第31話

「そうですね、

連絡船を取りに行くのは夜の方が良いと思います。

それでは、今から山の中に有る私が乗って来た輸送船から

練習の為に、ワープリングの部品を外しておきませんか?」


新一朗はサキが整備士ではないので

取り外しの練習をしておいた方がよいのではないかと思う。


「はい。私もその方が良いと思いますので

こちらで一度取り外す練習をしておきます」


「サキさん、輸送船への入り口は

私の別荘の庭にある裏山です。

裏山は全て私の所有となっています。

そして入り口の目印として山小屋を建てています。


まず別荘に入り裏口から出ると庭があり

庭の奥に裏山が有ります。


裏山に立ててある山小屋の中に入って頂くと

一番奥の、この部屋は裏山の山肌そのままになっています」

新一朗は見取り図を描きながらサキに説明をしている。


「部屋の入り口のドアーと

山側のドアーの中心を結んだ線に沿って

水平に340メートル程サイクル銃で

トンネルを開けながら進みますと輸送船が有ります。


山にトンネルを作って入ったら

誰かが入って来ると言う事も有りますから

面倒でも入り口は直ぐに閉じておいてくださいね。


輸送船の周りは2メートル程空間が有りますので

間違っても輸送船に穴をあけると言う事は無いと思います。


輸送船への入口へは階段を作って

入りやすいようにはしていますが

トンネルを開ける位置によっては

位置がずれている事も有りますので


階段を作り直すことも必要になるかもしれません。

くれぐれも気を付けられて下さい。


輸送船のワープリングの部屋は

何処にあるか分かりますか?」


「はい。分かります」


「ワープリングの不良個所は

70番で間違いがない筈です。

なので70と番号の入っている部品を外せばいいです」


「解りました、では70と番号が入っている部品を外します。

工具は輸送船の中に有るのでしょうか?」


「はい。私たちが使っていた工具が

そのまま置いてありますので使ってください」


「解りました。では行ってきます」

サキはそう言うと新一朗の別荘へ向かうが


 外で見張っていた濱中の部下はサキを見つけ

「所長!女の子が一人で出てきました。

どこかへ向かうようです尾行します」


「よし!気付かれないようにしろよ。

戸田さんに、この事がバレると厄介だ!」


「はい。解りました」


 そうとは知らないサキは

新一朗の別荘へ行き山小屋へ入る。


「所長!別荘へ入りましたが

何をしているのか、こちらからは見えないです」

見張りの男は

サキが裏口から出て行ったことに気付かず見張っている。


「よし。誰かが一緒に出てくるかもしれん。

どうなるのか待て!」

濱中は他に宇宙人が居るのではと読んでいる。


 サキは新一朗に言われた通り

サイクル銃でトンネルを掘り中へ入ると

入り口を閉じ掘り進むと輸送船が有る。


「あ!輸送船があった!」

サキはワープリングの有る部屋へ入ると

70番と書いてある部品を外す。


(これで此処に正常な部品を取り付ければ

この輸送船はワープ出来るわね)


 サキは再び同じようにトンネルを掘り

外へ出て入り口を閉じ、

別荘の入り口の鍵をかけ新一朗の元へ帰る。


「あ!所長!女の子が一人で出てきました!

そのほかには誰も出てきません。来た時と同じです!」


「う~ん……一体、何をしている?……

佐藤と言う人物の事が詳しく判らない。

判るまでガキから目を離すな!」


「はい。了解しました」


「所長!

女の子は再び佐藤と言う人物の家に入りました!」


「よし。目を離さずに見張っていろ!」


「はい。了解しました」


 そして夕方。

そんな事になっているとは夢にも思わないサキは

電車の駅まで歩き始める。


「あ!所長!女の子が一人で家を出て歩き始めました。

尾行します」濱中の部下はサキの後を追う。


「女の子は電車に乗りました。私も乗ります」

サキが電車に乗ると

濱中の部下も電車に乗って連絡を入れた。


 暫くするとサキは濱中の研究所の有る

近くの駅で降りる。


「所長!女の子は“洲の駅”で降りました!」


(なに!洲の駅で降りただと!!!

此処へ来るつもりなのか?

まさに鴨ネギだな……)


「そのまま気付かれないように尾行しろ!

そして、こちらに向かっていることが確実になったら

直ぐに連絡をしろ!」濱中は笑みを浮かべている。


「所長!間違いないです。

女の子は真っすぐそちらへ向かっています」


(やはりな……間違いない!

あいつは宇宙船を取り返す気だ……

入ってきたら不法侵入で捕まえてやる。

これなら戸田さんも文句は言えまい……)


「おい!守衛室に繋げ!」

守衛室に繋がると濱中は守衛に大声で怒鳴る。


「おい!今からガキがそこへやって来る!

門を人が通れるほど開けて

お前は寝ているふりをしていろ!

無条件でガキを通せ!解ったか!」


「はい。門を人が通れるほど開けて

私は寝たふりをしていればいいのですね」


「そうだ!ガキが通り過ぎても

門は閉めるな!解ったか!」


「はい。解りました。合図が有るまで

門を開けたままにして寝たふりをしておきます」

そして守衛は人が通れるほど門を開けると

寝たふりをする。


「所長、女の子は塀の横まで来ました。

あっ!真っすぐに門へ向かわず

右へ曲がりました!追いかけます」


尾行をサキに気付かれないようにと

離れて歩いていた部下は

サキが角を曲がると角まで急いで走る。


「所長!女の子は西側の塀に沿って歩いています」


(ん!?……正門しか入る所はない筈だが?

どこへ行くつもりだ?……)


続く





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る