第6話
家に帰った。お母さんがきていた。お母さんはいらついている様子で「何この散らかった部屋。ちゃんと片づけなさい!そんなライブとか遊んでばっかいないで!」と言った。私は「遊んでるわけじゃないから!わかってくれないなら帰ってよ!何しに来たわけ!」と言った。お母さんはうんざりしたように「なんでいつもそうなの。」と言った。お母さんは一通り怒ると帰っていった。私は部屋でうずくまっていた。お母さんにわかってもらえなかったことが悲しかった。悔しかった。お母さん、私、今日頑張ったんだよ。夢叶えたんだよ。良かったね、って。頑張ったね、って言って欲しかったよ。私、何のために頑張ってきたんだろう。お母さんにわかってもらえなくて、褒めてももらえなくて、何の意味があるんだろう。私はただ、お母さんにわかってもらいたかっただけなんだ、そう気づいた。なんかもう、どうでもいいや、全部。そんな気持ちだった。仕事…行かなきゃ。そう思ってもなかなか立ち上がれない。私なんかが幸せになっちゃいけない。私なんかが夢を叶えちゃいけない。きっと誰かに邪魔される。私の幸せなんて願ってない人がいるんだから。そう、お母さんみたいに。ただ悲しかった。私の中の小さな子供がうずくまっていた。私の中にあったのは、罪悪感だった。お母さんを置いて私だけ幸せになっちゃいけないんだ。私は不幸でいなきゃいけないんだ、そんな気持ちだった。ピンポーン「はい」「マネージャーの安田です。」ずっと引きこもっていた私の家に、安田さんがやってきた。「どうしたんですか。電話にも出ないで。」「もう、いいんです。」何もやる気がなくなった。「みんな待ってますよ。メンバーも、ファンのみんなも。」そんなこと言われても、心に響かない。お母さんに言われた言葉が、心に刺さったままだった。真っ暗な暗闇に、一人おちていくようだった。私は独りぼっちなんだ。もう、いいんだ。カーテンも閉めて真っ暗な部屋に毎日閉じこもっていた。ピンポーン。ついにメンバーが家にきた。「どうしたの?スミレちゃんらしくもない」とユウタさん。「何かあったの?」とリンちゃん。きっと口に出せば、なんでもないことで。だけど私にとっては大きなことで。言えなかった。「もう何もしたくないの。歌いたくない。ごめん。」と私は言った。「…そっか。」「あれ?カナデさんは?」「いま来てる途中だと思うけど。」「ちょっと遅いね。」いやな予感がした。
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