第33話
考えれば考える程、判らなくなったサキは
今までの出来事を全て新一朗に説明する。
「う~ん……サキさんのお話を聞きますと
多分、サキさんが見たと言う連絡船は
サキさんが乗って来た連絡船ではなく
私が乗って来た連絡船ではないかと思います」
新一朗は霧のようにモヤモヤとしていた思いが
晴れたような気がする。
「えっ!おじいさんの連絡船!?」
「はい。
それであれば戸田様のお話とつじつまが合いますし
レバーの話も納得できます。
サキさんの乗って来られた連絡船は
まだ洞穴の中に有るのではないでしょうか?」
「あ!そう言う事かもしれないですね!
明日の朝、洞穴に私が乗って来た連絡船が
有るかどうかを見に行ってみます。
連絡船が有れば月へ行って部品を持って帰りますね」
サキは新一朗の言葉に納得する。
「うん。それが良いでしょう。
それと、この地球と言う星はまだ座標が有りませんので
ワープ先を手動で入力しなければいけません。
これが輸送船をワープさせる高知沖の数値です。
本当は海底に置くのが1番良いと思うのですが
それでは地球人に見つかってしまいますので
海底に少し潜らせますね。
輸送船に乗り込んだらこのワープ先を
入力して下さい」
新一朗は高知沖のどの辺に輸送船を沈めるといいのか
計算して決めたワープ先の数値を書いた紙を渡す。
「はい。解りました」
「こちらへ帰って来ても夜は危険ですから
連絡船の中で朝を待ってから帰られてくださいね」
「はい」
「それではもう今夜は遅いので休みましょう」
「はい。そうします。今日は残念でしたけど、
明日頑張ります」
しかし、サキも新一朗も
濱中がサキを追いかけていることを
夢にも思っていない。
その頃、濱中たちは
「う~ん……駅まで走って行っても
電車はもう既に止まっている時間だ……
これほど探しても居ないとなると
施設の南側の住民に協力者がいるとしか考えられない。
明日もう一度、南側の民家を徹底的に捜索しろ!
それと、佐藤と言う人物の所へ帰るかもしれない!
お前たち二人は明日から引き続き張り込みをしろ!」
濱中は部下に激を飛ばしていた。
そして朝早くサキが連絡船を隠した場所へ行って
崖を下り洞穴へ入ると連絡船が有る。
(あ!あった!やはりおじいさんの言った通り
あの連絡船は私の連絡船ではなくて
おじいさんの連絡船だったのね)
安堵したサキは連絡船に乗りこみ
暗くなるのを待ち、月へ行き部品を取り外す。
「一度部品を取り外す練習をしているから簡単だわ」
サキは外しかけの部品と反対側の部品を簡単に取り外すが
壊れている部品は中でボルトが引っ掛かっていて中々抜けない。
(どうしょう……これは難しいわね……)
整備士なら簡単に対応できると思うのだがサキには少し難しい。
しかし苦労して何とか部品をとりはずしたものの
今度は折れたボルトを抜かなくてはいけない。
(これはどうすればいいの?
今度此処へ部品を付けなくてはいけないので、
このボルトは絶対に抜いておかなくてはいけないのよね……)
サキは頭の無いボルトの取り外しに苦戦し時間が通り過ぎていくが
サキは諦めずに何とかボルトを取り外すことに成功した。
(うわぁ~やっと外れたわ!大変だったけれどこれで大丈夫ね)
サキは正常だと思われる部品を持ち
新一朗の別荘の裏山へ向かう。
(裏山から真北へ水平に340メートルだったわね……)
別荘の裏山に連絡船のバリアで裏山に穴をあけ
20メートルほど山の中へ飛び込むと
連絡船を出て入り口をサイクル銃で閉じて
再び連絡船に乗り320メートル程進み、
輸送船のドアーを開け輸送船内へ入ると、
非常用照明を点け新一朗に指示された通り
ワープリングを修理してから
パワーリング及びエンジン回路のテスト回路を切り替え
全てのスイッチがオフになっていることを確認した。
(大丈夫よね……暴走しませんように……)
サキはドキドキしながら
おもむろにメーンスイッチを入れると
船内の照明や計器周りの照明なども点き
全てが待機状態になった。
「やった~!」
サキは思わず声を上げガッツポーズをとる。
そして画面に表示されている異常個所を
全て修理済みと変えて
高知沖のへの目標数値を打ち込み
海底へ輸送船を潜らせた。
そしてワープリングの正常な部品を
2個取り外しボルトも2本持ち
輸送船のリモコンも持って連絡船で
再び別荘の裏山地表近くに戻り
連絡船内で朝を待って新一朗の家に帰った。
「あ!所長!やっと女の子が帰ってきました!」
新一朗宅を見張っていた濱中の部下は嬉しそうに言う。
「よし!見張っていろ。直ぐそちらへ向かう!」
外で、そんな事になって居ると知らないサキは
物事が上手く運び、嬉しそうに挨拶をしている。
「おはようございます。おじいさん」
「おう!おはよう。上手く行ったようですね」
新一朗はサキの笑顔を見て、そう確信した。
「ええ。ボルトが折れていて取り外すのは大変だったけど
無事輸送船は高知沖に設置しました」
「それは大変でしたね。折れたボルトを抜くのは
整備士でも大変です。よく頑張りましたね」
新一朗はサキの頑張りを労った。
「それと、リモコンを持って帰りました。
このままでは良治さん達が文字も読めないし
誤って違うボタンを押してしまうと
エンジンなども掛かってしまうので、改造をお願いいたします」
サキはこのリモコンをおまじないだからと言って良治たちに渡し
津波が来そうになればボタンを押してもらおうと考えていて
これで皆を少しでも救えるかと思うと嬉しそうだ。
「そうですね。
今日中に改造できるから楽しみにしていてください」
濱中の部下が外で
見張っているとは知らない新一朗も安堵していて
これで高知の人たちを少しでも救う事が出来ると
二人で嬉しそうにしている。
「もうお腹ペコペコよ」
何も知らないサキは大役を済ませ安堵している。
「お疲れさまでした。
朝食は出来ていますので一緒に食べましょう」
二人で食事を済ませると
新一朗は輸送船のリモコンを改造し始め
サキが新一朗の傍でリモコンを改造している姿を
笑顔で見ていると突然玄関で声がする。
「佐藤さん!警察です!玄関を開けてください!」
(ん!?警察だって!?……)
二人は何事かと顔を見合わせた。
続く
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