第164話冬休み

 やがて文化祭も終わり、足早に冬の足音が聞こえてくると、あっという間に12月。このころになると普通の音階の音は出せるようになっていた。ただ、どの曲でもそうであるが、1オクターブ上のソやラまで出さなければならない曲が多いので、さらなる練習が必要であった。部活では基礎練習に明け暮れた2学期の後半であったが、少しずつ音楽を演奏する楽しみと言うのが分かり始めた私である。私と同じ学年には、清田の他に女子で貴ちゃんとみっちゃんがいて、基礎練習が続く私によく声をかけてくれていた。

「リンダ君、音はどこまで出せるようになった?」

とか、実際にマウスピースを楽器に装着して音を出してみると、

「すごいじゃん。よく短期間に音が出せるようになったね」

とか言ってくれた。だいたい音が出せるようになるまで3か月くらいかかるのだそうである。それを3か月で普通の音階を出せるようになるというのは、上達が早いということらしい。冬休み期間中も部活があるわけで、終業式が終わったからと言って、あまり長期休みに入ったっていう実感はなかったが、家でだらだら過ごすよりも、学校に行って部活に励んでいた方がよっぽどか楽しい。なので、寒風吹きすさぶ中、自転車をこいで学校に向かっていた私である。まぁ、部活もクリスマスが過ぎると正月5日までは休みになるが。クリスマスがやってきて、部活も休みになってしばらくの間学校に行くことはなかったが、基礎練習で、マウスピースを家に持って帰って、練習を続けていた。口の周りの筋肉を結構使うので、だんだんしびれてくるのであるが、毎日1時間以上は続けていたであろうか。

 部活が休みになって、年賀状も出して、あとは年末年始の大掃除。自分の部屋の窓を開けっ広げてまずは窓の拭き掃除。寒い中手が悴みそうになりながら窓をふいていたが、最初は寒いと思いながら掃除をしていたが、慣れてくるとだんだん体があったまってくるもので、最後の方はあまり寒さは気にならなかった。窓の拭き掃除が終わると今度は部屋の中のタンスや机の上に溜まった埃を叩き落して、掃除機をかけてから、今度はフローリングを雑巾ぶき。家の掃除が終わると今度は男性陣と女性陣に別れて、男性陣は車の掃除。女性陣はお正月を迎える準備。私は車の掃除の手伝いで、まずは車の表面についた汚れをぼろ雑巾で拭き取っていく。その後乾いたぞうきんで水気を拭き取って、そのあとワックスがけ。ワックスが渇いてきたら今度は再び乾いたぞうきんでワックスを丁寧に拭き取っていく。それが終わったら今度は車内の掃除機掛け。こうしておんぼろの中古のシャレードも表面はピカピカに。車内も綺麗になって、家の中も、車の中も正月を気分よく迎えられるように準備はできた。

 そして迎えた1988年。私は新聞配達があるため、大晦日も紅白など見ないで早めに就寝して、朝早く起き出して新聞配達へと向かったのであるが、正月の新聞と言うのは、特集記事や新年の大売り出しの広告などがたくさんあるので、めっちゃ嵩張る上に重いため、新聞販売店のご主人が各ポイントに新聞を持っていって、そこで新たに新聞を受け取ることになっているが、分厚い新聞をポストに投函するのも一苦労であった。まぁ、冬休みということで学生は故郷に帰省している場合が多かったので、普段より配る件数が少なかったので助かったが…。

 新聞を配り終えて家に帰ると、熱々の雑煮ができていた。新年の挨拶を済ませて、朝食代わりの雑煮をいたただく。家での用事を済ませたあと、母の実家に新年の挨拶に向かう。おんぼろシャレードに家族5人が乗っていくため、かなり窮屈で非力なため、坂道に入ると思いっきりアクセルを踏み込まないと減速してしまう状態であったが、無事に母の実家について、まるちゃんの盛大な歓迎うけて、新年の挨拶しながら家に入る。祖母と伯母からお年玉をもらったのであるが、高校生になってバイトもしている私がお年玉をもらってもいいのかなとも思いながらも、せっかくの好意なのでありがたく受け取ることにして、この時もらったお年玉とバイトでためたお金で日本コロンビア製のCDコンポを買った。この当時でレコードプレーヤーもついて8万円ほどしたであろうか。今ではかなり音質のいい音響製品が格安で出回っているが、この当時のCDコンポと言うのはかなり高額だったのである。これで自分専用にCDコンポをようやく手に入れることが出来た私で、これ以降自分の好きなアーティストのCDをバイトでためたお金を使って買うようになった私である。特に私がこの当時買っていたのが杉山清貴さんやTHE ALFEE、チェッカーズ、C-C-B、岡村孝子さんなどであった。この当時買ったCDは今でも私の手元に大切に残してあり、今ではスマホに取り込んで車の中やスマートスピーカーで聴いている。

 

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