第151話宿泊訓練

高校に入学して1か月ほどが経ったある日、宿泊訓練が行われた。学校の敷地内にある、部活動で合宿などの時に泊りがけで使える施設があって、そこで2泊3日の宿泊訓練が行われることになったのである。これは1年各クラスで行われるもので、その班分けを決めるくじ引きが行われた。私は清田・永田・吉川(マー君)・みっちゃん・直ちゃんと一緒の班になった。そして、水田先生からお題が出された。各班で寸劇をすること・キーワードとして社長と言う役を必ず入れることと言う課題が出された。役柄をそれぞれ話し合いながら決めて、私は貧乏で借金取りに終われるさえない父親役、みっちゃんがその娘役・永田が借金を取り立てるチンピラ・マー君がぐれた息子役・清田が借金取りの社長・直ちゃんが社長夫人と言う役柄となった。詳しいセリフは忘れたが、宿泊訓練まで1週間と言う時間の中で皆セリフを覚えて、役に徹してなかなか面白かった。そして、食事のメニューも各自自分たちで決めることになっており、私たちは何が入っているかわからない”闇鍋”を作ることになった。そして迎えた宿泊訓練当日。いよいよ闇鍋を作る時がやってきた。確か味付けはみそ仕立てだったのではないかと思うが、みっちゃんと直ちゃんは鍋ということで、大根やニンジン・シイタケなど、鍋では定番の野菜を持ってきて、手際よく包丁を使って一口大の大きさに切っていく。一方で料理のいろはも知らない男子は自分たちが持ってきたものを適当に鍋の中にどんどん放り込んでいく。女子が止めるのも聞かずに適当に入れていくので、本当に何が入っているのかわからない”鍋らしきもの”ができた。中には何を考えたのか、湯が煮たってすぐにマカロニを入れた奴もいて、出来上がってから食べてみると、ものの見事にふやけて、マカロニの形をしていない、マカロニらしきものに変わっていた。でも、みっちゃんと直ちゃんの努力のおかげで、何とか思ったよりもちょうどいい味付けになった鍋が完成し、皆

「思ったよりおいしい」

などと歓声を上げていた。さすがにみっちゃんと直ちゃんは手当たり次第食材を放り込んだ男子に文句を言っていたが…。私は小さいころから母に料理の仕方を習っていたので、さすがに

「まずいな」

と思って止めに入ったのであるが、他の男子は

「適当に入れてしまえ~」

といって放り込んでいたが、思ったよりおいしいものが食べられたことに感謝するべきだろうと思った。

  

 そして夕食が済んで片付けの時間。私は女子二人と一緒に鍋屋まな板・包丁などを洗っていたのであるが、二人から

「リンダ君は包丁の使い方とかうまいけど、誰かに教えてもらったん?」

と聞かれた。私は

「母が、俺が大きくなって包丁などの道具の使い方や料理の仕方も知らないようではいけない」

と言って、小さいころから料理の作り方を教えてもらってきたし、いつも料理を吊っている母のそばで母がしていることを見てきたので、そのことを伝えると

「すごいねぇ…。どんな料理が作れるん?」

「まぁ、カレーとか肉じゃがとか味噌汁とか、ポテサラとか自分で作るよ」

「へぇ~。結構レパートリーあるんじゃ。すごいわ」

そんな話をしていた。そして片付けも終わって、夜の余興の時間。初日の余興は肝試しに決まって、私は驚かす方で、校舎の片隅にひっそりと身を隠して、誰かがやってくるのを待ち構えていた。20時に肝試しがスタートして、

「誰もいない夜の校舎って、意外と不気味じゃなぁ…。」

と思いながら待っていると、遠くで女子の

「キャー」

という叫び声が聞こえてきた。やがて足音が近くで聞こえるようになって

「怖い」

一緒にいた男子からは

「早く行こうぜ」

などと言う言葉が聞こえてくる。やがて私の前に人影が見えて、私が

「ワーッ」

と大きな声で驚かすと

男子の第一陣を切ってやて来た酒田が

「マジでビビった~」

と驚いていた。まずはつかみはOKであった。

酒田に続いてやってきたのが女子の天田(ミーちゃん)と西田(ふみちゃん)。私が

「ワーッ」

と言って驚かすと、

「もう~。リンダ君マジでびっくりしたじゃん」

と言ってかなりびっくりしていた。

「暗いから気をつけてねぇ」

と言って見送ると

「わかった~」

そう言って暗い学校の敷地へと歩いていった。そして、永田がやってきた私が暗闇からいきなり

「ワーッ」

と言って飛び出すと、かなりビビっていた様子。突っ張っていても、怖がりだっていうことがよくわかって、正直面白かった。

「リンダ~。お前マジでビビったじゃねぇか。今度仕返ししちゃるけぇのぉ。よう覚えとけよ」

などと言っていた。こうやって人を驚かすというのは結構面白い。やがて最後の組が通り過ぎて、私たちも撤収ということになり、ユッキーやえっちゃん、清田や佐田たちと一緒に学校の敷地を歩いて外に出た。やはり夜の校舎ってどことなく不気味な感じがする。そういえば、歩いていく先に、実験用動植物の霊を祭った慰霊碑があったよなぁ…などと考えながら歩いていくと、茂みの中から

「ワーッ」

と言う大きな声が聞こえて、私自身もかなりビビった。男子の奥田が茂みの中に隠れていて、私たちが来るのを待っていたそうである。こうして余興の肝試しは終わって、宿泊棟に戻って男女入り混じって、私が持参したトランプで遊んだ。セブンブリッジやポーカー・大富豪など、いろんなゲームをして遊んだが、私たちが高校生の頃はファミコンが台頭し始めたころで、今のようなスマホのゲームはおろか、インターネットさえもなかった時代である。今の時代であれば、スマホを使っての対戦型ゲームなどをしているんだろうなって思う私である。こういったオンラインゲームも面白いかもしれないが、たまにはアナログな遊びも面白いので、ぜひとも遊んでみてほしいと思う私である。それにしても私たちのクラスは、男女が仲良かったよなって思う。私が通った学校では、この当時はほかのクラスは男女別々で、男女共学だったのは私たちのクラスだけであった。なので、ほかの学科の生徒からはかなりうらやましがられていた。

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