第131話最高学年
迎えた1986年4月8日。姉は真新しい高校の制服に身を包んで入学式へ。私はいつもの制服を着て3年生の1学期の始業式へと向かった。クラス替えが行われ、担任は英語担当の笹山先生と言う女性の先生。糸田や末山と言った2年生の時に同じクラスだった不良とはクラスが別々になったが、T君ともクラスが別々になっていた。T君は3年生の学年主任を務める男の先生が担任を受け持つことになった。T君とクラスが離れて以降、私がT君とかかわりを持つことは少なくなったが、学年主任の先生がいじめを厳しく取り締まったことも関係していたのか、T君がいじめられているという話はあまり聞かなくなった。
一方で私が在籍することになったクラスには、糸田や末山と言った、T君にいじめ危害を加えていた奴らはいなくなったが、どこのクラスにも不良はいるもので、田伏と言うこれまたとんでもない不良が同じクラスになった。とにかく人の嫌がることをするのである。他の生徒に痰や唾を吐き捨てたり、気に食わないことがあれば殴りかかる、タバコを吸っているときに先生が巡回しに来ないか見張りをさせるといった具合に絡んできて、時には他人の金品を盗むということもやっていた。その田伏に引っ付くようにいつもつるんでいたのが重田。重田は特にこれと言って悪いことはしていなかったが、不良が好んで切るような恰好をしていて、クラスの中ではちょっと浮いたような存在であった。
その田伏がいきなり絡んできた。
「リンダ~。ちょっと1000円貸せや」
と言ってきたのである。当時の小遣いが3000円だった私にとって、1000円と言うのは大金である。第一私は学校に現金なんか持ち込む主義ではなかったので、きっぱりと
「持ってない」
というと、
「じゃあ明日持ってこい」
と脅しをかけてきた。ここで田伏の要求に従えば、今後1年間にわたって金銭を脅し取られると思った私は
「お前にくれてやる金もないし、金を持ってくるつもりもない」
「何も俺は金をくれと言ってないじゃろうが。貸せと言ってんじゃねぇか」
「くれと言ってなかろうが、俺は学校に金は持ってこん。第一お前みたいなやつらに金貸したら、返すつもりなんてないじゃろうが」
「なんじゃと?テメェーは俺の言うことがきねねぇっていうのか?いい根性しちょるの」
と言って殴りかかってきた。私は
「ほぉ?殴ろうってか?だったら殴ってみろや。その代わり俺の親が黙っちゃいねぇからな。俺の親は自分の子供のためならどんなことでもする親じゃからな。逆にテメェーをぼこぼこに殴り倒すぞ。それでもいいんじゃったら殴ってみろや」
「そう言うと、さすがに新学年の新学期早々に暴力沙汰を引き起こすのはまずいと思ったのか、引き下がっていった。
新学期になってクラスの各委員を決める選挙がクラス内で行われた。私は交通安全委員会に立候補して、そのまま当選。他の委員も決まっていって、残りは班長を決める番になった。班長は投票で決められ、男女上位各3人が班長になる。その中で柳本も選ばれていて、運が悪いことに田伏が柳本の班になった。田伏の行いの悪さはクラスの中でもあっという間に知られるようになり、誰もが引き受けるのを嫌がって、結局最後まで残って、くじ引きで決められたのであるが、柳本がそのくじを引いてしまったのである。そして、田伏が所属することになった柳本の班は、田伏の言うがままの状態になっていったのである。そして、委員会活動や班長以外にもクラス内の行事などではそれぞれが担当を決めて役割を果たすことが求められており、これは私の提案で、一度役職を担当した生徒は、その後はほかの役職を担当しなくてもいいようにしたのである。というのも、2年生の時に同じ生徒に役職を押し付ける事態がほかのクラスで発生し、問題になったためで、私があらかじめ予防線を張ったのである。先制も私の提案に賛成してくれて、私はさっさとほかの役職につかないで済むように5月に行われる社会科見学の時の世話役に立候補して、すんなり認められた。ようは後で面倒な思いをするのが嫌であれば、早いもん勝ちということである。当然このクラス内の決まりは田伏にも適用され、従うように求められ、例外を一切先生は認めなかった。
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