第22話



「おう!忙しそうだな」


「あ!濱中さん!はい。

今、新しいデーターを手に入れましたので

整理している所です」


そして濱中は、

狭い峡谷でジェット機を追いかけ

簡単にクリアしている画面に驚く。


「おっ!

これは戸田さんのフライト画面だな!

流石!上手いもんだ!」


「いえ!これはシリウスを操縦した

女の子のデーターです!」


「なに!女の子だと!

しかもシリウスでこの狭い峡谷を

これほどのスピードで飛べるなんて!

地形がすべて頭の中に入っているのか?」


濱中は口をポカンと開けたまま

目が点になっている。


「いえ!旅途中の女の子なので

此処を飛ぶのは初めてですから

それは無いと思います」

高嶋は苦笑いしている。


「なに!初めて乗ってこれか!?

女の子だと言ったな!

一体どんな女の子だ!顔を出せ!」


「いいですよ」

高嶋はサキの操縦している場面を

画面に出した。


「おっ!若いな!

二十歳には成っていないか……」


「そうですね。

女性に年齢を聞く訳には行かないですので

聞いてはいませんが、まだお若いですよね」


(う~ん……それにしても

初めてこの峡谷を飛んでこれか!

これほど操縦が上手いとは

末恐ろしいな……ん!)


その時、濱中は

サキの操縦桿を持つ親指の動きが目に入る。


「あ!もう一度見てみたい。

今の所をもう一度映せ!」


「はい!いいですよ」

高嶋は再度同じ動画を画面へ出すと

濱中は食い入るようにサキを見つめている。


「濱中さん、どうされました?」

画面を見つめ微動だにしない濱中に

高嶋は首をかしげた。


「いや、可愛いなぁ~と思って

見とれてしまった。

そして緊張した顔が凛として何とも言えん!

もう一度映せ!」


濱中はサキの親指の動きが

気になるとは言わずに誤魔化す。


「はい。いいですよ。

サキさんと言われるのですが

笑顔も素敵ですが

この凛とした顔も素敵ですよね。


僕たちも皆、

サキさんは操縦も上手だし可愛いと言って

もう皆のアイドルですよ!」

高嶋は笑顔で言う。


(間違いない!

操縦桿にある筈の無いボタンを

押す様に親指を持って行っている……)

それを確信した濱中は


「この子は今何処にいるか分かるのか?」


「さあ……社長なら分かると思いますけれど

僕には分からないです」


「戸田さんは留守なのか?」


「はい。でも、明日は出て来ます」


「では、明日、戸田さんに僕が

あの女の子に

会いたいと言っていたと伝えてくれ」


「解りました。そう伝えます」


「頼んだぞ!」

(ひょっとしたら……)濱中は帰りながら

今抱えて居る問題を解決できるかもしれない

と、考えている。


 そして次の日

「社長!昨日、

濱中さんがおいでになられました。


サキさんの動画を見て

サキさんを凄く気に入られたようで

サキさんに会いたいそうです。


おまけにサキさんが操縦している場面を

勝手に動画に撮っていましたが

社長のお知り合いの方なので

断る事も出来ませんでした!」

高嶋は嫌そうに言う。


「えっ!

濱中がサキさんを気に入って会いたいだって!

濱中もまだ若いなぁ~……」戸田は笑っている。


「でも、社長の前ですが

僕はあまり濱中さんの事は良く思わなくて

サキさんを紹介するのは嫌です……」


高嶋は濱中が、

とても偉そうなのが気に入らなくて

嫌そうに言う。


「アハハ!そうだな……

濱中は口が悪いからな。

それと、あいつは人に合わせると言う事は

出来ないタイプで自分の思うようにしないと

気が済まない奴だもんな」戸田は笑うが


「私も濱中さんにはいい印象は無いです!

だから未だに誰にも相手にされず

独身なんでしょ!

私もサキさんに紹介するのは嫌です!


どうせ、

変な事を考えているのだと思います……」

内山が嫌そうに言葉をはさむが


「う~ん……

結婚するかどうかは本人の自由だし、

濱中がサキさんに変な事をするとは

思えないが……」


「社長さん!そんな事分からないですよ!

一応、男ですから!」

内山の言葉に横で聞いていた3人も

同感だと嫌そうな顔をしている。


「しかし、誰かサキさんにいい人が居て

紹介しようとしているのかも

しれないしなぁ~……」


「それなら良いのですが……」

内山は濱中を信用していないし

他の3人も頷いている。


「社長さん、サキさんに連絡を取ってみて

サキさんならどうされるのかを

聞いてみられては如何でしょうか?」

上野はそう提言する


「うん。それが1番いいな。

旅の途中だと言われていたが


まだ近くに居ると思うので

直ぐに連絡を取ってみよう」

戸田は上野の言葉にそう言うと皆頷いている。


自分もサキに

連絡を取りたいと思っていた戸田は

直ぐに山田に連絡を入れると

サキと一緒に居たと言う良治にたどり着く。


「もしもし。良治さんでしょうか?」


「はい。そうですが?」


「サキさんの知り合いの戸田と申します。

サキさんは御一緒でしょうか?」


「いえ。サキさんは此処には居ませんけれど」


「今、何処にいらっしゃるか

御判りになりますか」


「はい。私の友人の所に居ます。

何か伝えましょうか?」


「あ!まだこちらにおいでですか!

宜しければ、私の所へ連絡を頂けるように

伝えて頂くと嬉しいのですが」


「はい解りました。今出ている

この番号へ掛ければいいのですよね」


「はいそうです。よろしくお願いいたします」


 そして良治は結花の喫茶店へ電話を掛け

サキと代わってもらう。


「サキさん、良治さんから電話です」


「あ!良治さんですか!はい」

そして良治から話を聞いたサキは

戸田に電話を入れ

話の内容を聞いたサキは


「結花さん、私の知り合いの戸田さんが

私に会いたいと言われる人がいるので

此処の住所と都合を教えて欲しいとの事ですが

電話を代わって頂けますか?」


そう言ってサキは結花と電話を代わり

結花が戸田と話すが


「サキさん、今日でもいいですか?」


「はい。

お店のお客様として来て頂けるとの事なので

私はいつでも構いません」

サキは即座に返事をする。


「それでは、

何時でもそちらの都合のいい時間にどうぞ。

と伝えますね」


「はい」


 そして2時間ほどすると、

戸田は濱中を連れて結花の喫茶店へやってきた。


「あ!戸田さん!いらっしゃいませ!」


     続く



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