第19話

「サキさん、俺もこれから仕事に行かなくてはならないのですが

もしよければ俺の経営しているガソリンスタンドを

見に来ませんか?」


一平は、あまりサキの相手は出来ないが

サキに自分の仕事場を見てもらいたくてサキを誘う。


「はい。私も一平さんのガソリンスタンドを見てみたいです」

サキの言葉に安心した洋子はサキを一平に託し仕事に向かった。


 そしてサキは一平のガソリンスタンドへ行き

暇つぶしに一平の手伝いをしている。


「いらっしゃいませ」

サキはスタンドの仕事が楽しくて

笑顔で車に燃料を入れていると

1台の車が来て中から男性の声がした。


「あ!サキさん!こんな所で逢うなんて!」


「あ!良治さん!」


「サキさん、アルバイトが終わったら

会って頂きたい人が居るのですが、アルバイトは何時までですか?」

良治はサキがアルバイト先を見つけたんだと思い嬉しそうに聞く。


「一平さん、祥子さんのお友達の弟さんで、良治さんです」


「あ!サキさんの友達の谷村良治と言います。

よろしくお願いいたします」

良治は笑顔で名刺を渡し自己紹介をすると


「あ!俺は神田一平と言います。こちらこそです」

そう言いながら一平も名刺を渡す。


「サキさんに会って頂きたい人がいるんですが、

アルバイトが終わったらサキさんに来て頂いてもいいでしょうか」


「サキさんはアルバイトではなくて

見学で来てもらっているだけなので

こちらの事は気になされずにいつでも大丈夫ですよ」


「では、今からでもいいですか?一平さん」


「はい。サキさんさえよければいつでもどうぞ」


「あ!助かります。ではサキさん、

今から俺と一緒に来て頂けますか!」


「すみません一平さん。

今日はありがとうございました。では失礼しますね」


「あ!サキさんお待ちください」

そう言って一平は去るが直ぐに戻って来た。


「サキさん、これを受け取って頂けますか」

そう言うと3,000円をサキに渡す。


「これは?……」不思議そうにするサキに


「少ないですが2時間分のアルバイト料です」

一平はウインクをしながら言う。


「それは本当にありがとうございます」

サキは山田の言葉を思い出し即座に笑顔で頭を下げた。


そして良治の車に乗るとサキは

「私に会わせたい方って誰なのでしょうか?……」


「えへへ……それは着いてからのお楽しみです……」


 良治は笑顔のまま車を走らせ5分ほど走ると

素敵な喫茶店に着き良治はサキを連れて喫茶店へ入るが

直ぐに若い女性が対応してくれた。


「あら!良治さん!いらっしゃいませ」


「結花さんこんにちは~

俺たちのキューピットを連れて来た!」


「えっ!この人が良治さんが話していた

撃墜王のサキさんなの!」


「初めまして。サキと申します」

サキはそう言いつつも赤くなっている。


「初めまして、私は剣崎 結花(22)と申します。

どうぞそちらへお掛け下さい」

そう言って結花は二人を見晴らしのいい窓際のテーブルへと誘う。


「サキさん、実はね、サキさんを送って行った帰り道に

車が故障して道端で困っていた結花さんを見たんだ。


修理屋が来るまで一緒に居てあげたんだけど

車を見た修理屋さんが車が直るのに

1週間ほどかかると言われたので

俺が結花さんを家まで送って行ったんだ」


「あら!そんなことが有ったのね」


「私、助けて頂いて嬉しくて

私の家と言うか、このお店に入って頂いたの」

結花が横で嬉しそうに言う。


「それが縁で付き合う事になったんだ。

ほんと!サキさんのおかげだよ」

良治は本当に嬉しそうだ。


「あら!それは私が、ではなくて

良治さんが優しい人だったからではないですか!」

サキは悪戯っぽく言うが


「いやいや、サキさんとの出会いが無ければ

こんな運命的な出会いも無かったと思う。

サキさんは俺たちのキューピットなんだよ」

良治はサキを自分達のキューピットだと思いたい。


「サキさん、私もサキさんは私たちの

可愛くて素敵なキューピットだと思います。

いえ、そう思わせてください」

結花は微笑みながら手を合わせ懇願している。


「ありがとうございます。私もそう言って頂けると嬉しいです」

サキは二人が喜んでくれるのなら何にでもなろうと思う。


「お昼を用意いたしますので何か食べて行ってください」

結花はメニューをサキに渡す。


「はい。お腹もすいて来ましたので何かお願いします」

そう言いながらメニューを見ている。


「あ!俺は結花さんの特製カレーを貰おうかな!」

良治が言うと


「あ!私も良治さんと同じものをお願いします」


「はい。かしこまりました。少しお待ちくださいね」

結花は直ぐに厨房へ入って行く。


「良治さん、とてもいい雰囲気のお店ね」

サキは良治に額を寄せ、そっと言う。


「うん、素敵なお店だろ。

このお店は結花さんのおばあさんが経営していたお店なんだけど

おばあさんが結花さんのお母様に譲って

今度は結花さんが引き継がれたそうだよ」


「そうだったのね」


「そして今は結花さん一人で切り盛りしているんだよ」

と、そこへ結花が特製カレーを持って来た。


「一人で大変なのですが、楽しくやらせて頂いています」

笑顔で言う結花にサキも安堵している。


「何かできる事が有ったら俺が手伝おうと思っているんだ」

良治は結花の事が気になって仕方がない。


「あ!サキさん!今、一人旅の途中なんですよね……

もしよければ私の所で暫くアルバイトでもどうですか?」

結花は暫く店が落ち着くまででも手伝って欲しいと思う。


      続く


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