第14話
「はい。では、サキさん、行きましょうか」
戸田は山田に返事をして優しくサキを促すと
サキと山田は戸田の後に付いて行く。
戸田に案内された部屋は
大型画面が設置され
その傍には4台の小さな画面が並べられた
机が有った。
そして壁一面のガラス張りの向こう側には
地下も掘られ15メートル四方程ある
大きな空間が有って
その空間の中に四方八方から
ワイヤーで支えられている
グルグルと自由に回転できる
地球ゴマのような球体が有る。
「サキさん、どうぞ中へお入りください」
サキは戸田と二人で連絡橋を渡り中へ入ると
計器類は少し違うが操縦桿などは
山田の会社に有った
フライトシミュレーターとほぼ同じだった。
「このフライトシミュレーターは
今までのフライトシミュレーターとは違い
上下左右に動きますし回転もしますので
ベルトをしますね」
戸田はサキに
6点シートベルトを装着させると
「ベルトは、きつくはないですか? 」
戸田はベルトを締めながら優しく言う。
「はい。大丈夫です」
「それはよかったです。
操縦桿を動かしてみてどうですか?」
「はい。操縦桿など問題なく動かせます」
「それは良かったです。安心しました。
それと、このレバーは山田さんの所の
シミュレーターには無かったと思うのですが
このレバーは
フラップと言う翼を操作するレバーで
飛ぶスピードを遅くしても飛行機を
安定して飛ばす事が出来ますが
今回は使わないと思いますので、
このレバーは無視されていいです。
ゲームとは違い操縦に
違和感が有るとは思いますが
楽しまれて下さいね」
戸田は山田の話を聞いて
サキさんなら早い段階でコツを
つかむのではないだろうかと思っている。
「はい解りました」
それと、目の前のスイッチ類も
実際に使う物なのですが今回は使いません。
今、この操縦席は乗り降りの為に
少し下の方に降りていますが
サキさんが中でOKと言って頂くと
こちらで装置を始動させます。
そうしますと、この球体が
下から5メートル程の高さまで上がります。
5メートルの高さまで上がったら、
この“準備OK”と書いてある
表示部分が赤く光ります。
この表示部分の準備OKと言う部分が
赤く光ったら
サキさんの好きな時に
この“START”と言うボタンを押してください。
そうすればフライトが始まります。
サキさんは自分の乗っているジェット機で
目の前を飛ぶジェット機を
追いかけてください。
今回は相手のジェット機は逃げるだけで
攻撃はしてこないです。
途中色々な障害物が出てきますが、
サキさんの判断で通過してください」
「はい。解りました。追いかけるだけで
撃ち落とさなくていいのですね?」
「あ!
ミサイルなどは装着されていませんので
機関砲だけとなりますから
撃ち落とすのは難しいと思いますが、
撃墜できるようであれば
好きな時に撃墜されていいです」
「はい。解りました」
その時、戸田はサキの笑みと瞳の奥に
自信に満ちた余裕を感じた。
(えっ!確かにサキさんは
ゲームの達人ではあるのだが
ゲーム用のシミュレーターと
私たちのシミュレーターは
全く違うものだと言う事が判っていなくて
簡単に相手を撃ち落とせると
思っているのだろうか?……
いや!そんな事は無いだろう……
撃墜王だと言われているサキさんの事だから
撃ち落とす自信が有るのかもしれない……)
「サキさんの姿や音声は、
一応こちらで確認していますが
何かあればいつでも声をかけください。
直ぐに対応いたしますから。
此処までの説明で大丈夫でしょうか」
戸田は笑顔で、
ゆっくりとした言葉と動作で言う。
「はい。大丈夫です。解りました」
サキはこれからどのような事になるのか
楽しみでワクワクしている。
「それでは、
私たちは外にあった大型画面で
サキさんの操縦目線で
見ていますのでよろしくお願いします」
そう言って戸田が入り口のドアーを閉めると
直ぐに計器類や窓となる部分の画面が
スタンバイ状態になって
綺麗に光輝いた。
(わぁ~綺麗!とても雰囲気がいいわね)
そう思いながらサキは
「OKです」と声を掛けた。
直ぐに装置のスイッチが入れられ
サキの目の前に有る
準備OKと書いてあるボタンが赤く光った。
サキはそれを確認すると
START ボタンを押す。
画面下から目の前にジェット機が出てきて
直ぐに物凄いスピードで逃げ始めると
サキはすかさずスロットルを開き
上下左右に逃げるジェット機を追いかける。
外では大型画面でサキの操縦ぶりを
戸田も山田の二人で見ていて
操縦桿やスロットルなどの
データーログも
スタッフの4人が
それぞれの目の前に有る
小型画面で確認しながら
記録と監視をしている。
そして、サキの血圧や心拍などを
画面上でデーターログとして見ている上野は
(あら!……この子、
心拍数も血圧も呼吸も殆ど変化が無いわ?
少しドキドキはしてはいるようだけど
怖くてドキドキしているのではなくて
顔を見るとワクワクしているように
見えるわね!?
始めてだと思うのだけど、
この落ち着き様は
どう言う事なのかしら?……)
上野は今まで多くの人たちから
データーを取ってきたが
こんなデーターを見るのは初めてだった。
そして戸田も
「うっ!上手い!
実機同様の動きをするシリウスを動かすのは
初めてだと思うのだが
落ち着いて良く追いかける事が出来ている!
追いかけている敵機がシャドーとは言え
(敵機が発する気流の乱れなどが無く
こちらの操縦に影響がない)
サキさんは、今までの者たちとは
根本的に何かが違う!」
戸田がそう言うと、
操縦のプロである山田もスタッフの全員も
サキの取っている行動が
どれほど凄い事なのか手に取るように解り
サキのシリウスへの対応速度や
操縦センスの良さに開いた口が塞がらない。
「英太さんにいい腕のパイロットが居たら
連絡をしてくれるように頼んでいたのですが
英太さんが撃墜されるほどの腕前ですからね」
「英太さんを撃墜ですか……
やはりそうなんですね……」
戸田は山田の言葉にあまり驚かない。
続く
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