第10話和解


そして、翌朝

落合は忘れものを取りにコートに来ていた。時刻は午前6時。


---確かこの辺にオレの通学カバンが……あ、あったあった。


人通りがなく、独り言がいつもより大きい落合。


---え?あれ、月じゃね?何でこんな朝早く

---おーい月こっちだよー。 


落合は手を伸ばし振った。長嶋も気づき振り返してくれた。


---太陽こんなに朝早くから何してんの?

---オレは忘れものを取りにってか、月こそ何してんだよ?

---僕はゴミ拾い。コート周りも綺麗にしておきたい。まぁ、じいちゃんの言いつけだけどね。それを守ってるだけなんだけど。

---この広いコートを1人で?!

---うん。やってみたら毎日ゴミは出るし結構楽しみながらやってる。この前なんて寝坊して遅刻ギリギリだったし!

---それオレらにやらせてくんねーか?

---別に良いけど、大変だよ?

---オレらのコートだからお前のコートじゃない。だから、オレらで綺麗にしたい!


後日


---よし全員集まったな始めるぞ!


先頭に立っているのは大野。


---悪ぃ悪ぃ!寝坊した。

---言い出しっぺのオマエが何してんだよ落合!


大野が落合に一喝した。大野はテニスは弱いが人望が厚い為、子どものクラスは全員集まった。


---で、こんなに早くから集まって何すんだよ。

---みんなで、コートをきれいにしたくて、この広いコートもみんなでやればたあっという間に終わるだろ?



その日は朝からコートに来てはゴミ拾いが始まった。

大野がこの前の詫びからか、積極的に動いてくれた。もちろん、津島もいた。


---ゴメンな。仕事奪って

---大丈夫。空いた時間はトレーニングとかやるから。


と、2人の会話の間に大野が入ってきた。


---2人で作戦会議?やるねー

---んなこと、ねーよ


落合は即座に否定した。


---さっき決まったんだが、2人で掃除をして残った者はオフ。一カ月に2回掃除すればいい。っていうのはどうだ。

---いいな、それなら毎日早起きしなくて済むし、すぐに終わって暇を潰さずに済む。



こうして始まった清掃は思わぬメリットがあった。落合と長嶋がペアになったのだ。練習前に行うコンビネーションの確認が出来たのだ。その空いた時間を練習に注ぎ込んだ。は2人の練習はとても、ハードだった。絶対に負けたくない。優勝したい。という思いというか気迫が強かった。大学生迄音をあげる練習も2人はこなした。

そして、運命の日がやってきた。 


全国テニス選手権中学生の部

昨夜は緊張してずっと心臓がバクバク鳴ってた落合といつも通りのルーティンをこなした長嶋。対極の2人だが、時間は待ってくれない。

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