第18話

「私は明日、一平さんと言う人に

会う事になっていますので

一平さんの所へ行こうと思っています」


「あ!そうなのですね。それでは、

これから私と山田さんの3人で

一緒にお昼をどうですか?

山田さん、いいでしょ」


「うん。サキさん、

3人でお昼ご飯を食べに行きましょうよ

データー収集に協力したんですから

当然ですよ!」

山田は悪戯っぽく言う。


「はい。ありがとうございます」

サキの笑顔に

戸田と山田は嬉しそうにしている。


 そして戸田の車で料亭へ行き

食事を済ませると山田は


「サキさん、お腹もいっぱいになりましたし

この辺で失礼しましょうか」


「はい」


「サキさん、

またいつでも好きな時に遊びに来てください」

戸田はそう言って名刺と封筒をサキに渡す。


「これは?」

サキが封筒を開くと10万円入っている。


「あっ!」サキが驚くと同時に


「それは

私からサキさんへの感謝の気持ちです。

受け取って下さい」戸田は笑顔で言う。


「サキさん、貰ってあげてください。


渡した側から見ると

素直に喜んでもらうと言う事は

とても嬉しいものですから」

山田は笑顔で優しく言う。


「はい。

手持ちのお金が少なくて心配でした。

とても嬉しいです!

本当にありがとうございます」


サキは大きく瞳を開き

素敵な笑顔を見せて頭を下げた。


「そうそう、サキさんの、

その素敵な笑顔が見たいんだよね」

山田が笑顔で言うと


「うん。本当に素敵な笑顔だね。

こちらまで癒される」

戸田も負けてはいない。


 戸田は二人を会社まで送り届けてくれて

山田はサキと自宅へと帰路へ着く。


「サキさん、

今夜も我が家へ泊ってくださいね。

明日、私がその一平さんと言う人の所へ

連れて行きますから」


「あ!一平さんの居場所は、私ではなく

洋子さんでないと分からないんです。


この紙に洋子さんの家の

住所が書いてありますので

お願い出来ますか」サキは遠慮しながら言う。


「あ!解りました。

その住所にサキさんを

連れて行けばいいのですね」


「はい。済みませんが

よろしくお願いいたします」


「遠慮されなくていいですよ。

戸田さんが、

あんなに嬉しそうにする顔は見たことが無い。


戸田さん、

本当に嬉しかったんだろうなぁ~……」


「戸田さんに喜んでいただき

私も本当に嬉しいです」

サキは自分の行動で人が喜んでくれたことに

安堵し嬉しくなっている。


「サキさん、

紙に電話番号も書いてありますので

洋子さんにサキさんを夕方までに

洋子さんの家に連れて行く事と言う事と、


今日のお礼に夕食を一緒に食べませんか。

と、連絡を入れてみますね」

そう言うと山田は洋子に電話を入れ

夕食へ誘う。


そして洋子は了解したらしく


「サキさん、今夜、洋子さんと祥子さんと

4人で夕食に行く事になりました。

楽しみにされていてくださいね」

嬉しそうに言う山田に


「素敵な心遣いありがとうございます」


「いえいえ、本当は私がサキさんや洋子さん、

そして祥子さんと一緒に

お話がしたいと思っているだけなのですから」

山田はサキに気遣いさせないように配慮している。


「あ!それは本当にありがとうございます」

サキもそう言ってくれると本当に嬉しい。


 そしてサキたちは洋子の家に着き

祥子が帰って来ると

山田は近くの料亭へと3人を連れて行く。


 料亭ではサキの活躍ぶりに花が咲き

あっと言う間に1日が終わるが

洋子の申し出により山田と別れたサキは

洋子の家で再び話が弾み夜遅くまで話し込む。


 そしてその頃、

戸田は妻の美鈴とベッドで話をしている。


「今日、山田さんの紹介でサキさんと言う

一人で旅途中の若い女の子と会って、

シリウスに乗って貰ったのだけど


今までに見た事の無い、

とても素晴らしく操縦の上手い女の子だった。


しかし、実機並みのシリウスでは

少し大変かもしれないと

敵機をシャドー設定としたのだけど


シャドー設定などせずに

サキさんの操縦の腕前を見ればよかった……


山田さん所の本田君と鈴木君の二人掛でも

敵わなかったらしいが

おそらく現時点でサキさんに勝てる者は

誰も居ないと思う」


「えっ!サキさんと言う方は

本田さんと鈴木さんも勝てない程の

腕前なのですか!」


「ああ、サキさんの腕前には

うちの会社の者も信じられないと

唖然としていた」


「そのような方がいらっしゃるのですね……」


「若い女性で、しかも初めてのシリウスに

そんなに長く操縦はさせられないと

思っていたのだけど


サキさんには

もう一度シリウスにチャレンジして頂いて


今度は離陸や着陸、計器飛行

(外が真っ暗で何も見えない夜間を

計器のみで飛行する)

や、ドッグファイト(空中戦)


あ!それと空間失調症に陥れば、

サキさんはどう対応するのか

それらのデーターも取りたいと思う。


いくら操縦が上手いと言っても

年老いていては教える期間が短すぎる……


その点、若いサキさんはこの先何千人、

いや!何万人と教育をしてくれて

若い優秀なパイロットを

育ててくれると思う……


サキさんさえよければ、

うちに来てもらって次期シリウスの開発や


若い世代のパイロットの教育を

担当してもらうと言うのは

どうだろうかと本気で考えている。


今度、

サキさんに我が社への就職を

勧めてみようかと思うのだけど

どうだろう?……」


「それは素敵な事だと思いますけれど

サキさんは、

どう思われていらっしゃるのでしょうね?」


「う~ん……

サキさんは旅の途中だと言われていたから

まだ何も言っていないのだけれど……」


「これは私の古い考えなのですが……

私は、女は好きな男性と結婚して

子供を産み育てるのが

1番幸せだと思うのですけれど、


今は考え方が違いますものね……」

美鈴は独り言のように呟く。


「そうだね……

何が1番幸せなのかと言う事は

人それぞれだから

型に入れる訳には行かないよね……」


「ほんとうに、そうですよね……」


「明日は一平と言う人の所へ

行くと言っていたから


今度サキさんに会って

それとなく今後の身の振り方などに付いて

話をしてみよう……」


「そうですね。まずはサキさんが

何をどうしたいか。ですよね……」

二人はサキの幸せを願い眠りに就いた。


 そして木曜日の朝

サキは洋子に一平の家へ連れて行ってもらい

サキの載っている広報を貰うが


2ページもサキの場面が取られていて

洋子たちと暫く話が盛り上がる。


「サキさん、

私はもう仕事に行かなくては

いけないのだけど

この後どうされます?」


洋子は心配そうに聞く。


    続く

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