第141話合格発表

 入試の合格発表の前に、卒業式が行われた。私がK中学校に転校してきたのが、1年生の11月。それから2年4か月をこの中学校で過ごしたが、私がこの中学校で見たのは、T君に対する激しい暴力と脅迫、田伏などがやっていた金品の恐喝やカツアゲ。そして授業の妨害など、荒れに荒れた教育環境であった。その中で先生は何とか授業を立て直そうと必死であったし、真面目に勉強している生徒が不利益を被らないようにしてくれていた。

 一方で授業の妨害を繰り返し、金品を脅し取っていた田伏や、田伏とつるんでいた不良仲間の中には、進学もダメ・就職もままならない生徒もいたということである。学校での態度が面接など、大事なところで出てしまって、面接官に対して敬語もまともに使えない、そんな態度であったため、なかなか就職も決まらない状態になっていたようである。そんな不良グループのトップに立っていた田伏も、最後の最後で何とか地元の建設会社に採用されて、卒業生全員の進路が決まったのは、卒業式を目前に控えた3月中頃であったと先生が話していた。卒業式が終わって、合格発表の前に春休みに入って、2日くらいたってからであったと思うが、高校入試の合格発表が行われた。私も受験した高校に自転車で言って、自らの受験票を握りしめて、受験した学科のボードに行って、自分の受験番号を確認する。そして、私の受験番号があった。一緒に受けた皆の受験番号もあった。

 「よっしゃ~。これでまた3年間一緒じゃな」

そう言って皆で喜び合った。これで私も晴れて県立高校の入学が認められて、ほっとした。それにしてもあれだけ最悪のコンディションの中で、よく合格したなぁと今でも思う。私は合格発表の結果を知らせるために、母が務めているブティックに電話して、合格を伝えようと思っていたのであるが、この時母は服を売りに営業に出ており、お店には不在であったため、私の名前と

「高校に合格したと母にお伝えください」

と告げて電話を切った。

 お店からの伝言で私が公立高校に合格したというのを聞いて、母は帰ってくるなり、驚きの表情を見せていた。あれだけ最悪なコンディションの中での受験だったため、母はてっきり不合格だったと思い込んでいたらしい。ひとまず合格したということで、家族皆に安どした空気が広がった。

 実はこの時、公立高校に合格したら、大阪に遊びに行ってもいいということだったので、これで大阪に遊びに行けると内心嬉しかった私である。そして、大阪でも入試が終わった頃を見計らて、久しぶりに星田の家に電話してみた。星田は教員を目指すべく、大阪府内でも有数の進学校を受験して、みごとに難関を突破したということであった。お互いにこの1年の健闘を称えあい、近況報告をして大阪に遊びに行くことになったということを伝えた。星田も

「おぉ。絶対に来いよ」

と言ってくれて、おばちゃんとおっちゃんに私が遊びに来るということを伝えたところ、おばちゃんが電話に出て

「リンダ君おめでとう。よかったねぇ。うちらはいつでもええよ。気兼ねせんと遊びにおいで」

そう言って祝福してくれた。ということで、3月末から4月頭にかけて大阪の方に遊びに行くことになった。

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