第170話コラム~いじめがもたらす精神的な影響~

 日本では学校の中で起こる誹謗中傷や、暴力行為・被害者の持ち物を破壊する行為・学校外でも起きる児童・生徒間のこれらの行為はいじめとして扱われる。そして、適切な被害者に対する措置が取られないと、被害を受けた児童・生徒には大きな精神的障害を残す。

 一般的にはいじめの行為がちょっとしたことがきっかけで突然頭の中にリアルに再生されるフラッシュバック・この時の強いストレスや、極度の緊張状態が長く続くことにより発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)が主だったものであるが、これは酷い場合、一生治らないこともあるほどのものである。これらの症状がある場合は、周りの大人がきちんと病院の受診を勧めて、根気よく治療していく必要がある。このため被害者や、被害者家族は、本来なら支払う必要のない医療費まで負担しなければならなくなり、重く家計にのしかかるといった場面もある。

 そして、自分の存在価値を否定されることによって、自己肯定感を抱くことが難しくなり、進学や就職にも大きな影響を残すことがある。加害者から見れば、何年もたって過ぎ去ったことに思うかもしれないが、被害者やその家族は、何年たとうが数十年たとうが、今現在進行形でそう言った精神障害と戦ているわけで、いじめや暴力行為が与える影響ははかりなく大きい。そして、いじめ被害者には希死念慮を抱く場合も多く、

「自分は生きている価値がないんだ」

と自分自身を追い込んでしまい、最悪自死に至るケースもある。加害者は

「そんなこと知ったこっちゃない」

と思うかもしれないが、いじめは被害者の一生をも奪い去ってしまう可能性もあるということを知っていただきたい。

 海外では、いじめ加害者に対して、いじめ加害行為をしたという事実が確認された場合、加害者に重い責任を課す国や地域が多い。例えば、フランスなどではいじめ加害者を遠くに転居させるなどの措置が取られるほか、警察などの司法機関が介入することも多いという。いじめ解決に当たっては、学校と司法機関が緊密に連携をとっていることが多く、日本のように学校に丸投げっていうことはないという。日本の場合は被害者が遠くに引っ越ししなければならないなどの重い経済的負担を強いられることが多いが、これは私から言わせれば、被害者を救済するという目線からは完全にずれていると感じる。被害者の精神的な苦しみを和らげて、心身の健康を取り戻すための施策が海外に比べて大幅に遅れているというのが現実である。

 学校内で起こる暴力行為や誹謗中傷、学校外で起きる児童生徒間の問題は、一般社会で言えば、傷害・自殺強要・名誉棄損・脅迫・侮辱・強盗などの刑罰に処されてもおかしくないような犯罪行為だらけで、未成年と言えども、これらの行為は一切行ってはいけないということはわかっているはずである。まだ幼稚園や小学校低学年だと、親が言って聞かすくらいで済むかもしれないが、あまりにも悪質な場合は、性別年齢を問わず、被害者や被害者家族が望めば、司法機関の介入を強制的に認めさせるくらいの強力な措置が必要なのかもしれない。被害者は一生心に消えることのない痛みや傷を負って生きていかなくてはならないわけで、被害者の医療的な治療や、被害者と被害者家族が被った被害を強制的に加害者に弁償させるなどの措置を取らないと、被害者は精神的な苦しみに加えて、経済的な苦しみにも悩まされることも起きる可能性が高いため、いじめ加害者の更生に重きを置くのではなく、あくまでも被害者の救済に重きを置いた法改正が必要なのではないかと思う。

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