第10話

 サキがゲームを終え良治がゲームを始めると

「サキさん、貴女はとてもいい操縦センスをお持ちだ。


私の後輩の山田と言う男性と会って頂きたいのですが

勿論サキさんの都合もあるでしょうし

山田にも聞いてみなければ日時や時間は解らないのですが

今日の午後にでもどうでしょうか……」


平岡は静かに落ち着き払った口調でサキを諭す様に言う。


(どうするのが1番良いのだろう?……

この星でパワーリングの部品を見つけなくてはいけないのだけど

明日は良治さんもお仕事だと言っていたし

良治さん達にこれ以上迷惑はかけられないわね……


色々な場所へ行き色々な人と会うと言う事は

部品を見つける事が出来る可能性も増えるかもしれない……)


「はい解りました。人との出会いは大切にしたいので

その方の都合のいい時に、その方と会わせて頂けますか?」


「おお!では会って頂けますか!

今から直ぐに連絡を取りますのでお待ちください」

そう言うと平岡は部屋を出て行った。


 そして平岡は昔

航空自衛隊で後輩だった山田と言う人物に電話を入れる。


「もしもし、山田君」

「あ!平岡さん!お久しぶりです。

お元気にされていらっしゃいましたか」


「うん。元気にしていたよ。

山田君、とても素敵な女の子を見つけたぞ!」


「素敵な女の子、ですか?……」

「うん。君が以前、操縦の腕のいい人が居たら

教えてくれって言ってただろ」


「ええ。言いましたが……」

「いたよ。信じられない程、操縦センスのいい子がね!」

「でも、女の子なんですよね?」


山田は女の子と聞いて操縦データーを取るのには

時間が掛かるので体力的にどうなのかと心配をしているが


「そうなんだがね、最初は女の子だからと油断はしていたが

途中からこれは上手い!と思って本気を出したが落とされたよ」

平岡は山田が女の子なので技術的な事を心配していると思い

笑っている。


「えっ!平岡さんが、その女の子に落とされたのですか!」

「ああ、だが落とされても何故か気持ちが良かったぞ!

とにかく操縦センスは素晴らしい物を持っている」


「それほど操縦センスのある子なら会ってみたいです」

山田は操縦技術では右に出る物が居ないと言う

平岡さんを撃墜したと言う女の子の操縦データーは

絶対に欲しい。


「いつがいい?今日の午後はどうかね?」

「そうですね。それでは今日の14時ではどうでしょうか」


「解った。それでは今日の14時に

私がそちらへ連れて行くからよろしく」

「はい。お待ちしております」


 そして平岡はサキの元へ行き

「サキさん、

山田君と今日の14時に会うと言う事で話が決まりました。


ゲームが済んだら3人でお昼ご飯を食べに行きましょう。

私の行きつけの店に招待いたします。

そこで食事を終えた後、

私と一緒に山田君の所へ行って頂けますか?」


「はい。よろしくお願いいたします」

サキはどの様な場所で

どのような人に会えるのかワクワクしているし

修理の為の部品も発見できるかもしれないと期待している。


 その後平岡は、行きつけの店にサキと良治を連れて行き

食事を済ませ、家に帰り休憩を済ませると

サキは良治に今日のお礼を言う。


「良治さん、二日も色々とありがとうございました。

会って欲しいと言われる人がいらっしゃるようなので行ってみます。

良介さんや祥子さんによろしくお伝えください。


一平さんが木曜日には写真が出来ますと言っていらっしゃったので

木曜日までには祥子さんの所へ行きますね」


「解った。では、サキさんお元気でね」

良治は別れを悲しむが

また逢えるかもしれないと思い元気に言う。


「はい。ありがとうございました。また逢いましょうね」

「うん」


お互いに別れの言葉を交わすと良治は車に乗り帰って行き

サキは平岡と車に乗り出発をする。


(何処へ行って、どのような人と逢うのかしら?どちらにしても

部品を見つけるまでは、この星から離れる事は出来ないので

それまでは旅を続けることになりそうね……)


 平岡は車を走らせながら

「私の航空自衛隊時の後輩で山田と言う男が

フライトシミュレーターのソフトを作っているのですが

もっと良い物を作りたいと腕のいいパイロットを探しているんです。


サキさんの操縦センスなら山田君の期待に応えられると思います」

平岡は運転をしながら横目でサキを見る。


「期待に添える事が出来るかどうか判りませんが頑張ってみます」

サキは平岡の期待に応えようと思う。

「うん、うん」平岡は力強いサキの言葉に首を縦に振り

とても嬉しそうにしている。

 

 やがて車は大きな2階建てのビルの前に着き

サキは平岡に連れられビルの中に入ると

ゲーム用フライトシミュレーターソフト開発会社社長の

山田 一(はじめ60)が出迎えてくれた。


「お持ちしていました。平岡さん」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。

こちらが先ほどお話した撃墜王のサキさんです」


サキは、いえいえ、と言う風に手を振り、

「初めまして、サキと申します」と苦笑いしながらも頭を下げる。


「初めまして、サキさん。私は此処の社長の山田 一と申します。

本日はお忙しい中、私たちの為にありがとうございます」

山田はサキがこれほど若いとは想像もしていなくて

驚きながらも頭を下げるが、顔には出さないでいる。


「いえいえ、お役に立てるかどうか分かりませんけれど

よろしくお願いいたします」

サキは丁寧なあいさつに恐縮している。


「それでは、私はこれで失礼済ますね」

「色々とありがとうございました」

サキは深々と頭を下げた。


         続く

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