第20話
「仲の良さそうなお二人を見ているとこちらまで笑顔になります。
余りお役に立てないと思いますがよろしくお願いいたします」
サキは二人の笑顔がとても気持ち良く感じて
店が落ち着くまで暫くの間、結花の店を手伝おうと思う。
「あ!それは助かります。それでは今日からでもいいかしら?
寝泊まりは、この裏に有る私の家に無料で良いですので
泊ってください」
「えっ!無料で良いのですか!」サキは恐縮するが
「ええ、一人では寂しいので
サキさんが一緒に住んでくれると嬉しいです」
結花は本当に泊ってくれると嬉しいので笑顔で言う。
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願い致します」
サキも結花と一緒に過ごせることを楽しみにしている。
「あ!冷めないうちにどうぞお召し上がりください」
「はい。それでは早速頂きます。
あ!結花さん、このカレーとても美味しいです」
サキはお世辞ではなく本当美味しいと思う。
「あら!ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです」
「特製カレーもだけど、結花さん目当てに来る人も多いようだよ」
良治は結花にも聞こえる様に言う。
「あら!このカレーは本当美味しいですが
結花さんはとても可愛くて素敵なお方ですもの、当然でしょうね」
結花はサキの結花が、とても可愛くて素敵だと言う言葉に
恥ずかしそうにしながらサキを見ている。
そしてサキは食事を終えると窓の外の遥か遠くにある
構造物が気になり良治に問う。
「良治さん、窓から見える
あの遠くにある見晴らし台の様な物は何ですか?」
「ああ、あれは津波が来た時に逃げるための津波避難タワーです」
「えっ!津波が来る?」
(あ!そう言えばガーランドソーを作る材料も
作る技術もこの地球には無かったわね……)
サキはジブ星では激しい地震や噴火などを起こさせないように制御する
ガーランドソーが約5,150万ヶ所、地中に設置されているが
この地球には設置されていない事を知る。
(えっ!津波が来ることを知らない!?
あ!サキさんは高知の人ではないから
津波が来ることや津波避難タワー事を知らないのか……)
「南海トラフ巨大地震が来たら、あの辺りは津波でやられます。
その時にあの津波避難タワーに避難するんです」
「あ!そうなんですね……」
サキは津波が眼下遠くに有るあの町を襲っている場面を想像して
悲しい顔をしている。
「ねえ。サキさん、俺がこんなこと言っても笑わないで下さいよ」
「えっ!笑わないわ。何でしょう」
そう言いつつもサキは既に笑い始めている。
「俺ね、宇宙人が来てくれて地震や火山の噴火なんかも
起こらないようにしてくれたらいいなぁ~なんて思っているんです」
良治は津波避難タワーを見つめながら真顔で言う。
「そうね……」サキは窓の外を見つめたまま暫く考え込んでいる。
(それはガーランドソーが有れば出来ない話ではないのだけれど……)
「あら!良治さんが夢みたいなお話をするから
サキさんが困ってらっしゃるのではないですか?」
話を聞いていた結花は微笑みながらもサキを心配している
「あっ!サキさんすみません……夢みたいなお話をして」
良治は頭を掻きながら困ったように言うが
「でも、本当に宇宙人が来てくれて
地震から此処を守ってくれたらいいなぁ~って思うんです」
良治は窓の外を眺めながら真顔で言う。
「それは私だってそうなって欲しいとは思うけど
でも、本当に宇宙人が来たら
恐ろしい気がしますよねぇ~サキさん……」
結花は宇宙人に助けて欲しいとは思うが
恐ろしい気持ちの方が強い。
「えっ!その宇宙人が来て皆さんを助けてくれるのに
どうして恐ろしいと思うのですか?」
サキは結花の言葉が信じられないでいる。
「えっ!サキさんは、
もしも大きな宇宙船が目の前に来ても恐ろしくは無いのですか!
地震や火山の噴火を止める事が出来るようなその力を
自分達に向けられるとどうなるのだろうと思われないのですか?」
結花はサキの言葉に驚いている。
「えっ!助けて頂いた宇宙人に、そんな事を考えるでしょうか?」
「サキさんには想像できないかもしれないですが
想像も出来ないような力を持った宇宙人を恐ろしいと思う人も居るでしょうね」
良治は真顔で話す。
「でも宇宙人なんて居ませんし
そうなって欲しいと言う夢物語なのですが……」
良治は窓の外を眺めながら独り言の様に言う。
「一番いいのは私たちを助けてくれて
直ぐに宇宙へ帰ってくれるのが一番いいのですけれど……
それって本当に虫のいい話ですよね……」
結花はウインクをしながら悪戯っぽく言う。
(そうなのね……もしも、私がこの地球の人たちを助けると
私は此処に居ることが出来なくなるのね……)
良治と結花の恐怖しか感じないと言う言葉にサキは言葉もない。
「サキさん!そんなに悲しそうな顔をしないでください。
津波が来てもなるべく沢山の人たちが生き延びる事が出来るように
津波避難タワーを作っています。大丈夫ですから」
良治は本当は宇宙人など居ないと思っているので
サキが宇宙人の事ではなくて
津波で亡くなってしまうかもしれない人たちの事を考えて
悲しんでいてくれているんだ。
サキさんは心優しい人なんだなぁ~……
と、サキの心内を知らない良治はそう思っている。
「そうよ、私たちは必ず生き残って此処を守って行くから」
結花はサキが旅の途中なので此処を去って行くサキは
残された人を心配していて悲しそうにしているのだと思い
心優しいサキの肩に優しく手を置き慰めた。
(でも、この人たちを助けたい。
でも、助けると私は此処に居られないのね……
私は自分の星へ帰ることは出来ないから、
この地球で暮らさなければならないのに私はどうすればいいの……)
サキは肩に結花の手のぬくもりを感じながら
これからどうするべきなのかを考えている。
しかしその頃、戸田の会社では
サキの操縦動画を分析していた高嶋が
サキの動きに妙な部分を見つけていた。
続く
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