第15話因縁

試合が終わったのが先か落合が両膝を地面についたのが先か分からないが、試合には勝った。長嶋は即座に落合を休ませた。準決勝は10分後、第一コートで行われる。ここから第一コートまで走って2分だから、8分は休めると思った。このまま回復しても準決勝は戦えるはずないと、長嶋は思った。棄権の文字が浮かんだ瞬間落合が


---ここまでは2人で来たから、準決勝も2人で立ちたい。


続く準決勝は不戦勝になってしまった。なにやら相手がケガをしたらしく、欠場したのだ。

思わぬ形で決勝に残った。落合の体力も回復しきってなく、自分がやるしかないと、長嶋は思っていたが、落合が


---オレなら平気だから、次の試合の作戦たてようぜ!


決勝はもちろんもう一つの準決勝が終わってからだ。長嶋は落合の側を離れようとしなかった。


---月、オレを置いて偵察行けよ!


落合は自分の情けなさを隠すように強く言った。

落合は丁度良い休息を。長嶋は集中力をきらさないよう努めた。長嶋は落合から離れてしまった。しかし、偵察に行った訳ではなく、遠くから見ていた。そして、決勝戦の時間になった。

---とうとうここまで来たな。

---うん、3年振りだね。今回は負けても表彰式は出るからね!

---何不吉なこと言ってんだ、勝つに決まってんだろ!

---よぉ

---あ、お前は!•••誰だっけ?

---古いボケしやがって!

---ほら、3年前の決勝の相手だよ。


長嶋が落合の耳元でボソっと話した。


---あ!思い出した!あの時勝った相手か。楽勝だな。

---あの時負けたから努力を更に重ねた。甘えを捨てテニスに励んできた。そして、お前達を倒す自信を手に入れた。だから、楽勝な訳ねぇ。勝つのはオレらだ!


と、まさに威風堂々自信が漲っていた。落合の煽りも効いてなかった。佇まいで分かった。


---ってか、またそんなんかよ!

---え、初めてじゃないの?どんだけライバル増やせばいいかな?それとも、嫌われてるの?

---さぁ?どっちもじゃない?


試合開始


---月キャラ変わった?今まで話すなんてなかったのに。

---うるさい


長嶋は落合に対してそっけなく言った。

落合のサーブから始まった。


---前回の相手の特徴は?

---サーブ始まってから聞くな!コントロールが良いのとストロークの強さがいいってことかな。フォアもバックも。もう1人はサーブとボレーが上手い。つまり、2人揃えば完璧なテニスプレーヤーだ。弱点もお互いが補っていたような印象だ。つまり、


と、落合の説明を遮るように長嶋が言った。


---最強のテニスプレーヤーか。でも、2人揃えばでしょ?最強のパートナーがいる僕が1番だ。

---月ゴメン、もう一度聞きたい。

---2度と言うか!


そうこうしてるうちに1セットとり、サーブ権が移動して相手のサーブになった。


---なんだあのサーブ?


相手はサーブの際あまり高くあげずに打っていた。もう片方は変わったフォームでボールを待ち構えていた。


---不意打ちのつもりか、きかないな。もう1人も変なフォームだし。


と、月が言った。


序盤はリードしていたが、次第に追いつかれ逆転されてしまった。今大会で初めて追う展開になった。


---なんだあのフォーム忘れる訳ねえ! 

---3年前にはオーソドックスなフォームだった。今のフォームの方がパワーが強い初めて見るフォームだ。単純に年齢からくるパワーアップと違う気がする。


と長嶋は落合に話した。変なサーブに変なストロークでも、見た目で判断してはいけない。

2人共パワーもコントロールも上がっていた。


---変なフォームなのに全然苦しそうじゃない。むしろ、しっくりくる。相手もなりふり構ってられないのか。本当に3年前戦って勝ったのか?まるで別人だ!

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