第8話武器


優勝者は、、、長嶋月!表彰式は3分後始めます。


---月おめでとう完敗だよ。表彰式バックれんなよ!

---ありがとう。バックれないよ。太陽でも、何で泣いてるの?


お互い握手しながら健闘を称えた。ただ、落合の頬だけ濡れていた。


---いや、月が優勝したのが嬉しくてでも、勝てなかったのがスッゴイ悔しくて月には分からないだろうけど、負けるってこんなに悔しいんだな。

---そう言えば、太陽の聞きたいことって?

---え?ああ、月は何で何も言わず消えたのかかな。

---そのことか。 


溜め息混じりに月は言った。 


---あの時実は夜の引っ越しの最中だったんだよ。所謂夜逃げ?でも、どうしても大会には出たくて必死に頼み込んだんだ。そしたら、負けるまでの条件付きで出させて貰えて。でも、その日は調子良くて負けなかった。だから、目立つ表彰式を前にいなくなったんだ。突然なのは僕も同じ。前日にしかも夜に言われて最初は何かの冗談かと思ったけど表情が真剣だったから


全く知らなかった。月がどういう思いをしてたのか勘違いしていた。


---月は?何が言いたかったの?

---夜逃げしたって言ったじゃん?逃げた先でも上手くいかなくて、結局浜松のおじいちゃんに土下座して一緒に住む事になったんだ。だから、学年が終わる3月まであっちで4月から浜松なんだ。そしたら、あのクラブに通うだろ?そしたら、またペア組んでくれない?

---もちろん。でも、俺で良いのか?天才じゃねーぞ

---うん。太陽だから良いんだよ。自分を天才とは思わないけど、ダブルスの片方が天才ならもう片方も天才じゃないと成り立たないと思うんだ。


初耳だった月がオレのことも考えてくれてるなんて 

そして、月は続けた。


---太陽はフィジカルもテクニックも並若くはそれ以下。でも、他の人の持っていない武器を持ってるそれは『目』だ。

---目?

---そう目だ。あのポール回しも目で見たものでしょ?それに最後のバックハンド攻めアレを最初やっていたら、勝負は分からなかったかもね。


俺に武器?落合的には寝耳に水だった。

そして3月学校が春休みになると同時に月が来た。

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