第116話三田

 そして、休憩時間中、クラスは違うが、ふとしたことがきっかけで出会った三田という男子が上級生からいじめを受けているところを見てしまった。授業時間が迫っていたため、クラスにいったん戻って、あとで三田のクラスの担任の先生に伝えようと思っていたら、その上級生が私の顔を見たらしく私を呼びつけて

「お前、さっき見たことをチクったらどうなるかわかってんな?」

と、脅しをかけてきた。さすがに上級生相手だと恐怖を感じて、私は何も言えなかった。先生に伝えることが出来なかった。その日の帰りに三田と一緒に帰ったのであるが、私が

「上級生と何があったん?」

と聞くと三田は

「あれは野球部の先輩で、あいつらに練習でハードなノックをされている。俺はいじめられている」

と話した。私は

「そのことは顧問の先生も知ってんの?誰かにきちんと伝えた方がいいんじゃね?」

と言ったのであるが、三田は

「いくら練習してもうまくならん俺が悪いんじゃ。だからやられても仕方がないんじゃ」

などと言っていた。私は

「それは違う。練習でうまくならんからと言って、いじめていい理由になんかならん。いじめられるのが辛いんじゃったら、野球部をやめたっていいじゃん」

そう話しながら帰った。そしていくどとなく自分が苦しんだ経験から

「誰か信頼できる大人に伝えんとだめじゃ」

そう再三私から伝えて、ようやく三田も決心がついたようで、野球部内でのいじめについて親に相談して、野球部内で横行していたいじめが発覚したのである。当然いじめに加担していた上級生は退部処分となり、顧問も入れ替わり、野球部もいじめ問題が解決するまでの間、対外試合が禁止された。いじめ問題が解決したのは私たちが2年生に進級してからであった。そして3月を迎え、3年生高校受験本番。初旬に公立高校の入試が行われた。試験が終わって数日後に合格委発表が行われ、卒業式が終わって、3年生は義務教育を終えて卒業していった。それからおよそ1週間後、3学期の終業式が行われ、私にとっての激動の1年が終わった。この1年間はいじめとの戦いに明け暮れて、いじめから逃れるように大阪から山口に引っ越しして、市内の別の中学校に入学し、家を購入したことによって、学区が変わるため、1年生の途中で再び転校し、いじめのフラッシュバックや悪夢に悩まされながら過ぎ去っていった1年であった。

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