第135話星田との再会・そして田伏の暴力事件
修学旅行が終わってすぐに、星田から電話があった。修学旅行で山口に来るということで、会える時間が取れるのだという。私も星田が修学旅行でやってくる日の夜は予定もなかったので、
「大丈夫や~。その日は空けとくからなぁ」
そう言って電話を切った。なんでも予定では秋吉台と秋芳洞・山口市内と萩の歴史的建造物を見て回るという。思いがけず星田たちと再会できることになったわけで、およそ2年ぶりの再会を待ちわびていた。
そして、星田がホテルに着いたという連絡があって、家族全員で星田たちの泊まっているホテルに向かった。ホテルのロビーに行くと、星田や柳井・永井・今田たちが私の到着を待っていてくれた。
「めっちゃ久しぶりやん。元気にしとったか?」
「あぁ、俺は元気やで~。皆だいぶん背が伸びたんちゃう?」
「そう言うリンダもめっちゃ背が高いやんけぇ」
「俺か?俺は181センチあるわ」
そんな久しぶりの再会を楽しむ私たち。そんな中、私の視界に湯川の姿が入った。湯川も私が来ていることに気が付いて
「嫌~ん。なんでリンダがおるん」
ということを言っていた。渡部や天田や浜山は私に対してやったことに関して、申し訳ないという思いを口にしていたというが、少なくとも湯川に関してはそうではなかったらしい。私のいじめ加害行為に加わったものの中でも温度差があるということであろうか。まぁ、私をいじめるという共通の標的があったからこそ結束していただけの仲間なので、所詮、こいつらの仲間意識って言うのはこの程度の物なのだろうと思った。私はあの時の、まるで汚物を見るような湯川の眼付や顔つきを今でもはっきりと覚えている。そもそも私が山口に住んでいるということは、湯川も知っていたはずで、星田たちが来るとなれば、私が会いに来るということぐらい、容易に想像がついていたはずで、私の顔を見るのも嫌なのであれば、そもそもこの修学旅行に参加しなければいいだけではないかと思う私である。
その星田たちとの楽しい時間はあっという間に過ぎ去って、帰る時間となった。私は皆に
「山口にまた遊びに来いよ」
そう告げて彼らと別れて帰宅した。
それからしばらくたった6月の中頃、クラスメイトの岡田が柳本を呼びに来た。
「田伏が呼んで来いって言ってたぞ」
と言う話であった。その時私は柳本と話していたのであるが、私は
「面倒なことになるから、いった方がいいんじゃね?」
と言ったのであるが、柳本は
「あんな奴の言うことなんか、どうせろくなことがない」
と言って無視し続けた。それから数分たって、田伏が
「柳本~‼‼‼。テメェー俺の言うことを無視しやがって‼‼。俺はタバコを吸うから、センコウが来たらすぐに知らせるように呼んだだけじゃのに、なんで来んかったんか‼‼‼」
と言うなり、柳本の顔面にパンチを食らわせた。私は職員室に行って先生を呼びに行って、田伏の暴力行為を告げた。先生は
「また田伏か」
というと、急いで教室に戻ってきて、田伏が暴力行為を働いていることを現認すると、また殴ろうとする腕をつかんで止めさせた。そして、なぜ殴り掛かったのかその理由を問いただしていた。その間に私は殴られて唇から出血している柳本を保健室に連れて行って、ケガの処置をしてもらうのに付き合った。柳本は
「イテテテ…」
そう言って、けがをしたところの消毒をしてもらったり、腫れたところの処置をしてもらったりしていた。保健室での処置が済んで教室に戻ると、今度は私が職員室に先生を呼びに行ったことに腹を立てた田伏が、私に対して
「リンダ~‼‼‼テメェーチクりやがって。テメェーもぶん殴られてぇみたいじゃな」
「殴りたければ殴れば?前も行ったけど、その代わり俺の親が黙っちゃいねぇからな。その時は警察沙汰になることも覚悟しとけよ。それから区のクラスでも頻発してる金品盗難事件のことも警察に言ってやろうか?あぁ?どうがええんな?言ってみろや」
そう言うと、さすがに警察沙汰になるということはまずいと思ったのか、この一件で私に殴りかかってくるということはなかった。これで田伏がタバコを吸っているということを自分で認めたため、暴力行為をしたということもあわせて2週間の停学処分が下された。翌日から田伏がいない2週間がやってきたのであるが、田伏がいない2週間はクラスにとっても本当に平和であった。暴力沙汰もなければ、金品が盗まれるというようなこともなく、平穏な日々が続いた。殴られた柳本も
「このままあいつが来んかったらいいのに」
などと言っていた。殴られた被害者としてはまっとうな意見だったと思う。笹山先生としては田伏に対して、相当手を焼いていたはずで、修学旅行での盗み・喫煙・暴力沙汰と次から次へと問題を引き起こす田伏に対しては、どんな理由があったとしても、悪事を行った場合は容赦は一切しなかった。
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