第144話大阪滞在後半
夕食を済ませた後、夜のニュースを見ていたら、、国鉄が解体されてJRが発足するにあたって、特集が組まれていた。国鉄のこれまでの歩みやこれからの展望などが放送されていた。国鉄が解体されるという、日本の鉄道の歴史上大きな転換点に、特に経営が厳しいと思われたのがJR北海道・四国・九州・貨物であったが、JR九州と貨物は黒字を出すまでに成長した一方で、JR北海道と四国は経営環境が厳しさを増しており、私が国鉄の最末期に大阪を訪れた時に比べて、明暗がはっきりと分かれている。
私が持っている周遊券の有効区間内を乗りつぶした翌日、私が山口から帰省しているということで、永井と柳井が星田の家に集まってきた。3年ぶりに見る姿は、ずいぶんと大人びた感じがした。皆が集まったときもやはり高校でやりたいことなどが話の中心であった。星田や永井は大学進学を見据えての高校進学であり、私と柳井は専門的知識を身に着けたいということを基準にした進学であった。柳井は工業高校に進学して、工業的な専門知識を身につけたいのだという。星田と永井は教育関係の職に就きたいということが夢であった。永井も星田と同じように
「理科が得意なリンダらしいなぁ。実験とか毎日できるんやろ?」
と聞いてきた。
「食品に含まれる栄養素の測定とか、科学実験とか、実験に使う植物の栽培とか学べるよ。俺にとっては楽しみやわ」
そう話して。それぞれの今後の夢について語っていた。
そしてのちに皆それぞれの夢を叶えて、今に至っている。永井と柳井がそろったところで、おばちゃんがケーキと紅茶を差し入れてくれた。永井や柳井たちと一緒に外に出て久しぶりにキャッチボールしようか。ということになり、野球が得意な柳井が持ち寄ったグローブと星田の家に会ったグローブを使って、外に出てキャッチボール小学校の時に皆でキャッチボールをしたころがあるが、あれから3年以上が過ぎて、みんな体格もごっつくなっているので、投げるボールもかなりスピードが上がっていて、キャッチする度に
「スパーン」
と言う小気味いい音が鳴り響く。ただ、きちんとしたところでボールをキャッチしないと、手がめっちゃ痛い。でも皆、3年間離れていた時間の壁を越えた友情を感じることが出来た。私はこのキャッチボールと同じように言葉のキャッチボールも大事だと思っている。言葉と言うのは、人に生きる希望や夢を与える道具にもなれば、相手の心を殺す、ひいては相手を自殺に追い込む凶器にもなるということを嫌と言うほど味わってきて、
「死ね」
「殺すぞ」
「お前なんか出ていけ」
などと言った汚い言葉も散々浴びせかけられてきたし、糸田や末山、田伏と言った不良グループからの脅しの言葉も随分と耳にしたが、言葉と言うのは正しく使わないと、あと井出と仕返しのつかない事態を招いてしまうことがあるということに気をつけながら、今まで生きてきた。だから私はどうしても相手の存在を消し去ってしまうようなことを平気で言うような人物は許せないし、人を脅してまで自分の思うとおりにしようとするやつは心底嫌いである。やはり人間最後に残る言葉は、人の新庄を思いやる愛情のこもった言葉だと思う。星田や永井・柳井と今でも交流があるが、こうした相手のことを思いやれる人間だからこそ、こうしてて長い付き合いができるのだろうと思う。ただ、この時は今田と福田に会えなかったのが残念ではあるが。
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