上がらせて服の埃を払う。ちんまりした子犬のような
「うむ、よき
「……あ、ありがとう、……ございます?」
これは、
カウザは振り下ろした
「
「き、貴様ッ、なにをした!」
「愚問ですな。玉座の間で攻撃魔法を放つなどという
「わたしの
自分のことであろうに、見ておらんかったのか。あるいは見てもわからんほどの阿呆か。
「さあ。
わしは王太子の目を見て笑う。
「
杖と相手を重ねるようにいうと、王太子の顔がみにくく歪んだ。
「貴様ッ!」
王太子は必死に杖を取り返そうとするが、抜けるどころか微動だにせん。そもそも魔導師は距離を置かねば
「くッ! くそッ! なんなんだ、貴様はッ!」
ダラダラと汗を流し息を荒げながら吠えるが、誰も止めず助けにも入らん。それを見るだけで、こやつの人望がうかがえるというものじゃ。
「近衛兵! なにをしている! こいつを殺……ぐぇッ!」
わしが指を離すと、すっぽ抜けた王太子は杖ごと転がって軽い音を立てる。
王族が自分の敵わない相手に向き合うとき、部下や臣下を動かすのは間違っておらん。判断が遅すぎ、戦力の読みが甘すぎるだけじゃ。
「笑わせてくれますな」
武器を構えて近づいてくる近衛兵たちは、驚くほどに戦意がない。見た目は無手の令嬢でしかないわしを、排除すべきか説得すべきか迷っておるのか。王族を守るためならば手段なぞ選んでどうするんじゃ。
「お飾りの兵に、
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