第12話

「実は今、うちの会社に

うちの本田君と鈴木君の2対1でも敵わない程

操縦センスのいい女の子が来ているんです」


「女の子なんですよね」

戸田も又、山田と同じく体力的な事を心配しているが

戸田が自分と同じことを心配しているのを

直ぐに理解した山田は


「はい。でも体力は男性以上に素晴らしい物をお持ちですよ。

おまけに若くて可愛い……」

「女の子なのに体力もあり操縦センスが良いのですね……」


「はい。この子は相当な時間飛んでいると思うし

操縦センスは本当に素晴らしいです。

この子の操縦するデーターをそちらで

詳しく見てみる価値はあると思いますよ」


「そうなのですか……

それはどのような子なのか見てみたいものですね……」


 その頃、スタッフ達はサキの周りに飲み物を持って来て

お互いの飛び方の議論をしている。


暫くすると山田が帰って来て

「サキさん、戸田さんと連絡が取れました。

明日、戸田さんと言う人の所へ行くのですが

今日は我が家へ泊って頂いてもいいでしょうか?」


「それは構いませんが、私がお邪魔しても良いのでしょうか?」

「勿論です。妻も私の家族も喜ぶと思います」

山田は嬉しそうに言う。


「あ!サキさん、

今夜泊まる事をご両親に連絡されなくてもいいでしょうか?」


「はい。今私は一人旅の途中なので大丈夫です」

一人で居ると言うのは本当なので

嘘をついた事にはならないだろうと安堵しているが


それよりもサキは色々な人に会えるのは嬉しくて

どんな人に会えるのか楽しみになっている。


 そしてサキは山田の家に着き妻の幸子(54)に出迎えられた。

「いらっしゃい。貴女が撃墜王のサキさんね。私は妻の幸子と言います」

幸子はウインクをしながら悪戯っぽく言う。


「いえいえ……」

サキは恥ずかしそうに手を小さく振りながら小さくなっている。

「私は書類の整理が有りますので少し席を外しますが

妻が応接室に案内いたしますので暫く休んでいてくださいね」 


 その時、応接室に招かれたサキは本棚に色々な書物が有る事に気付く。

「沢山の書物が有るのですね」

「ええ。主人は本を読むのが好きで集めていますが

興味が有る本が有れば食事の支度が出来るまで

自由に読んで居て下さいますか」


「はい。それはありがとうございます」

「ごゆっくりとされて下さいね」

幸子はそう言うと応接室から出て行く。


 本棚からそれらしい本を取り出したサキは

(この星は地球って言うのね。

だとしたら先ほどの星は、この月と言う事ね。


えっ!この本の中に書いてある元素は173しかないわ?……

この地球では殆どの元素が見つけられていないのね……

て言うか、何も見つけられていないと言った方がいいかも!?……


それに、ワープに必要な空間を曲げる為の

負化変素位と正化変素位も発見していない……


ワープリングに必要な物質カタベル2は

この地球に有るのに見つけられないのかしら?

それとも、この地球には存在しないの?……


でも、元素すらほとんど見つけられていないのでは

どちらにしても此処で輸送船の修理に必要な部品を

手に入れる事は不可能だと言う事ね……


それに、もしも材料が有ったとしても私には作れない……

もう、この地球と言う星から動けないと言う事よね……)

サキは色々な部品などを作ってくれる人がいるから

今の自分が居るのだと痛感している。


サキは失望するが、落ち込んでいる暇はなく

色々な本でこの地球と言う星の色々な情報を得ると

日本と言うこの場所で生きて行く事を決意する。


 暫くすると山田が応接室に来て

「お待たせいたしました。所で、サキさんは

何処でそのような素晴らしい操縦技術を覚えられたのですか?」

山田は笑顔で聞く。


「父から教えて頂きました」サキは笑顔で答えるが

「あ!そうなのですね。お父様はパイロットか

何かされていらっしゃるのでしょうか?」


(あっ!……この流れは、まずいわ……どうしよう……)

サキはどう答えるべきか思案していたその時

「ただいまぁ~」と、玄関で大きな声がした。


「あ!娘の久美(22)が帰って来たようです。

リビングへ行きましょうか」

「はい」

山田は立ち上がりサキを誘うとリビングへと向かう。


(あ~助かった。多分この手の質問は続くと思うから

何かいい返し言葉を考えなくおかなくてはいけないわね)

「いらっしゃいませ」

久美はサキに笑顔であいさつをしてくれた。


「お邪魔しています」サキも笑顔で言うが

「サキさんは本田さんも鈴木さんも撃墜した撃墜王なのよ」

幸子は悪戯っぽく言う。


「えっ!本田さんと鈴木さんに勝ったの!!!」

「それも本田さんと鈴木さんとの2対1でね」

幸子は久美に悪戯っぽく言うとサキにウインクをする。


「へぇ~……それって物凄い事よ。サキさん!」

久美は本田と鈴木の実力を知っているだけに

サキを尊敬のまなざしで見ている。


「いえいえ……まぐれだと思いますから」サキは謙遜している。

「いやいや、サキさんの操縦センスは素晴らしいですよ。

目の前で見ていたから解ります」


山田はサキの実力を見抜いていて

サキが謙遜しているのは解っている。


「そう言って頂けるととても嬉しいです」

サキは嬉しくて素直に笑顔で言う。

4人で雑談していると長男の正(27)も帰って来て

撃墜王サキの話で盛り上がった。


家族で食事を済ませ

お風呂となるが着替えを持っていないサキに

幸子は洗濯をして朝までに着る事が出来るように乾燥機に入れ

久美のパジャマを貸す。


「少し大きいようだけど我慢してね」

「いえ、大きい方が楽ですので大丈夫です。ありがとうございます」

サキは感謝して笑顔だ。


 そしてサキは、

この優しい山田家の人たちに感謝しながら深い眠りに落ちた。

 

     続く


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