第140話公立高校の入試
そして迎えた入試前日。私は昼から少し体がだるくて、家に帰ってから体温を測ってみると38度以上の熱が出ていた。入試を翌日に控えたこの時期にまさか体調を崩すとは思ってもみなかったので、急いで近所の小児科を受診した。幸いインフルエンザではなかったものの、下痢を伴う風邪が流行っているということで、明日入試が控えているということを病院の先生に伝えて、解熱剤と咳止めなどの薬が処方された。私の母は
「入試が明日じゃっていうときになんで風邪ひくかね?本当にあんた、明日は大丈夫なんかね?」
と言われたが、大丈夫であろうがなかろうが、一発勝負の入試を受けないことには、私の希望する高校には行けないので、
「地に這いつくばってでも行く」
そう言って、その日は軽めの夕食を済ませた後は、薬を服用してすぐに就寝して、とにかく少しでも体調を回復させないといけないと思ったので、早めに寝た。薬の効果があったのか、その日はぐっすり眠ることが出来た。起きてから熱を測ってみると、まだ37.5度ほどあったが、昨日に比べたら少しは体調がよくなっていたので、解熱剤と咳止めを服用して受験会場に母に送ってもらった。本来なら自転車で行くつもりだったが、3月上旬はまだかなり寒いので、冷たい風に当たって風邪をこじらせてもいけないという母の計らいであった。
私は受験票と参考書などが入ったカバンを持って、指定された教室に向かった。そこにはこの学校とは無縁であろうと思っていた末山がいた。
「なんでこいつがこの高校を受けるんだよ」
などと思っていたが、
「まぁどうせあいつの成績なら落ちるだろう」
と思っていた私である。私が受けた学科と違う学科だったので、もし末山が受かったとしてもまぁ、私には実害がないだろうと思っていたが。受験前に末山の姿を見るという、私にとって実に嫌な雰囲気の中、受験がスタートした。私はまだ熱が少しあって、頭がふらつく中での受験であったが、何とか国語の試験が終了。私が受けた学科には同じ中学の生徒が何人かいて、同じ中学同志が集まって、試験が終わると次の試験までのインターバルの間に応えの確認をしたり、次の試験科目の問題を解いたりしていた。2時限目は数学。私の最も苦手とする強化であり、まずはできるところから解いて行ってとにかくわからなくても答えを書いておくことにして、数学の中でも比較的成績の良かった方程式や三平方の定理などの問題を間違えないように記入して、残りの時間で図形などの問題を解いていたが、この時間になって解熱剤が切れてきたのか、少しずつ体がだるくなってくるのを感じていた。試験が終わるまで何とか持ちこたえてほしいと思いながら、次の社会の試験に備えていた。社会は私が得意とする教科であり、絶対に取りこぼしをしないようにしなければいけないと思っていたが、次第に熱が出てきて頭がふらふら出朦朧とする中、何とか問題を解くことが出来た。社会の試験が終わって休憩時間に入るとお腹が痛みだして、トイレに駆け込んだら、やはり下痢をしていた。腹痛が治まって教室に戻ったのであるが、明かにこの時の私は顔色はよくなかったのではないかと思う。続いて行われた理科の試験も熱が出てきていて、コンディション的には徐々に悪化していったが、なんとか時間までに答えを記入し終えて、記入漏れや間違いがないか確認した後、その後は机に突っ伏していた。これで何とか4教科が終わったが、残りの英語は昼休みをはさんで午後に行われる。昼食後、病院で処方された薬を服用しながら、少しでも体力を回復させようと思い、昼休みの間は伏せて寝ようと思っていたのであるが、周りが騒がしいことや、一緒に受験した同じ中学出身者同志で英語のテストの問題に備えた勉強に付き合うことになり、結局体と頭を休めることが出来ないまま英語の試験に突入。あと1時間、何とか私の体が持ちこたえてほしい。そう願いながら英語の問題に必死に取り組んで、答えを書き終わった後は、一気に疲れが襲ってきて、頭がふらふらの状態であった。とにかく受験を終えて、体調がだんだん悪化していることもあって、母に電話して迎えに来てもらった。そして家に着くとテレビでは高校入試の答えと解説が行われていたが、私はテレビを観る気力もなく、家に着くと倒れこむように布団の中に入って眠った。家に帰ってから私の目が覚めて起きたのが夜8時過ぎ。5時間以上眠っていたので、体力もいくらか回復することが出来て、軽めの食事をとった後、体温を測ると37.0度くらいまで熱が下がっていた。夕食の頓服を服用して今日の試験についてどんな感触だったのか聞かれたが、私は最悪だった体調のことも気になったので、
「ウーン。ちょっと自信ないかなぁ。一応全部答えを書くには書いたけど…。頭がふらついて朦朧とする中での試験じゃったからねぇ」
ということを話した。この時私の両親も姉も
「試験に落ちた」
と思ったそうである。
翌日には熱も下がっていたが、念のため用心して一日寝て過ごした。熱も下がったので、新聞に掲載されている高校入試の解答を見てみると、私が答えを書いたところはほとんど合っていた。
「この分だと、受かっているんじゃないか」
そう思えるような回答が書かれてあった。
さらに翌日、学校に行ってみると、皆入試のことについていろいろと話をしていた。私もクラスメイトから
「入試の感触はどうじゃった?」
と聞かれて
「多分受かっているんじゃないかって思う」
などと話していた。運命の合格発表は1週間後。果たしてその結果は…?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます