第17話

「それと、此処の部分をアップしてみましたので見てください。

これはレベル10の乱気流を入れた瞬間の部分です。

サキさんはレベル10の乱気流に声を上げる程驚かれているのですが

外をしっかりとよく見て対応されています。


乱気流に対応されている凛としたサキさんには

素敵な女性を感じさせますよね……

あ!すみません、話が逸れました。」


「いやいや、私も、この凛としたサキさんには

本当に、大人の魅力を感じる」


「すみません……話を元に戻します。

そして、レベル10の乱気流に対する対応は先ほどご覧になられたように

操縦桿の操作ラインは我々の理想とする操作とは全く異なります。


普通、レベル10の乱気流に見舞われた時には

何をどう操作をしても立て直す事など出来ず

むしろ姿勢を悪化させるだけですよね……」


「うん。そうだね……」


「しかしサキさんの場合は違いました。

高度や乱気流の状況を瞬時に判断されて

AIとは違う操作をされましたよね。


そしてその判断と、この操作で確実に落下速度が落ちています。

これは、理屈ではなく身体が覚えているのではないかと思います」


「うん……確かにサキさんの

この操作で機体の落下速度が落ちたね……」


「はい」


「我々の理想とする操作のAIは引き起こしに間に合わなかったが

サキさんの様に適切に対応する事が出来れば生還できたと言う事は

機体が落ち着くまで待つ。と言う

我々の今までの常識は間違っていたと言う事なのか!?……」


「おそらくそう言う事だと思います。

しかし、レベル10の乱気流は非現実的で

上手く対処が出来るかどうかを見るためだけの物ですし

しかも、あの高度では誰が何をやっても墜落は免れなかったと思います。


サキさんの様に操縦するには理屈ではなくて

機体の動きに即座に身体が反応しなくては

無理だと思いますけれど……」


「うーん……」


「それとこちらをご覧ください。

これは敵機を追いかけていた時の

サキさんの操縦データーログです。


乗り始めて少しの間、操縦桿を動かす量が少ないですが

直ぐに修正されていますね」


「と言う事は、どういう事なのかな?意味が良く解らん?……」

データーログの示す動きの意味を専門員の高嶋が理解するほど

戸田は理解することは出来ない。


「社長、このデーターログは

長年戦闘機に乗っていた戦闘機乗りが久しぶりにプロペラ機に乗って

戦闘機よりも機体の反応が遅いと感じている時に

このようなデーターログになります。


つまりサキさんは戦闘機乗り同様に

この機体の反応が遅いと感じていると言う事です」


「なんだって!機体の反応が遅いと感じている?……」


「はい。では、更にデーターログを拡大して

詳しく説明させていただきます。


先ほどの、ここの部分ですが、シリウスに乗って直ぐは、

AIよりも操縦桿を動かす量が少ないです。


これは、操縦桿を動かす量を体が覚えていて

普段通り操作しているのですが、

機体が付いて来ないので動かす量を修正している。と言う事です。


しかし、直ぐに我々の求めているラインよりも早く、

しかも的確に動きを制御されていますね。


そして、このライン部分でレベル2の乱気流により機体が動き始めます。

この動きを制御するために私たちが理想とする制御ラインがこれですが

しかし、その修正を求めたこの制御ライン時には

サキさんはもう既に操縦桿を動かされています。


と言う事は我々が人間の反応時間を考慮して設定している時間は

長すぎると言う事です。


余談ですが、

ある剣の達人が、飛んでいるハエを剣で切る事が出来た。

と聞きましたが、その剣の達人の様にサキさんも

反応時間は人並み以上の物を持っておられるようです。


と言う事は、サキさんは我々が考えている程

反応時間は必要としていないと言う事です。


機体の動きを示すこのラインを見て頂いても解りますが

我々が理想としている修正ラインよりも

サキさんが修正するラインの方が全てにおいて機体の収まりがいいです。


と言う事は、我々が理想としている操作方法よりも

サキさんの方が正確な判断と正確な操作をしていると言う事です。


長年戦闘機に乗っているベテランでもこれほど正確に

我々のラインをコピー出来る事などあり得ないと言うのに

初めて動かしたシリウスをあれほど正確に制御出来て

なお且つ、機体の反応が遅いと感じているなんて!……


天才と言うかモンスターですよ!サキさんは!……」


ログ解析の高嶋は興奮しながら信じられないと言う顔をしている。

そして、その高嶋の言葉に他の3人も言葉もなく頷いている。


「何だって!これはゲーム機ではなくて、殆ど実機のシリウスだ!

それを我々が理想として設定しているラインを変えて制御をしていて

おまけにその反応がプロペラ機並みに遅いと感じているだって!!!


広い空間ならともかく瞬きも出来ないほど狭い谷や

山と山の間を飛んでいるんだ!……

一体、サキさんは普段何に乗ってゲームをしている!?……


これでは普通の者はサキさんに勝てるわけがない……」

戸田の言葉に4人は言葉もない。


「だが、これで我々が理想だと思っていたデーターは

まだまだ改良の余地があると言う事が判った。

サキさんのデーターをさらに詳しく解析して置いてくれ」

戸田はこれで一歩理想に近づけるとサキに感謝している。


「はい。解りました」高嶋達4人は嬉しそうに声を揃えた。


 そして戸田はサキたちの待つ休息室へ行くと

「サキさん、本日は本当に素晴らしい操縦を見せて頂き

ありがとうございました。


お陰様で私達の理想としていた操縦データーには

まだまだ改良の余地がある事が判りました。

本当にありがとうございます」戸田はサキに深々と頭を下げた。


「いえ!頭を上げられてください。

私はとても楽しくてワクワクさせて頂きました。


こちらこそお礼を言わせて頂きます。

楽しい時間をありがとうございました」

サキは役に立てて本当に嬉しそうだ。


「戸田さん!新しいデーターが取れたと言う事で良かったですね」


「ああ、本当に良かった。山田さん本当にありがとうございます」


「いえいえ……それはサキさんにお礼を言われた方が……」

山田は恐縮している。


「ところでサキさんは旅の途中との事でしたが

これからどうされるのですか?」


       続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る