第2話
翌日、時間通りにやってきた大河を含めた10名は山村講師と笑顔で固く握手を交わしてバスへと乗り込んだ。人数に見合わない大きな観光バスはひとりで2つ座席を取っても余裕がある。ドライバーに軽く会釈をして空いている席を探す。
大河は昨日の帰りに渡されたチェックリストの通りに揃えた荷物を通路側の座席に置いて、まだ来ていない2人が来るかどうか外を眺めながら考えていた。
結局、時間になっても現れない2人を宣言通り待つことなくバスは走り出した。
このとき全員が果たしてこのバスはどこにいくのだろうか。という不安はあったものの、先程それを口にした他のメンバーが山村講師に「私を信用していないのか!全員が集まってからきちんと説明をすると昨日も話しただろう!ここでお前だけ降ろしても私は構わないんだぞ。いますぐに説明することはお前たちの為にならない!なのにお前は私を信じないのか!」と激昂する姿をみて、おれはあいつとは違う山村先生を信じているんだ。とみな自分に言い聞かせて無理矢理不安を飲み込んだ。
バスが走り始めてから山村講師はいかに大河たちに明るい未来が待っているか、また自分がどれだけ理不尽な目に遭いながら今日まで生きてきたかを語り続けた。同業者、養成所に税務署。しかし、山村講師は今起こっていることについては何も話してくれないまま1時間半ほど経過した。
窓からちらりと見えた高速道路の看板には仙台まであと100kmと書かれていた。
東北は小学生の頃に旅行で行った記憶があるくらいでさすがに大河もあとどのくらいバスに乗っていればいいのか気になる。そろそろトイレにも行きたい。そんな空気を察してか山村講師は立ち上がり、
「あと2時間くらいで目的地につく。みんなもそろそろどこに行くのか気になって来ただろう。怖くなってたやつもいるんじゃないか?どこかに連れてかれて殺されるんじゃないかって」
ニヤリと、笑いながらバスの中を山村講師が見回す。カバンに手を入れてバインダー、紙とペン、さらにもう一枚厚紙を取り出して最初に出した紙に重ねるように挟むと
「これから説明をする前にあらためて全員の名簿を作成する。前から順に名前を書いたら次のやつに渡せ。説明の時間が押しているから手早くな。」
山村講師から手渡されたバインダーを受け取り前から順に名前を書いていく。列の最後までくると隣の列に渡し、大河のところには後ろの席から回ってきた。上白紙の上半分は山村講師が挟んだ厚紙で下方向の矢印と[ここから下に名前を書くように]と記載されていたので、みなバスの座席の順に名前を連ねていた。
大河も記入して同じように前の座席に渡す。
ほどなく、全員の記入が終わり山村講師は笑顔でバインダーを受け取る。
「よし、では全員から同意書の署名も取れたことだし。このまま入社式と説明会をはじめるぞ。」
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