第24話
「なんだって!」戸田は腰を抜かすほど驚くが
濱中はサキが宇宙人だと確信していて
そう言うと連絡船の外で待機している
吉村と永木の2名を呼ぶ。
「おい!おまえら!こいつを取調室に連れていけ!」
踏み台を上がり連絡船の中に入って来た二人が
サキを連れて行こうとサキに近づくと
戸田はサキをかばう様に二人の間に割って入った。
「まて!濱中!
お前のやっていることがどんな事だか解っているのか!
サキさんは一般市民で、ましてや女の子だ!
知らないと言っているのに監禁するとはどういうことだ!」
「本当に一般市民かどうか、
それをこれから調べると言っているんです!」
濱中はどんな手段を使ってもサキに白状させようとしている。
「濱中!お前は間違っている!
国民の幸せの為に俺たちは汗を流して来たのではないのか?
自分の欲望の為に国民を悲しませてどうする。
今お前がしていることは己の欲望の為に
戦争をしている者と何も変わらないぞ!」
「何を綺麗ごと言っているんですか!
昔、一緒に日本の平和の為に、この宇宙船を調べて
何とかモノにしょうと言っていたのは戸田さん!
貴方でしょうが!
それなのにどうして僕たちのする事の邪魔をするんですか!」
そう言われて戸田は返す言葉もないが
「もしも、もしもだぞ!
サキさんが本当に、この宇宙船の持ち主で宇宙人だったとして
この今の状態をサキさんの親が見てどう思う!
こんな宇宙船を作れるほどの高度な文明を持った宇宙人から見たら
俺たちは江戸時代の刀しか持っていない侍にしか見えない筈だ。
見た事も無い様な兵器で、この辺り一帯をあっと言う間に焼き払い
自分の娘に危害を加えている人間などをアッと言う間に消し去って
自分の娘を助けると思うぞ!
私がサキさんの親だったら当然、直ぐにサキさんを助ける!
お前がこの宇宙船を何とか自分達の物にしたいと言う
気持ちは私にも良く解かる。
しかしサキさんが知らないと言う以上
自分達で何とかするしかないだろうが!」
戸田は悲しそうに言う。
「……そうですね………戸田さん……
確かに、貴方の言う通りだ。
この子を監禁拷問するのは間違っていると思う。
もう帰っていいです。サキさん………」
濱中は暫く沈黙するが改心したように言う。
「濱中!お前なら解ってくれると思った………
さあサキさん帰りましょう」
戸田はサキの肩を抱き優しく言うとサキを連れて
宇宙船から出て建物の出入口へと向かう。
しかし戸田がサキを連れて建物から去って行くと
入り口に居た係員の耳元で囁く。
「おい!今すぐ盗聴器を持って来い!」
「はい。解りました!」
係員が大急ぎで盗聴器を持って来て濱中に渡すと
濱中はサキたちを追いかけ
車へ乗り込もうとしているサキを呼び止め
「サキさん。今日は本当に失礼致しました。
僕たちを許してください」
そう言いながらサキの持つバッグに
そっと盗聴器を忍び込ませた。
「いえ、何もお役に立てなくて済みませんでした。
では失礼します」
「戸田さん!済みませんでした」
「いいんだよ濱中!それじゃ~な」
何も知らないサキと戸田は濱中に挨拶をして
車に乗り研究所を後にする。
車を走らせながら戸田は
「サキさん、私のせいで
本当に嫌な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
と、心から悲しそうに言う。
「いえ、戸田さんのせいではないです。
とても怖かったですけれど
戸田さんが助けてくれたので嬉しかったです。
ありがとうございました」
サキは震えつつも消え入るような声で
深々と頭を下げた。
「そう言って頂けると少し気が楽になりました。
濱中が、あの宇宙船の置いてある場所に
連れてこさせようとしていることは
あの日に解りました。
その時に断ればよかったと今反省をしています。
本当に申し訳ありません。
濱中は昔、私の部下だったやつなのですが
周りの国が侵略や戦争を考えている国ばかりなので
濱中は日本を守ろうとしているだけなんです。
そしてサキさんが宇宙人だと思い込み
宇宙船の事を色々と教えて貰おうとしているのだけなのです。
どうか濱中を許してあげてください」
「はい。もう気にしていませんから……」
サキは気にしていないと言うのは嘘なのだが
早く忘れようと思う。
「サキさんには本当に申し訳の無い事を致しました。
心からお詫びを申し上げます」
戸田は濱中の行動に薄々気付いて居ながら
対策を取らなかった自分を情けなく思う。
「はい………」
サキは足元を見つめ微動だにせず
弱弱しく返事をする。
そして、宇宙人だと悟られなくて良かった
と言う気持ちと嘘をつき続けて
この星に住むことになると言う事に悩んでいる。
「サキさん、宇宙船の事は国家機密情報ですから
絶対に口外されないようにされて下さいね」
「はい……」
サキは戸田の言葉も殆ど耳に入らず
生返事をしている。
「それと、うちの会社の者は全員
私が昔、宇宙船に関係している
仕事をしていたと言う事を知りませんし
宇宙船の事など何も知りませんので
そこの所もよろしくお願いいたします」
「はい……」
「そうだ!サキさん、明日、会社の近くに
新しいレストランがオープンするんです。
会社の皆も開店したお店がどんなものなのか
お祝いを兼ねて食事に行きますので
お詫びにサキさんもお誘いします。
結花さんのお店は、お昼は忙しいとは思いますので
早めにお昼休みを頂いて一緒に行きましょう!」
戸田は落ち込んでいるサキを慰めるように
明るく言う。
「ありがとうございます。忙しいのは日曜日なので
多分お店を出ることは出来ると思います。それは楽しみです」
サキは落ち込んでいる自分を慰めようとしている
戸田の気持ちが良く解り、一応明るく言う。
「あ!会社の者に
明日のお昼ご飯にサキさんも同席すると言いましょう。
皆、喜ぶと思いますから!」
戸田はサキを送る途中、会社に寄ってみる事にする。
しかし会社に着き二人が会社内へ入ると
受付の横にある赤い警告ランプが点灯した。
(ん!盗聴盗撮されている!)
戸田がそう思うと同時に受付の女性が指を口に当てて
その場から動かず声を出さないようにして
二人共離れてくださいと言う様に仕草で合図している。
戸田はサキに此処から動かず
喋らないようにと合図をすると
戸田は直ぐにサキから少し離れた。
直ぐに受付の女性が探査機を持って来て二人を検査すると
サキのバッグの中から盗聴器を見つけるが
戸田は直ぐに濱中の仕業だと気付く。
「濱中!お前だな!
いい後輩だと思っていたが失望した。これまでだな」
そう言うと戸田は盗聴器を処分してしまう様にと
受付の女性に渡す。
「サキさん、濱中はサキさんの事を諦めてはいなくて
車の中の会話を全て聞いていたようです」
戸田は苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
と、その時、戸田の携帯が鳴った。
続く
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