第124話報復
そんな梅雨時。野球部の練習も雨が降ったら中止になるので、三田と一緒に帰ることも何回かあった。三田に私が
「最近野球部はどんな?楽しくやってる?」
と聞くと
「あれから嫌な先輩がおらんようになったから結構楽しくやっているよ」
と言っていた。糸田や末山も野球部に所属しているが、あまりかかわりがないのかもしれない。上手い下手は別にして、自分の好きな野球ができるのが嬉しいみたいであった。見たとは校舎が全く別だったため、学校では普段はあまり顔を合わせることは少なかったが、2年生になってから何人か友達もできたようで、安心した私である。ただ、1年生の時に受けた理不尽な棒威力を夢に見て、苦しい思いをすることがあると言っていた。私が小学6年生の時に受けた苦しみと同じ思いをしているのだと思うと、やりきれない気持であった。三田とは途中で別れて家に向かう。中間試験の答案が帰ってきて、やはり数学と英語の成績がほかの教科よりも芳しくないというのを母は懸念していた。家庭教師の先生にも来てもらって、教えてもらってはいるが、なかなか数学の公式や、英語の文法などが呑み込めないのである。私の成績は学年全体では400人いる中で、上位に食い込んではいるが、自分の思ったほどの成績は残せていなかった。
その中間試験も終わって、 1学期も終わりを迎えようとしていた。体育の授業ではサッカーをしていた。サッカー部の海老田や石田たちが中心になってサッカーの試合を組み立てていた。クラス内で男子が紅白試合をしていたのであるが、当然糸田と末山たち、不良グループもメンバーの入っているわけで、私はサッカーボールを追いかけながら、パスを受け止めようと、走っていた時に誰かに足を引っかけられ転倒した。足を引っかけたのは末山であった。私はパスを受けようとボールの出た方向に走っている最中で、ボールをキープしているわけではなかった。その中で後ろから足を引っかけられたので、前のめりに転倒した。当然販促行為であるため、末山に対してはレッドカードが出された。末山は退場処分となり、この日のサッカーの練習に参加することが禁止された。そして体育の授業の1学期の評定が0となる処分もあわせて受けた。
これはこの授業が終わった後、末山が私に直接言ってきたことであるが、
「テメェーがTのことでギャーギャーうるせぇから、報復してやったんだよ」
そう言っていた。T君のことで、私が先生に報告して、度々先生から厳しい注意がなされることに対する報復なのだという。私は
「あいつならそれくらいのことならするだろうな」
と思っていたが、擦りむいて血が滲む膝のために保健室に向かった。応急処置が済んで教室に戻って、自分の席に着くと、再び末山が
「このことをセン公にチクったらどうなるかわかってんな」
などと言ってきた。私が言わなくても、体育の先生が事の一部始終を見ていたので、体育の先生から報告があるだろうと思っていた。そして案の定、福井先生に体育の先生から、末山が行ったラフプレーに関して連絡があったようである。末山に対して再び厳しい注意が行われていた。こうして、糸田や末山と言った不良グループの加害行為は一向に収まる気配を見せないまま、1学期が終わった。1学期が終わる前に2学期の総務や各委員会の選出を決める選挙が行われた。私は交通委員会に立候補し、総務委員は梅田とクラス内の人望の厚い女子が選ばれた。各委員会などが決まって、終業式も終わって夏休みを迎えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます