第13話


 そして次の日、

サキは朝食を済ませると山田と車で30分ほど走る。


そして広い敷地に大きな4階建ほどのビルが建っている所へ着くと

サキと山田は係りの人に案内され戸田の居る部屋に案内された。


「お持ちしていました。

山田さん、その子が昨日言われていた女の子ですか」

「はい。そうです。

この子が昨日電話でお話したサキさんです」


「サキと申します。よろしくお願い致します」

サキは山田の横で深々と頭を下げた。


「いえいえ。代表者の戸田 昇(65)と申します。

こちらこそよろしくお願い致しますね。

では、こちらへどうぞ」戸田はサキと山田を応接室の椅子に座らせると


「サキさんは、素晴らしい操縦技術を持っておられると聞きましたが

何処で操縦技術を覚えられたのですか?」

戸田は笑顔で聞くが、サキの予想通りの質問だった。


「はい。父のゲームを見ていて独学で覚えました」

「あ!そうなのですね。

お父様どのようなお職業に付かれていらっしゃったのですか?」


「父はまだ私が子供頃に亡くなりましたので

どのような仕事に就いて居たのか詳しく知らないのです……

すみません……」


「あ!いえいえ、

これは申し訳の無い事を聞いてしまいました。済みません……」

戸田は恐縮しているが

「では、今は何方かと暮らされていらっしゃるのですか?」


「いえ。父も母も亡くなりましたので、今は一人で旅をしている所です」

「えっ!ご両親を亡くされて

今はお一人で旅をされていらっしゃるのですか!」

「はい」サキはこういう答えるのが1番良いと結論付けていた。


「それはお寂しいでしょうが、

頑張られて素敵な思い出を沢山作られて下さいね」

「はい。皆様の温かいご支援でいつも楽しく過ごさせていただいています」

サキは再び深々と頭を下げた。


「今日はサキさんが素晴らしい操縦センスをお持ちだと言うので

私たちは楽しみにしていました。

それを、これから私たちに見せて頂けますか」


「はい。頑張ります」

「ありがとうございます。

では準備を致しますので此処で少しお待ちください」

「はい」


 サキがそう言うと係りの女性が後ろから

「お飲み物をお持ちいたしますけれど、何に致しましょうか?」

と、メニューを見せてくれる。

サキは以前食堂で飲んだお茶が美味しかったので、お茶を注文する。


 直ぐにお茶は届けられ、サキと山田はお茶を飲みながら話している。

「此処の機体はゲームではなく実機そのものなのでゲーム機とは違い

最初は動きが違って違和感があると思いますが

遊びだと思って楽しんで来るといいですよ」


サキが実機経験豊富な事など知らない山田は

サキを心配してアドバイスをしている。


「はい。楽しんできます」

しかし、サキは飛行機などの操縦は大好きなので

どの様なフライトになるのか楽しみでワクワクしている。


 その頃、開発スタッフ達5人はサキの操縦技術を

どの機体でテストするのか戸田と検討している。


「社長、いくらゲームが上手くても、

いきなり実機並みのF-15は無理ではないかと思いますので

プロペラ機のセスナがいいのではないでしょうか」

「社長さん、私もそう思います」スタッフの意見は揃っている。


「う~ん……

しかし山田さんの言うには相当な操縦センスだと言っている……

山田さんの眼は確かだし、私もこの子には何かを感じる」


戸田は最初、サキに操縦センスを見せて欲しいと言った時

サキが“頑張ります”と言った時の瞳の奥に

光り輝くものを見たような気がして

この子は他の者とは何か違う物を感じ取っていた。


「うん!そうだ!シリウスにしよう」

戸田は吹っ切れたように言う。

「えっ!!!シ、シリウスですか!」

「うん!」


「しかし、あれはF-15以上に

小さな女の子には無理ではないでしょうか?」

スタッフ全員が無理だと言う顔をしている。


「サキさんはゲームで操縦を覚えたと言っていて

山田さんの所でフットラダーではなく

操縦桿でラダーを操作する方を選んだとの事だ。


セスナもF-15もフットラダーだ。

しかし、シリウスは次世代の新しい考えを取り入れた操縦システムで

ゲーム機と同じくフットラダーが無く操縦桿を回すことでラダーが動く。


これはゲーム機で育った世代には受け入れやすいと思う。

とにかくシリウスで行ってみよう!」

「はい。解りました」

戸田の一声でサキの機体はシリウスと決まった。


 戸田はサキの待つ部屋へ行くと

シリウスと言う機体を操縦する事が決まったと告げる。


「えっ!シリウスですか!」山田は驚くが

「うん。サキさんなら乗りこなしてくれると思う」

戸田は笑顔で自信満々だ。


「う~ん……サキさん、

シリウスはゲーム機と違って実機の様にGと言うか、

身体に強い重力が掛かるから心してくださいね」

山田はシリウスと聞いてサキの身を案じている。


(えっ!Gが掛かる?と言う事は重力を制御しないと言う事ね。

と言う事はフライトがジェットコースターの様になると言う事なのよね?

それは面白そうだわ!)


サキはジェットコースターに乗るのも大好きなので

ジブ星の宇宙船や戦闘機はGを感じないように制御されているが

久々にGを感じるジェット機に乗る事を楽しみにしている。


「山田さんはどうされます?

サキさんの操縦を見られますか?」

「サキさんを連れて帰らなくてはいけないので一緒に行きます。

そんなに長くは掛からないですよね?……」


「はい。女の子であるサキさんに

そんなに長くご迷惑をおかけする訳には行かないですから

少しデーターを取らせて頂いて終わらせたいと思います」


戸田はサキの操縦センスが素晴らしいと言われても

女の子の体力や操縦技術は大体の予想出来るので

なるべく早くサキを解放してあげようと思っている。


「そうですよね。

サキさんをシリウスにそんなに長く乗せる訳には行かないですよね」

山田も納得をしている。


    続く

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