第165話初めての演奏
冬休みが終わって、3学期が始まって、いつもの生活が戻っきた。部活も再開されて、音楽室で1988年最初の音出し。文化祭を最後に3年生が引退したため、少ない部員数がさらに少なくなってしまったが、3学期からは私も皆と合同での練習に参加できるようになり、さっそく音合わせ。演奏した曲は、卒業式で演奏する高価。他の部員は慣れているため、少し店舗が早くてもついて行けるが、私が初めてみんなと音を合わせながら演奏するということで、少しゆったりした店舗で練習が始まった。いつもなら自分が校歌を歌う方であったが、今度は演奏する側として卒業式に参加することになった。最初はゆったりとした店舗であったが、火を追うごとに本来のテンポに近づいていって、1週間ほどで、私も本来のテンポにもついて行けるようになった。このときのメンバーはクラリネット2人、フルートが1人、サックスが1人、トランペットが2人、ホルンが1人、トロンボーンが2人、チューバが1人と言う小所帯であった。新たに部長に就任した正木先輩は
「今度はいてってくる新入部員に期待するしかないかぁ」
とつぶやいていたが、どれだけ入部して来るか、私も期待していた。吹奏楽部の演奏と言うと、甲子園球場でみられる応援のような、大規模なものと言うイメージが強かったので、3年生が引退した後の人数の少なさには少々驚いたが、人数が少ないなら少ないなりに細かい指導を受けることもできるので、いい面もあった。
冬の時期は日が暮れるのも早いので、部活も夏に比べると練習時間が短いという。確かに17時過ぎには練習が終わって、帰宅するように促される。練習が終わると同級生の貴ちゃんやみっちゃん途中、駅の近くまで歩いて帰って、色々と話をしながら帰った。部活の話からどうでもいいような話まで、わいわい言いながら帰るのも楽しかった。貴ちゃんやみっちゃんと別れてからは清田と自転車をこいで帰るのであるが、男同士、好きなアーティストの話や趣味の話などをしながら帰って、途中で清田と別れると、私ひとりで家まで帰る。結構暗い道を自転車をこいで帰っていると、
「危ない」
と言う女性の声がしたと同時に、私はその女性が運転する自転車と衝突。私は交通ルールで決められた左側を通行していて、ぶつかってきた女性は右側通行していて、しかも無灯火。私はその女性の運転する自転車に気が付いたので、道路の一番左端によけたのであるが、その女性はわき見運転をしていて、私の存在に気が付かず、私がよけた方向に向かって自転車をこいでいて、気が付いたら私が目の前で、避けきれずに衝突したという事故であった。衝突した際にその女性は
「イッタイ…。もう、どこみて運転してんのよ。気をつけなさいよ」
と、きちんとルールを守っていた私の方が逆ギレしてしまった。私は
「はぁ?そっちがぶつかってきたんじゃん。なんで俺が逆ギレされなきゃなんねぇんだよ」
そう言い返そうとしたら、その女性はそそくさと自転車をこいで逃げていった。幸い私もけがなどなく、少し膝を擦りむいた程度で済んだのでよかったが、これが指の骨でも骨折していたら、部活動にも支障が出る事態になっていた。家に帰って擦りむいたところを消毒して事なきを得たが、かなりむかついた出来事であった。翌日、この出来事を清田や佐田、倉田達に話すと
「その女、バカじゃねぇの?自分がぶつかっといて逆ギレするなんて、マジであり得んわ」
などと言っていた。
「リンダも災難じゃったの。まぁ、怪我せんかっただけでもよかったじゃん」
そう言って昨日の災難を明るく笑い飛ばしてくれた。そしてその日も部活を終えて家に帰った。
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