第163話マイコン同好会休部・吹奏楽部へ

 この摩訶不思議で、不気味な夢とも現実ともつかぬことがあってからは、私自身に特に私自身に変わったことが起こらなかったのであるが、私自身が全く予期せぬ出来事が待っていた。なんとマイコン同好会が休部することになったのである。これは何の前触れもなく、突然知らされたのであるが、その理由は、部員が3人しかいないため、部活動としての予算がつかないのだという。このため、私はマイコン同好会をやめなくてはならなくなった。体育祭が終わっていきなり帰宅部になってしまった私であるが、やはり早くに家に帰ってもやることないし、

「部活しないまま高校生活を送るのも嫌だなぁ…」

と思っていた。でも、何しようか正直迷っていた。そんな中、清田が

「リンダさぁ、マイコン同好会がなくなって、これから部活はどうするんじゃ?」

と聞いてきたので

「うーん。今のところ家に早く帰ったって思いっきり暇じゃしなぁ…。何にしようか、正直迷ってる」

「じゃあさぁ、見学でも構わんから、吹奏楽部に来てみんか?」

「そうじゃねぇ。早く帰ったって暇じゃからなぁ。でも俺、音符読めんよ」

「そんなの慣れたら大丈夫じゃって。俺だって高校に入ってから吹奏楽始めて、最初は音符も読めんかったけど、今じゃあばっちり読めるもんね」

「まぁ、今日行ってみるか…」

ということで、放課後吹奏楽部の練習を見学してみることにした。そこでまず手渡されたのがトロンボーン用のマウスピース。これを唇にあてて、唇を振動させて音を出すということであった。

「え?今日見学じゃなかったっけ?」

と思いながらも言われるままに、マウスピースを口に押し当てながら唇を振動させる練習をしていた私。そして顧問の佐々岡先生からいきなり

「新入部員を紹介する。リンダで、トロンボーンを担当してもらう」

と言われて、

「えーっ。今日は見学じゃなかったの?もう俺、吹奏楽部に入ることになってんの?」

これは後になって知ったことであるが、吹奏楽部も、私が通った高校はどちらかと言うと男子が多いため、入部希望者が少なくて、部員の確保に苦労していたそうで、そんな中、マイコン同好会が閉鎖されて思いっきり放課後は暇こいている私に白羽の矢が立ったということであった。まぁ、音符は読めないにしても、音楽を聴くのは好きなので、今度は自分が聴く側ではなく、演奏する側として楽しむことができるんじゃないかと思い、その流れで、即入部することになった。私は両親に

「今度吹奏楽部に入部することになった」

と話すと、音痴でリズム感に乏しい私が吹奏楽部に入部するということに驚いていたが、

「まぁ、高校生活で部活もせずに家に帰ってくるより、自分の熱中できることをした方がいい」

ということで、

「まぁ、自分の好きなようにやれ」

と言ってくれたが、内心は

「このまま何の部活もせずに高校生活を送らずに済んでよかった」

と思っていたのかもしれない。翌日から毎日吹奏楽部の練習に顔を出すようになった私である。

 まずは基礎練習ということで、マウスピースを使って音を出す練習。これが1か月くらい続いたと思う。他の皆は11月に行われる文化祭のステージに向けての練習に励んでいた。まだ私はこの文化祭当時は、ようやく楽器にマウスピースをつけて音が出せ始めた程度だったため、ステージに立つことはできなくて、吹奏楽部のステージを観ているだけであった。ジャズからクラシック、J-POPなど、時間ほどのステージを観ていた。

「来年は俺もあのステージの上で演奏してるんじゃろうなぁ…」

そう思いながら演奏を観ていた。ステージでの発表が追わって、清田が

「あそこ間違えたわ。リンダも俺が間違えたのわかったんじゃないか?」

「いやぁ。俺にはさっぱりわからんかったけど…?」

明かな不協和音でない限り、演奏を聴くだけであれば、わからないくらいのミスだったようである。

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