第2話

 と、その時、

監視室の中で怪我をした整備士を

監視員と二人で抱えようとしていた整備士が

「あ!輸送船の入り口のドアーを閉めていない。

整備途中だから誰も入れないようにドアーを閉めて来る」


そう言ってドアーを閉めると、誰も簡単に入れないようにと

自分のIDカードで輸送船のドアーを非常ロックした。


 監視員もその後

輸送船と接続してある通路のドアーも閉めロックする。

3人とも監視室を出て監視室のドアーもロックすると、

整備士と2人で怪我をした整備士を抱え医務室へと向かった。


 その頃、見学場所では、

「あっ!サキと言う女の子が此処を離れているわ!」

案内係の女性はタブレットが赤く点灯し振動してサキの顔写真と

名前が出ていることに気付く。


「後をお願い!一人見学路から離れている子がいるわ!」

もう一人の案内係の女性に声を掛け

自分はタブレットが示す場所へ向かう。


 そんなことになっているとは知らないサキの家では

リュウとサキの母親のパルマはリビングで二人話している。


「サキはお昼からのフライトシミュレーションを

とても楽しみにしていたから

今頃は早くお昼にならないかとウズウズしているだろうねぇ~」

「そうですねぇ~。誰に似たのかしらね……ウフフ」


 その頃、サキは通路を進むが、

この景色に父と一緒に通ったことを思い出している。


(あら!?なんだか

お父さんが乗っている輸送船の中に似ているわね?

お父さんの乗っている輸送船と同じだったら、

確か此処を左へ行けば操縦室の筈なんだけど……


あ!やっぱり、お父さんと同じタイプの輸送船だったのね!!!)

サキの思う通り父と同じタイプの輸送船の操縦室の中にいた。


周りを見渡すと父と一緒に乗った操縦席とよく似ていて

操縦の仕方は大体解かる。

「あら!これはお父さんが乗っている輸送船とよくよく似ているわ!」

(これなら動かしたことが有るから私でも動かせるわねウフフ)


 そして工場では

案内人がタブレットの表示を頼りに監視室の前まで来たが、

勿論、タブレットには監視室の扉は閉じられているし

目の前の輸送船へと通じる扉も

通路側から閉じられていると表示されている。


(えっ!この先に居る筈なのに?

案内人は辺りを探し回るが見つからない。

(変ねぇ~……外に居る???

このタブレット、バグってる?……)

不審に思った案内人は事務室にいるミルに連絡を取った。


「あ!ミル。私、今、4の46に居るんだけど

此処って今、修理の輸送船が入っているのに

何故監視員が居ないの?何故閉鎖してあるの?」


「あ!今、整備士が怪我をしたので、そのドアーを閉鎖して

監視員は整備士二人と医務室に向かっているわ」


「えっ!でも、女の子が此処のドアーの外に居ると警告しているの!

確認したいから監視員に急いで4の46まで戻る様に伝えて!」


「解ったわ!直ぐに連絡を取るから少し待っててね」

「急いで頂戴!」


 そして輸送船の中でサキは、

(お父さんは居ないようだし、あまり長居は出来ないわね。

早くみんなの居るところへ帰らないと!)


サキは宇宙船の出口のドアーを開けようとするがドアーが開かない。

(えっ!なぜ開かないの?)


サキが何度も入り口にあるレバーを操作し

ボタンを押しても一向に扉が開かない。


(ドアーの電源が入っていないから開かない?おかしいわ???

この輸送船にはドアーのメーンスイッチが何処かに有って

ドアーの電源が切ってあるのかも……)そう考えたサキは操縦席へ戻る。


 その頃、連絡を受け監視室に着いた監視員は案内人と話をしている。


「このドアーの向こうに女の子が居ると出ているの!ドアーを開けてくれる!」

「いや!そんな筈はない!監視室の前は俺が監視していて誰も通していない!」

「でも、この先に居ると警告が出ているの!早く開けて頂戴!」


案内人の強い言葉に監視員は、

「わ、解った。ドアーを開けよう」

そう言って監視室の入り口のドアーのロックを解除しようとするが、


「あっ!!!整備士が輸送船のドアーを非常ロックしていたんだった!

あいつのIDカードが無いと、こちら側のドアーを開けても

輸送船のドアーが開かない!ちょっと呼んでくる」

そう言って案内人を残し監視員は慌てて整備士を呼びに行く。


 その頃サキはメーンスイッチだと言うスイッチを見ているが、

メーンスイッチの上に張り紙がしてあり

“整備中に付き触るな”と書いてある。


(えっ!困ったわね…………

でも、このスイッチは入り口のドアーの電源とは関係がない筈よね?……

何処かにドアー用の電源が有るのかしら?……

いくら探してもドアー用の電源を見つけられないサキは


(そうだ!一度、電源を入れてみよう。

それでドアーが開くかどうか見に行けばいいかも。

パワーリングやエンジンのメーンスイッチを切って置けば、

別にメーンスイッチを入れてもいいのじゃ~ないの?)


そう考えたサキは、

エンジン用のメーンスイッチとサブスイッチのオフ確認して

ワープリング用のメーンスイッチとサブスイッチもオフを確認して

張り紙を剝がしメーンスイッチをオンにした。


だがサキの思いとは裏腹に

操縦席にある計器が全て動き出し輸送船は始動してしまう。

(えっ!これってまさか!!!あっ!~ダメ、ダメ!ダメ~!!!)


そう、サキの想像通り輸送船は始動してしまい

セットしてあるいつも行く星へと向かう。


サキは慌ててメーンスイッチを切るが

回り始めたワープリングを途中で止めると言う事は

安全上できない仕組みになっていて

輸送船は自動で動き始めていて止まらない。


そしてサキ一人を乗せたままワープし始めるが

ワープリングの一部がまだ交換されていない上に

ボルトも緩められているし重力制御装置の電源も切られている輸送船は

大きくバランスを崩し


ガガタンガタガタ、ガガタンガタガタと大きな音を立て

機体がバラバラになってしまうのではないかと思う程激しく揺れ

サキは立っているのがやっとだ。

「きゃ~~~」


     続く。




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