第145話山口へ帰る

 1週間の滞在を終えて私が山口に帰る日がやってきた。おっちゃんは仕事があって

「見送りできんでごめんな」

と言って仕事に向かった。私はおばちゃんが作ってくれた大阪滞在最後の朝食をおいしくいただき、4月2日の午前9時ごろT駅を出発。おばちゃんも

「新大阪まで一緒に行くわ」

と言って、新大阪ま駅で見送りに来てくれた。お土産は大阪名物、蓬莱屋の551の豚まんとシュウマイ。これがみんな大好きで、おばちゃんが買ってくれた。そして、新大阪始発のひかり号に乗って山口へと向かった。別れ際に

「また大阪に帰って来いよ」

「あぁ、また帰るからな。その時は連絡するわ」

「リンダ君、気をつけて帰るんよ。また遊びにおいでね」

「ありがとうございます。またその時はお世話になります」

そう別れの挨拶を交わしていると、発車のアナウンスが流れ、やがてドアが閉まり、静かに新大阪駅を発車して、一路西に向かった私である。

 新幹線の車内では過ぎ去っていく景色を眺めながら、3年ぶりに見た故郷を思い出していた。私が生まれ育ったT市の駅前の少しごちゃごちゃした感じや、駅前のスーパーや私たちが住んでいたところなど、3年前と変わっていなかったことに、少し安堵した私である。その一方で変わったところもあった。私たちが山口に引っ越ししてから、私がよく利用していた私鉄に新型車両が投入されていて、特急型車両も新型車に置き換わっていた。昔懐かしい風景がそのまま残っていた一方で、鉄道車両に関しては少し変化があったようである。そう言えば新幹線にも100系が投入されて、2階建て車両が登場したのも、大阪から引っ越しした後であった。

 大阪での1週間の滞在の間のことを思い出していると、いつの間にか眠ってしまったようで、目が覚めたら福山駅を出発して、広島駅に向かっているところであった。そうかの新幹線から福山城がちらりと見えた。三原駅を通過して安芸トンネルを潜り抜けて速度が落ちてくると広島駅に到着。ここから私の乗ったひかり号は博多駅まで各駅に停車していく。先に速達タイプのひかり号を発車させて、そのひかり号からの乗り継ぎ客が乗ってきて、各駅に停車する度に降車していく。そして山口に帰り着いて最寄り駅まで電車に乗る。最寄り駅について、停めてあった自転車を探すとどこにもない。盗難にあったみたいで、この時間帯は両親は仕事に行って家にいない。この大量の荷物を抱えて、仕方なく歩いて帰ることに。マジで盗んだ奴に怒りを感じた私である。きちんと鍵二つかけておいたのに、わざわざそのカギを無理やり取り外して持っていくって、いったい何考えてるのかって思った私である。盗難届を出して、警察に探してもらった結果、遠く離れたところで見つかったということであった。

 まぁ、その荷物を抱えて無事に星田の家に帰ったことを伝えて、夕方には両親も仕事から帰ってきて、お土産の蓬莱屋の551の豚まんとシュウマイを夕食のおかず代わりにして食べて、故郷がどんな様子だったかを話して、姉も

「いつか自分も大阪に帰りたい」

と言っていた。妹は6年間しか大阪で暮らしてないので、あまり大阪に対しては思い入れがないのか、関心は示さなかった。父は40年近く大阪で暮らしていたので、故郷がどんなだったか、一番興味を示していた。後日、私がインスタントカメラで写してきたフィルムの現像とプリントが出来上がって、皆に見せると、懐かしそうに眺めていた。

「星田君、全然変わってないなぁ…」

姉の感想である。まぁ、3年なので身長が伸びた以外に、そう変わったところもないと思うが…。こうして春休みは終わりを迎え、4月8日、私は晴れて公立高校に通う高校生となった。


 高校生編へと続く。

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