作家になった麻根 ー公募挑戦からデビューまでの備忘録ー
麻根重次
0、はじめに
どうもこんにちは。あるいは初めまして。
私は麻根重次という名前で活動しているしがないモノ書きである。以後お見知りおきを。
先日、私はありがたいことに、「島田荘司選 第16回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」という少々長めのタイトルの新人賞を受賞することとなった。そして2024年3月、講談社からデビュー作「赤の女王の殺人」が刊行され、現在発売中である。
新人のデビュー作としてはそれはもう異例の売れ行きで、発売後即重版どころか3版、あっちこっちからインタビューのオファーが絶えず、2作目も大いに期待されており、早くも仕事をやめて専業で食っていけるだけの印税が転がり込み……ということにならんかな、とハナなぞほじりながら今日も今日とて進まないプロットをこねくり回している、しがないぺーぺーの兼業作家だ。
で、そんな私が何を書こうとしているかというと、これは一言で言ってしまうと備忘録ということになる。
私が小説を書き始め、公募に出し、受賞してデビューするまでに起こった様々なことの備忘録。あ、忘備録。ん? どっちだ? 備忘録も忘備録もどっちも変換できるな。まあいいや、多分どっちも合ってるんだろう。
なんで仮にもプロデビューした筈の人間がこんな雑な文章を書いているかというと、理由は大きくふたつ。
ひとつは、最近自分の年齢が気になり始めたということ。
麻根重次でGoogle検索でもしてもらえればばっちり出てくる通り、まだ若いと信じ込んでいた私もいよいよ不惑が目の前に迫ってきた。
まあこの小説家という世界は還暦過ぎてデビューする人もそれなりにいて、別段若ければいいというものでもないので、デビュー年齢をどうこう言うつもりは全くない。ないのだが、肉体はまあ正直なもので、恐ろしいことに徐々に記憶力というものが低下しているようなのである。
で、それに気付いた私としては、この半年で経験した素晴らしい、そして人生でも二度とないであろうあれこれを、どこかに書き留めておきたいと思ったのだ。
ふたつめはもう少し単純で、気分転換である。
現在私は、デビュー1作目(つまり2作目)の刊行に向けて、必死に原稿を書いているところだ。いやちょっと嘘ついた。まだプロットだ。何しろ担当編集氏にこの渾身のプロットを見せてOKを貰わねばならないのだ。
それはともかく。必死に頑張って頭の中を絞り出していると、どうにもしょうもないことを書きたくなるのである。
それでちょっと息抜きに書き始めたんだが、ほらもうあっという間に1,000文字だ、頭を使わない文章のなんと書きやすいことか。
こうやって誤字脱字すらろくに推敲せずに書きなぐる駄文を吐き出すというのは、やはりストレス解消にはもってこいなのだろうと思う。
いやはや、ただの自己紹介が気付けばもうこんなに長くなるとは。
要するにそんなどうでもいい理由で書き始めたこのエッセイだが、まあ新人賞を狙っているいわゆる公募勢という界隈の方々にとっては、多少なり参考になるものがあるかもしれない。
願わくはこのエッセイを読んだ公募勢が、「こんなアホでも受賞できるのか。それなら自分もできるかも」と自信を深め、そして華々しくデビューし、やがて食い扶持に困った私に「あの時はありがとうございました」などと昔話の鶴のように救いの手を差し伸べてくれることを願ってやまない。
ちなみに、内容的には10回程度の連載になる予定であることをここに申し添えておくが、まあ私のことだから全く当てにはならない予告だろうな。
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